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3章 ろうそくの炎
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乳母の娘の妊娠の噂は、王宮をざわめかせた。
すぐさま彼女はルイ王子の侍女から側室に昇格した。
堅物だとばかり思われていたルイ王子が、案外手が早かったとか、あとは王妃を迎えるばかりだとか、下世話だが、活気のあるゴシップが駆け巡った。
けれど、噂の張本人であるリゼは、なぜか死人のように青ざめた顔をしていて、とても幸福そうには見えなかった。
彼女にしてみれば、最愛の人を失う日が刻々と近づいているのだから、生きた心地さえしていなかった。
王子は、側室となったリゼの体調を気づかい、ほとんどの時間を彼女と共に過ごしていた。
ーー というのは建前であり、重いつわりに苦しんでいるのは、実はルイ自身だった。
看病しようにも、秘密を漏らさないためには他人の手を借りるわけにもいかず、リゼ一人で行うしかなかった。
ルイの胎内では、恐るべき病が育ちつつあった。
その病は、半年後にはリゼの最愛の人の命を奪うことになるのは確実だった。
堕胎専門の医者のもとへ向かう算段はついていた。
そのために、リゼは侍女頭や門番にワイロを渡し、ルイがその気になってくれさえすれば、いつでも外出し手術を実行できるよう手はずは調っていた。
しかし、彼女の最愛の人は、頑としてその提案を受け入れなかった。
日に日に大きくなっていくお腹を布で縛り、できるだけ膨らみが目立たぬようにしながら、いつも通りの政務もこなし続けた。
その働きぶりは、父である国王も認めるところで、ルイは次期国王に指名された。
新たな王となり、ルイは懸命に働いた。
残り少ないろうそくの炎を燃やすようにして。
****
ーー そして、ついにその日がやって来た。
すぐさま彼女はルイ王子の侍女から側室に昇格した。
堅物だとばかり思われていたルイ王子が、案外手が早かったとか、あとは王妃を迎えるばかりだとか、下世話だが、活気のあるゴシップが駆け巡った。
けれど、噂の張本人であるリゼは、なぜか死人のように青ざめた顔をしていて、とても幸福そうには見えなかった。
彼女にしてみれば、最愛の人を失う日が刻々と近づいているのだから、生きた心地さえしていなかった。
王子は、側室となったリゼの体調を気づかい、ほとんどの時間を彼女と共に過ごしていた。
ーー というのは建前であり、重いつわりに苦しんでいるのは、実はルイ自身だった。
看病しようにも、秘密を漏らさないためには他人の手を借りるわけにもいかず、リゼ一人で行うしかなかった。
ルイの胎内では、恐るべき病が育ちつつあった。
その病は、半年後にはリゼの最愛の人の命を奪うことになるのは確実だった。
堕胎専門の医者のもとへ向かう算段はついていた。
そのために、リゼは侍女頭や門番にワイロを渡し、ルイがその気になってくれさえすれば、いつでも外出し手術を実行できるよう手はずは調っていた。
しかし、彼女の最愛の人は、頑としてその提案を受け入れなかった。
日に日に大きくなっていくお腹を布で縛り、できるだけ膨らみが目立たぬようにしながら、いつも通りの政務もこなし続けた。
その働きぶりは、父である国王も認めるところで、ルイは次期国王に指名された。
新たな王となり、ルイは懸命に働いた。
残り少ないろうそくの炎を燃やすようにして。
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ーー そして、ついにその日がやって来た。
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