20 / 21
おいてけぼり
気が付いたら真っ暗で何も見えない場所にいた。いや、何も見えない"場所"じゃない。僕自身が目を閉じているんだ。そう気付いて目を開けようとするけど、まるで接着剤でくっつかれたみたいに目が開かない。
……あぁ、多分だけど、脳が目を開けることを拒んでいるから開かないんだ。何も見たくないという気持ちと、期待したくないという気持ち。そのどちらもが重なって目が開かなくなってしまった。そんなところかな。
なんでこんなに冷静でいられているかというと何となくこれが現実ではないと気付いているからだ。正確に何処かとかは分からないけれど、そんな気だけはしている。どこか気持ちがふわふわしている、夢の中のような感覚。ふと思いついて、一歩足を踏み出してみる。足が着いた感触はなかったけれど、夢のような幻想空間だとすれば当たり前だと思った。なんの音もしない。気配も何も感じなくて、現実ではないとわかっているにしてもずっとここにいると気が狂ってしまいそうだ。……光が差し込んで来るまで、あと何年か掛かるみたいだ。
✱✱✱
「ルナ、おはよう。入ってもいいかな?」
「はい!おはようございます!どうぞ、入ってください!」
一週間前くらいから、この人がよく僕の部屋に来るようになった。そしていつも知らない本だったり、玩具だったり面白そうなものを持ってきてくれて毎日の楽しみが増えたんだ。
「今日はね、ルナ。お菓子を作って来たんだ。良かったら一緒に食べないかい?」
「いいんですか?ありがとうございます!ぜひ!」
「ふふ、ルナは元気がいいね。お兄様も嬉しいよ」
そう言ってこの人は持ってきてくれたお菓子を机に置いてくれる。これは、なんだろう?ガトーショコラに見えるけど…
「これはね、フォンダンショコラだよ。中からチョコがとろっと出てきて美味しいんだ。上手に出来てるといいんだけど……」
「へえー!そんなお菓子もあるんですね!早速食べてもいいですか?」
「ぜひ、食べて欲しいな。」
「じゃあ、いただきます!」
フォークをその、フォンダンショコラに刺して切り分けると中のチョコが溢れてきて思わず「わあ…」という声が漏れた。目で見るだけでもすっごく美味しそうだ。見るだけじゃ耐えきれなくなってすぐに口の中へ放り込んだ。
……うん!美味しい!!
「あの、これ!すっごく美味しいです!」
「…そっか。それは良かったよ。ルナの口にあったようで。」
……この人はたまに僕が喋ると少し曇ったような顔をする。なんでだろう。時にはその後心配するような言葉遣いをしてくれるけど、僕は心配されることないくらいに元気なのに、と思ってしまう。
でも今日は何事も無かったように話してくれる。……なんだろう、この違和感。僕が立ち止まってしまったみたいだ。
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!
雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。
共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。
《キャラ紹介》
メウィル・ディアス
・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き
リィル・ディアス
・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも
レイエル・ネジクト
・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き
アルト・ネジクト
・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。
ーーーーー
閲覧ありがとうございます!
この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください!
是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです