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オマケ
*奴隷と主
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※本編で「攻め」だった人物の「受け」描写を含みます。
「今日からここが、お前の部屋だ」
そう言われて案内されたのは、魔の王の城の一室だった。奴隷のためのその部屋は、主の部屋の付属物だったが十分な広さがあった。
流石はお城だ、奴隷部屋ですら広くてキレイだ。とシャルは思う。
主の部屋に通じるドアには、鍵がかかっていた。その鍵をシャルに渡して、彼の主人であるアルダーは、静かに告げる。
「用があれば呼ぶ。その鍵はお前に預ける」
鍵の重さは、主の信頼の重さだ。シャルは鍵にヒモを通して、いつも身に着けられるようにした。
だが、アルダーがシャルを自室に呼ぶことはまれだった。着替えやら何やら、身の回りの細々したことを、主は自分でやってしまう。
「もっと御用を言いつけて下さい」
そう抗議したシャルに、アルダーは真顔で返した。
「俺は元々騎士だった。騎士見習いは自分の世話を全て自分で行う。その癖が抜けないのだ。お前の手をわずらわせるまでも無い。お前は仕事を自分で見つけろ」
魔の王陛下になる前、イリスの屋敷ではアルダーは誰かしらの世話を焼いていた。シャルはその手伝いをして、魔の者の屋敷での仕事を学んだ。
イリスが魔の王となり、タイキが他の世界とやらに帰った今、アルダーの仕事はイリスの護衛兼相談役と言う名の遊び相手になっている。シャルの仕事は減るばかりだ。
「……自分で仕事を見つけろ、かあ……」
仕方なしに、シャルは魔の王の城で小さな仕事を見つけては手伝った。魔の王の城は大きい。維持管理だけでも相当な人手がいる。やらなければならないことは、毎日山ほど有った。そうして、シャルは城に慣れていった。
イリスが魔の王の城に入ってから、二週間ほどが経ったある日。
そろそろ寝支度を始めようかと思っていたシャルを、珍しくアルダーが呼んだ。
「お呼びでしょうか? アルダー様」
鍵を開けて、アルダーの自室に入る。アルダーの部屋は良く片付いていて、備え付けの家具以外の物が少ない。魔獣としての生活が長かったアルダーには、余分な物をもつ習慣が無いのだろう。
「……シャル。すまん。頼みが、ある……」
珍しく、アルダーは言い淀んで眼を伏せた。その顔が青ざめて、頬も少しこけていた。
アルダーもヘッドに入る前なのだろう。ゆったりとしたガウン姿で、椅子にかけている。
大きなため息を一つ。何かを決意するようについて、アルダーはシャルを手招いた。
「こちらへ」
そのまま、立ち上がって寝室に続く扉を開く。アルダーの寝室に入るのは初めてで、シャルは少し緊張気味に主の後に続いた。寝室も、乱れたところは全くない。これじゃ、オレの仕事はないな。シャルは内心でため息をつく。
「あの……それで、オレに何の御用でしょうか?」
恐る恐るたずねるシャルに、アルダーは困ったように眉を寄せた。
「……俺は魔人だ。人を……食う」
「はい」
「……それで、お前に……『体液』を分けてもらいたい」
アルダーの奴隷はシャルしかいないのだから、いつかこんな日が来るかも、と心のどこかで思っていた。
母は魔人に食われて死んだ。その事が頭を過って、シャルは唇を噛んだ。
「……すまん。こんなことを頼めるのは、今はお前しかいない」
「……オレがイヤだって言ったら、アルダー様はどうなるのですか?」
好奇心でたずねた。アルダーはふっと苦い笑いを顔に浮かべて、静かに答えた。
「……恐らく飢えて、死ぬ、だろう。今もひどく乾いてはいる」
「『体液』……オレは、血を差し上げれば良いんですか?」
意を決して、シャルはアルダーを見つめた。
アルダーのことだから、シャルが死ぬまで血を吸い上げることは無いだろうと言う信頼もある。それでも、すこしだけ怖かった。
アルダーの紫色の瞳が、暗くかげって見える。ゆっくりと、主人の首が否定の方向に振られた。
「いや。血はいらない。血は身体が受け付けない。だから、他の物、汗や唾液、それに……精液、を、分けて欲しい……」
「……え……?」
「……何度も言わせるな。お前の子種を分けて欲しいと言っている!」
アルダーの顔が、耳まで赤くなるのを初めて見た。伏せられた瞳が羞恥に潤むのを、噛みしめた唇が艶めいて色づくのを、アルダーは止められないでいる。
「……え、あ……そ、その……オレ……オレで、良いんですか?」
「……ああ。今、奴隷はお前しかいない、からな」
「あ、の……そうです、ね……オレ、だけ、だから……」
こちらまで、顔が熱くなってくる。まさか、そんなモノを求められるとは思わなかった。
シャルは、赤く火照った頬に手を当てた。二人して、互いの眼を見られずに赤面する。
やがて、アルダーは気まずい空気を断ち切るように、ベッドを指し示した。
「……シャル、そこに座ってくれ」
「あ、あ……はい……」
大人しく指示に従う。アルダーのベッドはきちんと整えられていて、シワ一つ無い。それを乱すのは、何だか申し訳ないような気がした。
浅くベッドに腰掛けたシャルに向かって、アルダーはひざまずいた。意を決するように、一呼吸。緊張しているのか、微かに震える指先が、股間に伸ばされる。
「……触れても、良いか?」
乾いた声で、主は言う。シャルはどうして良いのか解らずに、小さくうなずいた。
ぎこちない手つきで、前をくつろげられる。夜の室温にさらされた性器は、気持ちと同じで縮こまっている。
「は、あ……」
ため息のような吐息をこぼして、アルダーはシャルの先端に唇を寄せてくる。
「……男にしゃぶられるのがイヤなら眼をつぶっていろ。口の中なら男でも女でもそう変わらない、から」
見上げてくる紫色の瞳は、ひどく飢えていた。ゴクリと、シャルは唾液を飲み込んだ。
アルダーのことは、尊敬している。仕事は正確だし、面倒見も良い。誰にでも公正で、良い主だと、思う。
だが、性的な魅力を感じていたかと聞かれると、それは解らない。
黒い髪に、魔の者の証、一房の遊色。今は『食欲』に負けそうになっている紫の瞳。顔立ちは男っぽくて良い顔だ。体格も恵まれていて、自分もいつかこうなりたいと思わせるようなそんなご主人様。
そんな魔人が、今は自分の前にひざまずいている。ぞくり。背筋に不思議なときめきが上っていく。
「……シャル?」
シャルの沈黙を拒絶と取ったのか、アルダーは不安げに眉を寄せた。
「……あ、の……アルダー、様。……遠慮無く、どうぞ……」
シャルとて、ウブな少年というわけでは無かったから、アルダーがどうするつもりなのか解っている。まだまだ萎えたままの自身に指先を添えて差し出すと、羞恥で頭がくらくらする。
「有り、難う……」
アルダーは安堵したようにそっと微笑んで、シャル自身に口づけた。
遠慮がちな舌が幹をはう。やがて大胆に、湿った口内がシャルを招き入れる。その口戯のたくみさに、シャルはたちまち血液が沸き立つのを感じた。
「……ん……ちゅく……れ……る……っ」
どうして、この人はこんなに上手いのか。命の糧を得るためだとは言え、本能だけでこんなに上手になるものだろうか?
以前にもこうして、誰かのモノをくわえたのだろうか?
脳裏に浮かんだ疑問は、直ぐに快楽に押し流されていく。
気が付けば、アルダーの頭を抱え込んで、シャルは喉の奥に射精していた。
「……ふ……ぁ……っ」
ビクビクと跳ねる身体を、アルダーは優しく撫でてくれる。こくりと、飲み下す音が聞こえて、シャルは息を飲んだ。
「……は、あ……濃い、な……お前の子種は……」
うっとりとした声音で言うアルダーの瞳は、ひどく淫蕩だ。
「……アルダー様?」
思わず、主の名を呼ぶ。その視線は、未だ収まらないシャルの股間に向けられている。
「……まだ、足りない。もっと……欲しい……」
切なげにねだるアルダーに、シャルは抗えなかった。
再び芯を持ち始めたシャル自身を、アルダーは嬉々として口淫する。
「……アルダー様……オレ……オレ、もう……」
「もう少し……我慢してくれ……俺が、全部、もらう、から……」
そう言って、アルダーはシャルの先端を口に含んだまま、手で根元をしごく。
「あ……ああっ!」
強い刺激に、シャルは呆気なく達してしまった。どぷっとあふれた熱い白濁を、アルダーは一滴残さず受け止める。
「……は……んぅ……ちゅっ」
飢えきった乳飲み子が、乳をねだるように。アルダーはシャルの精を吸い上げ、むさぼった。
それから、一週間に一度のペースで、シャルはアルダーの寝室に呼ばれるようになった。
回数を重ねるうちに、段々とシャルはこの状況に慣れてきた。今ではアルダーの口内で果てることにも、抵抗は無くなっている。
「……あむ……んく……は……」
今日もアルダーは、シャルの精液を美味そうに飲んでいた。
「……あ、あの……アルダー様……」
「……ん……何だ?」
「……あの、こうしてオレがあなたの『食料』になる前、誰があなたに精液を献上していたんですか?」
恐る恐るたずねるシャルに向かって、アルダーは苦笑した。
「……タイキがいてくれたからな。以前は。あいつが俺を満たしてくれた」
懐かしそうな、それでいて切なげな表情で語るアルダーの言葉に、シャルの心にチクリとトゲが刺さる。
タイキ。見知らぬ世界から来たという、不思議と明るい男だった。自分を誘拐して、ひどい目に合わせたシャルとイリスを和解させようと懸命になっていた。優しい男だった、と思う。
タイキはアルダーにとって、特別な相手。それが、アルダーの口ぶりでわかった。
「そう、ですか……」
嫉妬じみた感情が胸に沸き上がる。それを悟られたくなくて、シャルは話題を変えた。
「……ところで、その……アルダー様は大丈夫ですか? ……その、ご自分のことは」
シャル自身をしゃぶる間、アルダーが興奮していることは解っていた。だが、彼は一度も自身の欲望を満たそうとしない。
「俺は、良い。お前を抱く気もお前に抱かれる気もない」
「でも……」
「俺の事は気にしなくても良い。お前は、自分の役目を全うすれば良い」
そう言って、アルダーはシャルの頭を撫でた。
「はい……」
主人の優しさに甘えて、シャルはアルダーの口の中でもう一度果てた。
月日は流れて、夏になった。
『方舟』の四季は穏やかで、夏と言っても気温はそう高くはならない。代わり映えのしない日々。アルダーには、まだシャル以外の奴隷は居ない。
夜。今日もアルダーのベッドに腰掛けて、シャルは主人の食事を見守っていた。
「……あ……」
アルダーの食事が終わり、唇が離れていく。それが、いつしかとても寂しくて。
相変わらず、アルダーは『食事』以上の何かをシャルに求めることはない。
「シャル」
「はい」
「いつも、悪いな」
「いえ……これが、オレの役目ですから」
シャルが微笑んで見せると、アルダーは安心したようにうなずいた。
「……有り難う、シャル。なあ、何か欲しいものは無いか?」
「欲しい、もの?」
不意に切り出した主人に、シャルは戸惑う。
「そろそろ奴隷を増やそうと思う。お前にばかり負担をかける訳にはいかないから。その前に、お前には世話になったからな。何でも言ってくれ。お前が自由になりたいと言うのなら、それも良いだろう。金が欲しいというならどうにかしよう」
「え、あ……な、なんで、そんな事、おっしゃるんです、か?」
──奴隷を増やす?
それじゃ、あなたはオレ以外のヤツからこうして『食事』をするのか。胸の奥がぐるぐると乱れて、何も考えられない。
「お前も、こんなむさ苦しい男に精を搾られる生活はいやだっただろう? だから……」
「い、嫌じゃない! 全然、嫌なんかじゃ、無い!」
突然叫んだシャルに、アルダーは驚いたように身をすくめた。
「シャ、ル?」
「だって、オレ、アルダー様のこと、尊敬していますし……それに」
「それに?」
「……あなたのこと、好き、なんです」
消え入りそうな声で告白すると、アルダーの顔が驚きの表情を浮かべる。
「な……お前……そういう冗談は……心臓に、悪い……」
「冗談なんて、言わない。本気です。オレ、あなたが好きなんです」
「……っ」
アルダーは言葉を失う。その瞳に宿るのは、困惑とわずかなおびえの色。
「……その、な……シャル……気持ちは嬉しいが……俺は……」
「わかってます。アルダー様は、タイキが……あの人が忘れられないんでしょう? でも、もう、あの人はここにいない」
「……」
「オレは、タイキの代わりにはなれないし、なりたくもない。でも、せめて、今夜だけは……」
そう言って、シャルはアルダーの唇に触れるだけのキスをした。
「シャル……?」
「ねえ、アルダー様。今夜だけでも……あなたを下さいませんか?」
「……っ」
触れられた唇に指をあてて、アルダーは息を飲む。紫の瞳が揺れている。その奥に、シャルと同じ欲望の欠片が灯っているのを見て、シャルは微笑んだ。
「……良いですよね? アルダー様」
アルダーは答えなかった。けれど、拒絶されなかった。その気になれば、簡単に拒むことが出来るのに。
アルダーの上に覆い被さったシャルは、今まで自分がされたように、彼に奉仕する。
恵まれた体格に相応しく、アルダー自身はシャルが簡単にくわえきれないほど大きい。
唇の端から唾液をあふれさせて、シャルは口淫を続ける。
「ん……ふぅ……ちゅ……ぁ……おっきい……っ」
「……シャル……ん……すまん……ぁ」
アルダーも、シャルと同じように、シャル自身を口に含む。互いに舐めあう体勢でベッドに転がった二人は、次第に追い立てられていく。
「あ……アルダーさま……」
「シャル……」
互いの性器を刺激し合ううちに、シャルは我慢できなくなって、アルダーの口内へ射精した。
「ん……んく……ん……」
アルダーは喉を鳴らして、いつものようにシャルの精を飲み下す。
「あぅ……アルダー様……オレ……オレ……っ」
