洲関くんの恋人

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洲関くんの恋人

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「も、そろそろ……いく、かも」
「あ、あぅ、あ……っ」

 腑抜けた瞳は、どこかをぼんやりと見つめている。頬は染まり、汗がじんわりと滲んでいた。そんな蕩けた顔を見ていると、思考がふわりと歪む。

「ひっ、あ、あ゛っ……! す、ぜきっ、く」
「かわいい。だいすき。あいしてる……」

 頭がぼんやりとしてきた。気持ちいい。広瀬に挿入しているときは、いつもこうだ。彼は俺にドロドロに溶かされているが、それは俺もである。彼は俺を惑わせ、狂わせる淫魔なのだ。

「あっ、あーっ、だめ……いやっ、おく、っ! うぅ゛、ぼく、また、っ……!」
「気持ちいい? 俺も、スッゲー気持ちいい」
「むり、ぼく、もう、むり……だか、らっ、おく、やめ゛っ」

 ガツンと抉るように奥を攻めれば、彼が背中を反らせた。突き出された胸元にある突起に目が行き、舌を這わせる。更に体が痙攣し、広瀬が高い声をあげる。同時に、搾り取ろうとする内部の動きに、俺は耐えきれなくなった。

「ひ、ろせ」

 拙く、そして必死な声が自分の喉から出て、俺は思わず唇を噛み締める。

「好き、好きだ……すきっ」
「あっ、あっ、────!」

 彼の内部に白濁液を流し込む。コンドーム越しに与えられた熱いものに、広瀬が切なげな声をあげた。定まらない視線でこちらを見上げる。中が締め付けられ、俺は背中を震わせながら前のめりになった。彼の首筋に鼻を埋め、高鳴る心臓の鼓動を抑えるため、呼吸を繰り返す。

「すき、好き……広瀬、すきだ」
「……ぼくも」

 舌が回らないのか、どうも幼い口調で言われ、心臓の奥がむずむずとする。可愛いなとひとりごち、火照った頬に唇を押し付けた。
 彼の鼓動を肌で感じていると、睡魔が徐々に襲ってくる。抜いて、風呂に入って、早く寝よう。そう思い体を起こした途端、広瀬が口を開いた。

「ねぇ、洲関くん」
「ん?」
「……撮影は、今度ちゃんとするね。だから、嫌いにならないで」

 そう言われ、耳の先まで赤くなる。撮影を拒否したことで彼を嫌いになるわけがない。
 俺はなんとも言えない気持ちを孕ませながら、謝罪する。

「ごめん。俺が急に変なこと言い出したから」
「ううん。僕こそ、疑って、拒絶して……言うこときかなくて、ごめんなさい」

 そういうプレイが好きだって知らなくて……と目を伏せる彼に慌てて訂正する。

「違う、ハメ撮りが好きなわけじゃない」
「あ、違うの……?」

 焦っている俺を見つめ、彼が眉を八の字にした。違うと否定はしたが、別に興味がないわけじゃない。けれど広瀬に伝えるのは少し恥ずかしくて、咳払いをして誤魔化した。

「……会えない夜に、その。見ようかなって思っただけだよ」

 あぁ、そういうことだったんだ。と、彼が納得したように頷いた。

「……ていうか、撮影したものを回すわけないだろ。俺だけに見せるお前の本性を、誰にも見せたくない」

 正直なところ、見せたくないという独占欲と相反して、俺だけのものだと見せびらかしたい欲もある。
 しかし、後者の欲求を吐露してしまえば広瀬からの信用はガタ落ちだ。だから、敢えて綺麗事を呟いてみる。
 広瀬は俺の言葉を聞いて、頬を染めた。ズレた眼鏡を掛け直しながら、視線を逸らす。

「疑って、ごめんなさい。僕も、洲関くんだけにしか、見せたくないよ」

 照れくさそうに言葉を漏らす彼が愛しくて、思わず抱きしめる。中に収まっている俺のモノが無意識に反応したのか、もうしないよと広瀬が慌てて声をあげた。
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