洲関くんの恋人

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「あっ、あぅ、す、すぜき、くんっ!」

 広瀬の高らかとした声で我に返る。トイレの便座に座り、俺のブツを後孔に埋め込んでいる彼は顔を真っ赤にさせ悶えていた。口の端から垂れる唾液が顎を伝い、喉へ滲んでいく。腰を揺らすたびに古い便座がガタガタと揺れ、今にも割れてしまいそうだった。

「あぅ、っん! すき、すぜきくん、すきっ……」

 彼が甘い声で自分の名を呼び、好きだと告げる。広瀬と付き合って半年だが、俺は未だにこの音がたまらなく好きだ。旧校舎とはいえ、いつ誰が訪れるか分からない学校内のトイレで喘ぐ彼を、咎めようと思えないのはこれが原因である。
 ────まぁ別に、いつバレても良いけど。
 ズレた眼鏡を掛け直してやり、重たい前髪を掻き上げる。汗で湿った額に髪が張り付き、余計に欲を擽られた。掴んでいた彼の太ももを引き寄せ、腰を打ち付ける。広瀬が喉を逸せて喘いだ。

「お゛っ……!」

 彼から下品な声が漏れ、思わずほくそ笑む。いつもクラスの隅で根暗な連中と屯し、アニメやゲームの話題で花を咲かせている人間だとは到底思えない。
 もう既に達している彼の性器は萎えており、ゆるゆると白濁を溢すだけの木偶の坊と化している。最近は挿入してすぐにイくようになったこの体は、俺が作り替えたものだ。

「あー……っ、あ゛っ、……あっ」

 奥を小刻みに叩くと、足先が痺れ痙攣したように跳ねる。涙をポロポロと流し、俺の首に手を回した。そのままグイと引き寄せ、キスをして欲しいと強請る。

「ダメ。今日はすぐにイくなって命令したのに、言うこと聞かなかったろ? だから、おあずけだ」

 寄せられた唇を躱し、ニヒルに笑んでみる。目の前にいる男が火照らせた顔を歪ませ、嫌だとせがんだ。

「したい、したいよ。洲関くんっ……!」

 ぎゅうと抱きしめられ、耳元で切羽詰まった声音を漏らされた。悪い気はしない。俺は緩む口元を抑え、分かったと短く答えた。唇を寄せ、彼と口付けをする。
 滑りのある舌が俺の口内へ侵入し、唾液を送り込む。俺の唾液を吸うように喉が動き、その嚥下音に眩暈がした。舌に吸い付き、軽く喰みながら離れる。唾液の糸が垂れ、それがゆっくりと広瀬の裸体に落ちた。

「はっ、はぁ、はっ、……すき、すき……っ」

 脳の先まで快楽に溺れているのか、譫言のように彼がそう繰り返す。湿った唇が動くたびに、俺へ愛の呪文を唱え続けた。すき、だいすき。潤んだ瞳に見つめられ、心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥る。

「っ、俺も……」

 広瀬の腰を掴み、ガツガツと奥へ性器を捩じ込む。悲鳴に近い声をあげた彼の唇を手のひらで塞いだ。

「っ、ふ……! んっ、んっ」
「声、でかいって。聞かれたら、どーすんだよ」
「ご、ごふぇんなさ……っ!」

 塞いだ手のひらの中で、広瀬が小さく謝罪する。声を聞かれたらどうするなんて、そんな今更なこと俺は気にしていない。けど、彼の喘ぎ声や好きだと囁く言葉を他人に聴かれたくなかった。
 動きを早めるたびに、広瀬の呼吸が短くなる。内部がきゅうきゅうと締まり、指先が震え出した。目が虚ろになり、焦点が合わなくなる。
 これはと思い、彼へ問いかけた。
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