「……シャル、お前はどうしたい? このまま俺に抱かれるか、それとも俺を……」
「あなたを抱きたい」
迷わずに告げると、アルダーは一瞬目を見開いた後、観念したように目を閉じた。
「……そうか」
「あなたが欲しい。あなたを全部、オレのものにさせてください。今日だけは」
「……わかった。お前に抱かれよう」
しばしの沈黙のあと。アルダーはそう言うと、ガウンと下着を脱いでシャルに背を向けた。
「俺を……満たしてくれ」
そう言って、自ら腰を突き出してみせる。その仕草があまりにも手慣れていて、シャルは思わず唾を飲み込んだ。
「アルダー様……行きますよ」
「……来てくれ」
着ている物を脱ぎ散らしてから、シャルはアルダーの秘所に指を埋め込む。そこは熱くぬかるんでいて、シャルの指にからみつくように受け入れた。
「ここも、使ってたんですね」
「……ああ。随分昔のことだがな」
「……」
アルダーが、自分以外の誰かに抱かれたことがあるという事実。それに、嫉妬しなかったと言えば嘘になる。けれど今は、それ以上に、アルダーが自分の前でだけ雌としての姿を見せたことが嬉しかった。
「ん……」
ゆっくりと、後ろからアルダーの身体を貫く。根元まで自身を埋め込むと、アルダーは小さく震えた。
「動いて、いい、ですか……?」
「……」
返答の代わりに、ちろりとアルダーは唇を舐めて振り返る。
誘っているんだ。そう感じた瞬間、シャルは我慢できなくなって、動き始める。
「あ、ああっ……」
腰を打ち付けるたびに、アルダーは切なげに甘く鳴く。その声に煽られて、シャルの律動は激しくなる。
「あ、あぅ、あ、あ……」
「アルダー様……アルダー様……!」
「あ、あぁ、あ……そこ……あぁ……っ」
快楽に染まるアルダーの声が心地よくて、もっと聞きたいと腰を振る。
男とすることは初めてだったから、シャルには勝手がわからない。ただ、夢中でがっついた。次第に、アルダーの内壁がきゅうっと締まる。限界が近いようだ。
「あ、あ、はげし、あぁ……!」
アルダーは、背中をしならせながら達した。先端からあふれる白濁が、白いシーツを汚していく。
シャルもまた、アルダーの中に何度目かわからぬ精を放った。
萎えかけた自身をそっと体内から引き抜くと、ぽっかりと口を開けていた蕾がはくっと閉じた。そこから、わずかにシャルが放ったモノがこぼれる。
「あ……はあ……あ……」
脱力して枕に顔を伏せるアルダーの耳元に、シャルは唇を寄せてささやいた。
「アルダー様、愛しています」
「っ……!」
ビクリと肩を震わせてから、アルダーはゆっくりとこちらを振り返った。
「シャル……」
「何ですか?」
「……いや……何でもない」
そう言ったきり、アルダーは黙り込んでしまった。
──あなたも、オレを愛してくれますか?
そう、聞けたらいいのに。でも、それは出来ない。わかっている。
アルダーの心には別の……アイツが今でも住んでいる。でも、こうして身体をつなげられただけで、十分しあわせだ。
「……シャル。お前、それで……どうする?」
「……どう、する?」
主人の問いかけの意味がつかめずに、シャルはきょとんと首をかしげた。
「礼をしたい、と思っているのは本当だ。お前は何が欲しい?」
そっと、アルダーはシャルの髪を撫でる。もっともっと、触れてほしい。触れられる度に胸の奥が温かくなる。だから。
「……あの……もしオレに礼がしたいって思うなら、たまにこうして……あなたを抱かせて下さい!」
「……今夜だけ、では無かったか?」
苦笑しながらたずねるアルダーに、シャルは照れ笑いを浮かべる。
「それは……でも、やっぱり……欲張りなんです、オレ」
「……まあ、良いだろう。それがお前が望みなら」
ため息をつくように、アルダーは静かに微笑んだ。
「有り難うございます! アルダー様! それと……」
「……まだ、何かあるのか?」
「奴隷は増やしてもいい、ですけど、『食用』の奴隷は……オレだけにしてください! オレ、頑張りますから!」
シャルは、心の底からの笑顔を向ける。
今はこれで良い。いつか、いつか、アルダーの気持ちが、少しでも自分に向いてくれる日が来るかも知れない、から。
じっと、シャルの顔を見つめていたアルダーがふと赤くなった。
「アルダー様?」
「……っ、なんでもない。わかった。『食用』奴隷は増やさない。今日はもう休め。明日も早いぞ」
「はい!」
アルダーの答えが聞けて、シャルは安堵する。シャルは起き上がって、脱ぎ捨てた服を抱え上げた。
「おやすみなさい! アルダー様」
「ああ、おやすみ」
足取りも軽く自分の部屋に戻ったシャルは、大切な鍵でドアを施錠した。かちゃり。その音がとても心地良い。
鍵の重さは信頼の重さ。その夜、シャルは預けられた鍵を握りしめて眠った。
「今日からここが、お前の部屋だ」
そう言われて案内されたのは、魔の王の城の一室だった。奴隷のためのその部屋は、主の部屋の付属物だったが十分な広さがあった。
流石はお城だ、奴隷部屋ですら広くてキレイだ。とシャルは思う。
主の部屋に通じるドアには、鍵がかかっていた。その鍵をシャルに渡して、彼の主人であるアルダーは、静かに告げる。
「用があれば呼ぶ。その鍵はお前に預ける」
鍵の重さは、主の信頼の重さだ。シャルは鍵にヒモを通して、いつも身に着けられるようにした。
だが、アルダーがシャルを自室に呼ぶことはまれだった。着替えやら何やら、身の回りの細々したことを、主は自分でやってしまう。
「もっと御用を言いつけて下さい」
そう抗議したシャルに、アルダーは真顔で返した。
「俺は元々騎士だった。騎士見習いは自分の世話を全て自分で行う。その癖が抜けないのだ。お前の手をわずらわせるまでも無い。お前は仕事を自分で見つけろ」
魔の王陛下になる前、イリスの屋敷ではアルダーは誰かしらの世話を焼いていた。シャルはその手伝いをして、魔の者の屋敷での仕事を学んだ。
イリスが魔の王となり、タイキが他の世界とやらに帰った今、アルダーの仕事はイリスの護衛兼相談役と言う名の遊び相手になっている。シャルの仕事は減るばかりだ。
「……自分で仕事を見つけろ、かあ……」
仕方なしに、シャルは魔の王の城で小さな仕事を見つけては手伝った。魔の王の城は大きい。維持管理だけでも相当な人手がいる。やらなければならないことは、毎日山ほど有った。そうして、シャルは城に慣れていった。
イリスが魔の王の城に入ってから、二週間ほどが経ったある日。
そろそろ寝支度を始めようかと思っていたシャルを、珍しくアルダーが呼んだ。
「お呼びでしょうか? アルダー様」
鍵を開けて、アルダーの自室に入る。アルダーの部屋は良く片付いていて、備え付けの家具以外の物が少ない。魔獣としての生活が長かったアルダーには、余分な物をもつ習慣が無いのだろう。
「……シャル。すまん。頼みが、ある……」
珍しく、アルダーは言い淀んで眼を伏せた。その顔が青ざめて、頬も少しこけていた。
アルダーもヘッドに入る前なのだろう。ゆったりとしたガウン姿で、椅子にかけている。
大きなため息を一つ。何かを決意するようについて、アルダーはシャルを手招いた。
「こちらへ」
そのまま、立ち上がって寝室に続く扉を開く。アルダーの寝室に入るのは初めてで、シャルは少し緊張気味に主の後に続いた。寝室も、乱れたところは全くない。これじゃ、オレの仕事はないな。シャルは内心でため息をつく。
「あの……それで、オレに何の御用でしょうか?」
恐る恐るたずねるシャルに、アルダーは困ったように眉を寄せた。
「……俺は魔人だ。人を……食う」
「はい」
「……それで、お前に……『体液』を分けてもらいたい」
アルダーの奴隷はシャルしかいないのだから、いつかこんな日が来るかも、と心のどこかで思っていた。
母は魔人に食われて死んだ。その事が頭を過って、シャルは唇を噛んだ。
「……すまん。こんなことを頼めるのは、今はお前しかいない」
「……オレがイヤだって言ったら、アルダー様はどうなるのですか?」
好奇心でたずねた。アルダーはふっと苦い笑いを顔に浮かべて、静かに答えた。
「……恐らく飢えて、死ぬ、だろう。今もひどく乾いてはいる」
「『体液』……オレは、血を差し上げれば良いんですか?」
意を決して、シャルはアルダーを見つめた。
アルダーのことだから、シャルが死ぬまで血を吸い上げることは無いだろうと言う信頼もある。それでも、すこしだけ怖かった。
アルダーの紫色の瞳が、暗くかげって見える。ゆっくりと、主人の首が否定の方向に振られた。
「いや。血はいらない。血は身体が受け付けない。だから、他の物、汗や唾液、それに……精液、を、分けて欲しい……」
「……え……?」
「……何度も言わせるな。お前の子種を分けて欲しいと言っている!」
アルダーの顔が、耳まで赤くなるのを初めて見た。伏せられた瞳が羞恥に潤むのを、噛みしめた唇が艶めいて色づくのを、アルダーは止められないでいる。
「……え、あ……そ、その……オレ……オレで、良いんですか?」
「……ああ。今、奴隷はお前しかいない、からな」
「あ、の……そうです、ね……オレ、だけ、だから……」
こちらまで、顔が熱くなってくる。まさか、そんなモノを求められるとは思わなかった。
シャルは、赤く火照った頬に手を当てた。二人して、互いの眼を見られずに赤面する。
