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1章 後悔
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私には、一生悔やんでも悔やみきれない失敗がある。
―― 一生のお願いだから、ね?
どうしてあの時、彼女の願いを聞き入れてしまったのだろう。
その為にこの世で一番大切な人を失う羽目になった。
王の一人息子として生まれたあなたには秘密があった。
それは女性であったこと。
それは、あなたの罪ではなかった。
あなたの母が産婆に金を握らせ、性別を偽らせたのだ。その事を知っているのは、乳母とその娘である私のみ。
湯浴みや、着付けも秘密を守るため、全て私たち母子が担った。
あなたは、与えられた運命に押し潰されることもなく、けなげに努力し続けた。
次代の王として立派に振る舞うために。
それは、彼女のただ一度のわがままだった。
普段王子といて振る舞っているルイは、一体どんな気まぐれか、下町の祭りを見に行きたいといいだした。
王子として祭りに参加すれば、護衛や従者たちに囲まれて祭りを見るどころではなくなってしまう。
だから、私と入れ替わって欲しいと。
私は困惑した。
乳母の娘である私ならば、使用人扱いなので、城の外へも比較的自由に外出できた。
普段は誰よりも立派で気高く振る舞う王子ルイも、私にとってはかわいい妹にすぎなかった。
彼女の願いに根負けし、私は自分の服と彼女の服を交換し、私と同じ黒髪のかつらを被せ化粧を施し帽子を目深に被らせ、外出させた。
魅力的な青い瞳を持つ若く美しい娘。
それが、私が見たそのときのルイの姿だった。
少しでも息抜きができればいいと思ったのだ。
それが、彼女を失うことにつながるなんて、思いもせずに。
(どうしてあの時、彼女を外に出してしまったのだろう)
その問いに対する答えは、一生かけても出ないものだった。
―― 一生のお願いだから、ね?
どうしてあの時、彼女の願いを聞き入れてしまったのだろう。
その為にこの世で一番大切な人を失う羽目になった。
王の一人息子として生まれたあなたには秘密があった。
それは女性であったこと。
それは、あなたの罪ではなかった。
あなたの母が産婆に金を握らせ、性別を偽らせたのだ。その事を知っているのは、乳母とその娘である私のみ。
湯浴みや、着付けも秘密を守るため、全て私たち母子が担った。
あなたは、与えられた運命に押し潰されることもなく、けなげに努力し続けた。
次代の王として立派に振る舞うために。
それは、彼女のただ一度のわがままだった。
普段王子といて振る舞っているルイは、一体どんな気まぐれか、下町の祭りを見に行きたいといいだした。
王子として祭りに参加すれば、護衛や従者たちに囲まれて祭りを見るどころではなくなってしまう。
だから、私と入れ替わって欲しいと。
私は困惑した。
乳母の娘である私ならば、使用人扱いなので、城の外へも比較的自由に外出できた。
普段は誰よりも立派で気高く振る舞う王子ルイも、私にとってはかわいい妹にすぎなかった。
彼女の願いに根負けし、私は自分の服と彼女の服を交換し、私と同じ黒髪のかつらを被せ化粧を施し帽子を目深に被らせ、外出させた。
魅力的な青い瞳を持つ若く美しい娘。
それが、私が見たそのときのルイの姿だった。
少しでも息抜きができればいいと思ったのだ。
それが、彼女を失うことにつながるなんて、思いもせずに。
(どうしてあの時、彼女を外に出してしまったのだろう)
その問いに対する答えは、一生かけても出ないものだった。
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