やがて、アルダーは気まずい空気を断ち切るように、ベッドを指し示した。
「……シャル、そこに座ってくれ」
「あ、あ……はい……」
大人しく指示に従う。アルダーのベッドはきちんと整えられていて、シワ一つ無い。それを乱すのは、何だか申し訳ないような気がした。
浅くベッドに腰掛けたシャルに向かって、アルダーはひざまずいた。意を決するように、一呼吸。緊張しているのか、微かに震える指先が、股間に伸ばされる。
「……触れても、良いか?」
乾いた声で、主は言う。シャルはどうして良いのか解らずに、小さくうなずいた。
ぎこちない手つきで、前をくつろげられる。夜の室温にさらされた性器は、気持ちと同じで縮こまっている。
「は、あ……」
ため息のような吐息をこぼして、アルダーはシャルの先端に唇を寄せてくる。
「……男にしゃぶられるのがイヤなら眼をつぶっていろ。口の中なら男でも女でもそう変わらない、から」
見上げてくる紫色の瞳は、ひどく飢えていた。ゴクリと、シャルは唾液を飲み込んだ。
アルダーのことは、尊敬している。仕事は正確だし、面倒見も良い。誰にでも公正で、良い主だと、思う。
だが、性的な魅力を感じていたかと聞かれると、それは解らない。
黒い髪に、魔の者の証、一房の遊色。今は『食欲』に負けそうになっている紫の瞳。顔立ちは男っぽくて良い顔だ。体格も恵まれていて、自分もいつかこうなりたいと思わせるようなそんなご主人様。
そんな魔人が、今は自分の前にひざまずいている。ぞくり。背筋に不思議なときめきが上っていく。
「……シャル?」
シャルの沈黙を拒絶と取ったのか、アルダーは不安げに眉を寄せた。
「……あ、の……アルダー、様。……遠慮無く、どうぞ……」
シャルとて、ウブな少年というわけでは無かったから、アルダーがどうするつもりなのか解っている。まだまだ萎えたままの自身に指先を添えて差し出すと、羞恥で頭がくらくらする。
「有り、難う……」
アルダーは安堵したようにそっと微笑んで、シャル自身に口づけた。
遠慮がちな舌が幹をはう。やがて大胆に、湿った口内がシャルを招き入れる。その口戯のたくみさに、シャルはたちまち血液が沸き立つのを感じた。
「……ん……ちゅく……れ……る……っ」
どうして、この人はこんなに上手いのか。命の糧を得るためだとは言え、本能だけでこんなに上手になるものだろうか?
以前にもこうして、誰かのモノをくわえたのだろうか?
脳裏に浮かんだ疑問は、直ぐに快楽に押し流されていく。
気が付けば、アルダーの頭を抱え込んで、シャルは喉の奥に射精していた。
「……ふ……ぁ……っ」
ビクビクと跳ねる身体を、アルダーは優しく撫でてくれる。こくりと、飲み下す音が聞こえて、シャルは息を飲んだ。
「……は、あ……濃い、な……お前の子種は……」
うっとりとした声音で言うアルダーの瞳は、ひどく淫蕩だ。
「……アルダー様?」
思わず、主の名を呼ぶ。その視線は、未だ収まらないシャルの股間に向けられている。
「……まだ、足りない。もっと……欲しい……」
切なげにねだるアルダーに、シャルは抗えなかった。
再び芯を持ち始めたシャル自身を、アルダーは嬉々として口淫する。
「……アルダー様……オレ……オレ、もう……」
「もう少し……我慢してくれ……俺が、全部、もらう、から……」
そう言って、アルダーはシャルの先端を口に含んだまま、手で根元をしごく。
「あ……ああっ!」
強い刺激に、シャルは呆気なく達してしまった。どぷっとあふれた熱い白濁を、アルダーは一滴残さず受け止める。
「……は……んぅ……ちゅっ」
飢えきった乳飲み子が、乳をねだるように。アルダーはシャルの精を吸い上げ、むさぼった。
それから、一週間に一度のペースで、シャルはアルダーの寝室に呼ばれるようになった。
回数を重ねるうちに、段々とシャルはこの状況に慣れてきた。今ではアルダーの口内で果てることにも、抵抗は無くなっている。
「……あむ……んく……は……」
今日もアルダーは、シャルの精液を美味そうに飲んでいた。
「……あ、あの……アルダー様……」
「……ん……何だ?」
「……あの、こうしてオレがあなたの『食料』になる前、誰があなたに精液を献上していたんですか?」
恐る恐るたずねるシャルに向かって、アルダーは苦笑した。
「……タイキがいてくれたからな。以前は。あいつが俺を満たしてくれた」
懐かしそうな、それでいて切なげな表情で語るアルダーの言葉に、シャルの心にチクリとトゲが刺さる。
タイキ。見知らぬ世界から来たという、不思議と明るい男だった。自分を誘拐して、ひどい目に合わせたシャルとイリスを和解させようと懸命になっていた。優しい男だった、と思う。
タイキはアルダーにとって、特別な相手。それが、アルダーの口ぶりでわかった。
「そう、ですか……」
嫉妬じみた感情が胸に沸き上がる。それを悟られたくなくて、シャルは話題を変えた。
「……ところで、その……アルダー様は大丈夫ですか? ……その、ご自分のことは」
シャル自身をしゃぶる間、アルダーが興奮していることは解っていた。だが、彼は一度も自身の欲望を満たそうとしない。
「俺は、良い。お前を抱く気もお前に抱かれる気もない」
「でも……」
「俺の事は気にしなくても良い。お前は、自分の役目を全うすれば良い」
そう言って、アルダーはシャルの頭を撫でた。
「はい……」
主人の優しさに甘えて、シャルはアルダーの口の中でもう一度果てた。
月日は流れて、夏になった。
『方舟』の四季は穏やかで、夏と言っても気温はそう高くはならない。代わり映えのしない日々。アルダーには、まだシャル以外の奴隷は居ない。
夜。今日もアルダーのベッドに腰掛けて、シャルは主人の食事を見守っていた。
「……あ……」
アルダーの食事が終わり、唇が離れていく。それが、いつしかとても寂しくて。
相変わらず、アルダーは『食事』以上の何かをシャルに求めることはない。
「シャル」
「はい」
「いつも、悪いな」
「いえ……これが、オレの役目ですから」
シャルが微笑んで見せると、アルダーは安心したようにうなずいた。
「……有り難う、シャル。なあ、何か欲しいものは無いか?」
「欲しい、もの?」
不意に切り出した主人に、シャルは戸惑う。
「そろそろ奴隷を増やそうと思う。お前にばかり負担をかける訳にはいかないから。その前に、お前には世話になったからな。何でも言ってくれ。お前が自由になりたいと言うのなら、それも良いだろう。金が欲しいというならどうにかしよう」
「え、あ……な、なんで、そんな事、おっしゃるんです、か?」
──奴隷を増やす?
それじゃ、あなたはオレ以外のヤツからこうして『食事』をするのか。胸の奥がぐるぐると乱れて、何も考えられない。
「お前も、こんなむさ苦しい男に精を搾られる生活はいやだっただろう? だから……」
「い、嫌じゃない! 全然、嫌なんかじゃ、無い!」
突然叫んだシャルに、アルダーは驚いたように身をすくめた。
「シャ、ル?」
「だって、オレ、アルダー様のこと、尊敬していますし……それに」
「それに?」
「……あなたのこと、好き、なんです」
消え入りそうな声で告白すると、アルダーの顔が驚きの表情を浮かべる。
「な……お前……そういう冗談は……心臓に、悪い……」
「冗談なんて、言わない。本気です。オレ、あなたが好きなんです」
「……っ」
アルダーは言葉を失う。その瞳に宿るのは、困惑とわずかなおびえの色。
「……その、な……シャル……気持ちは嬉しいが……俺は……」
「わかってます。アルダー様は、タイキが……あの人が忘れられないんでしょう? でも、もう、あの人はここにいない」
「……」
「オレは、タイキの代わりにはなれないし、なりたくもない。でも、せめて、今夜だけは……」
そう言って、シャルはアルダーの唇に触れるだけのキスをした。
「シャル……?」
「ねえ、アルダー様。今夜だけでも……あなたを下さいませんか?」
「……っ」
触れられた唇に指をあてて、アルダーは息を飲む。紫の瞳が揺れている。その奥に、シャルと同じ欲望の欠片が灯っているのを見て、シャルは微笑んだ。
「……良いですよね? アルダー様」
アルダーは答えなかった。けれど、拒絶されなかった。その気になれば、簡単に拒むことが出来るのに。
アルダーの上に覆い被さったシャルは、今まで自分がされたように、彼に奉仕する。
恵まれた体格に相応しく、アルダー自身はシャルが簡単にくわえきれないほど大きい。
唇の端から唾液をあふれさせて、シャルは口淫を続ける。
「ん……ふぅ……ちゅ……ぁ……おっきい……っ」
「……シャル……ん……すまん……ぁ」
アルダーも、シャルと同じように、シャル自身を口に含む。互いに舐めあう体勢でベッドに転がった二人は、次第に追い立てられていく。
「あ……アルダーさま……」
「シャル……」
互いの性器を刺激し合ううちに、シャルは我慢できなくなって、アルダーの口内へ射精した。
「ん……んく……ん……」
アルダーは喉を鳴らして、いつものようにシャルの精を飲み下す。
「あぅ……アルダー様……オレ……オレ……っ」
「……シャル、お前はどうしたい? このまま俺に抱かれるか、それとも俺を……」
「あなたを抱きたい」
迷わずに告げると、アルダーは一瞬目を見開いた後、観念したように目を閉じた。
「……そうか」
「あなたが欲しい。あなたを全部、オレのものにさせてください。今日だけは」
「……わかった。お前に抱かれよう」
しばしの沈黙のあと。アルダーはそう言うと、ガウンと下着を脱いでシャルに背を向けた。
「俺を……満たしてくれ」
そう言って、自ら腰を突き出してみせる。その仕草があまりにも手慣れていて、シャルは思わず唾を飲み込んだ。
「アルダー様……行きますよ」
「……来てくれ」
着ている物を脱ぎ散らしてから、シャルはアルダーの秘所に指を埋め込む。そこは熱くぬかるんでいて、シャルの指にからみつくように受け入れた。
「ここも、使ってたんですね」
「……ああ。随分昔のことだがな」
「……」
アルダーが、自分以外の誰かに抱かれたことがあるという事実。それに、嫉妬しなかったと言えば嘘になる。けれど今は、それ以上に、アルダーが自分の前でだけ雌としての姿を見せたことが嬉しかった。
「ん……」
ゆっくりと、後ろからアルダーの身体を貫く。根元まで自身を埋め込むと、アルダーは小さく震えた。
「動いて、いい、ですか……?」
「……」
返答の代わりに、ちろりとアルダーは唇を舐めて振り返る。
誘っているんだ。そう感じた瞬間、シャルは我慢できなくなって、動き始める。
「あ、ああっ……」
腰を打ち付けるたびに、アルダーは切なげに甘く鳴く。その声に煽られて、シャルの律動は激しくなる。
「あ、あぅ、あ、あ……」
「アルダー様……アルダー様……!」
「あ、あぁ、あ……そこ……あぁ……っ」
快楽に染まるアルダーの声が心地よくて、もっと聞きたいと腰を振る。
男とすることは初めてだったから、シャルには勝手がわからない。ただ、夢中でがっついた。次第に、アルダーの内壁がきゅうっと締まる。限界が近いようだ。
「あ、あ、はげし、あぁ……!」
アルダーは、背中をしならせながら達した。先端からあふれる白濁が、白いシーツを汚していく。
シャルもまた、アルダーの中に何度目かわからぬ精を放った。
萎えかけた自身をそっと体内から引き抜くと、ぽっかりと口を開けていた蕾がはくっと閉じた。そこから、わずかにシャルが放ったモノがこぼれる。
「あ……はあ……あ……」
脱力して枕に顔を伏せるアルダーの耳元に、シャルは唇を寄せてささやいた。
「アルダー様、愛しています」
「っ……!」
ビクリと肩を震わせてから、アルダーはゆっくりとこちらを振り返った。
「シャル……」
「何ですか?」
「……いや……何でもない」
そう言ったきり、アルダーは黙り込んでしまった。
──あなたも、オレを愛してくれますか?
そう、聞けたらいいのに。でも、それは出来ない。わかっている。
アルダーの心には別の……アイツが今でも住んでいる。でも、こうして身体をつなげられただけで、十分しあわせだ。
「……シャル。お前、それで……どうする?」
「……どう、する?」
主人の問いかけの意味がつかめずに、シャルはきょとんと首をかしげた。
「礼をしたい、と思っているのは本当だ。お前は何が欲しい?」
そっと、アルダーはシャルの髪を撫でる。もっともっと、触れてほしい。触れられる度に胸の奥が温かくなる。だから。
「……あの……もしオレに礼がしたいって思うなら、たまにこうして……あなたを抱かせて下さい!」
「……今夜だけ、では無かったか?」
苦笑しながらたずねるアルダーに、シャルは照れ笑いを浮かべる。
「それは……でも、やっぱり……欲張りなんです、オレ」
「……まあ、良いだろう。それがお前が望みなら」
ため息をつくように、アルダーは静かに微笑んだ。
「有り難うございます! アルダー様! それと……」
「……まだ、何かあるのか?」
「奴隷は増やしてもいい、ですけど、『食用』の奴隷は……オレだけにしてください! オレ、頑張りますから!」
シャルは、心の底からの笑顔を向ける。
今はこれで良い。いつか、いつか、アルダーの気持ちが、少しでも自分に向いてくれる日が来るかも知れない、から。
じっと、シャルの顔を見つめていたアルダーがふと赤くなった。
「アルダー様?」
「……っ、なんでもない。わかった。『食用』奴隷は増やさない。今日はもう休め。明日も早いぞ」
「はい!」
アルダーの答えが聞けて、シャルは安堵する。シャルは起き上がって、脱ぎ捨てた服を抱え上げた。
「おやすみなさい! アルダー様」
「ああ、おやすみ」
足取りも軽く自分の部屋に戻ったシャルは、大切な鍵でドアを施錠した。かちゃり。その音がとても心地良い。
鍵の重さは信頼の重さ。その夜、シャルは預けられた鍵を握りしめて眠った。
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