愛毒者ー王暴の妻ー

愛毒者ー王暴の妻ー 十五

警察長屋に戻って来た部下たち。ナガレは、小上がりの上にうつ伏せになって倒れ込む。

「王暴の特別修行、いかがでござったか（特別訓練、どうでしたか）？」

湊は歩いて近付くなり、彼はこう口にした。

「警察はで候。時に知とは良き時と悪しき時がござる。覚ゑておけ（警察はよぉ。時に知って良い時と悪い時がある。覚えておけ）」

「？」

その時、仁導が警察長屋に戻って来た。

「皆の衆大義！けふは疲れを存分に癒す為、酒を用意したでござる！屋敷に帰とは飲むが良き（皆ご苦労！今日は疲れを存分に癒す為、酒を用意した！家に帰って飲むが良い）！」

部下たちだけでも人数が多いのに、実費で一人２本分の酒を買って来てくれたようで、声には今までにない晴れ晴れした調子がこもっており、津波のような歓声が襲う。

「やった！酒じゃ酒じゃ（っしゃあぁ！酒だ酒だ）！」

先ほど小上がりでぐったりしていたナガレがそれでけで回復し、ガッツポーズしながら小上がりから落ちた。警察は、酒を禁じている。いつどこで事件が起きるか分からないからだ。だが今回、仁導は知らない女からの差し入れとして酒を貰ったが、どうしても妻が飲むのを許してくれないので、捨てる事は出来ないのでそれを、部下たちに配れば良いと思い、酒屋で購入したようだ。

「注進は明日聞く！散れ（報告は明日聞く！解散）！」

部下たちはそれぞれ酒を２本ずつ手にして挨拶してから帰って行き、小上がりの端に座る仁導に、驁褹が近付いた。

「仁導殿。ご注進が（仁導様。ご報告が）」

「如何した（どうした）？」

「先程、鈴殿が居室へ入られたでござる際（鈴様が居室へ入られた際）」

「………………………………………」

その時、彼は手で払うと驁褹は後ろに下がって襖を閉めた。

「如何した（どうした）？未花魅」

未花魅が、入って来たのだ。

「くぃーん くぃーん」

動物が悲しでいるかのような声を発しており、抱いていた純也の顔の皮膚が腐って来ていた。腐敗もかなり進んでおり、匂いもひどい。嗅いだ事のない匂いが充満する。

「人間は脆ゐ。直ぐに砕け、肉体と皮膚は腐り、失くなり申してしまう。そろそろ元にあったでござる土に返してちょーだいくれ。臭ゐもひどゐ。お別れをしてちょーだい来られよ（脆い。直ぐに砕け、肉体と皮膚は腐り、失くなってしまう。そろそろ元にあった土に返してくれ。臭いもひどい。お別れをして来い）」

「くあーん！くあーん！」

ぼろぼろぼろぼろと、フード越しに涙を流し、膝から崩れ落ちる。

「………………………………………」

生命は終わる。

早ゐか。

遅ゐか。

ぐつぐつぐつぐつぐつ。囲炉裏に薪を焚べて鉄鍋で雑炊を煮る。塩味の雑炊。

「只今もどった（ただいま）」

玄関の戸を開けるなり

「よくぞお帰りになられた（おかえり）」

綝導と目が、合った。

「何ゆえに在る（何故居る）？」

「だめでござるだか？夫婦(めおと)ねんごろに、暮らしておるかなと思とは参った（ダメなのか？夫婦仲良く、暮らしてるかなと思って来ました）」

「鈴はいずこじゃ（どこだ）？」

「鈴氏は部屋に在る。『旦那様が帰とはくるまにて部屋に居なゐと、嫉妬しちゃうから』とは（鈴ちゃんは部屋に居る。『夫が帰ってくるまで部屋に居ないと、嫉妬しちゃうから』って）。ははは！」

「配慮がしかと出来る正室にて良かった。けふ泊まるであろう？部屋を用意するでござる（配慮がしっかりと出来る妻で良かった。今日泊まるだろう？部屋を用意する）」

草履を脱ぎ、囲炉裏に上がって出て行った。

「ありがたき幸せ（ありがとう）」

おたまを手に掻き混ぜ、ぐつぐつぐつぐつ煮続ける。彼は、部屋の襖を開けた。

「かへりたまへ（おかえりなさい）」

敷かれた布団の上に仰向けになっていた鈴は上体を起こそうとするなり、仁導はギュッと抱き締めてお腹の子に負担を掛けないように配慮しつつ押さえ付け

「仁導？」

裾を捲り、大きい陰茎を手にして膣に差し込んだ。

「あぁっ！」

「………………………………………」

それがしの形じゃ（俺の形だ）。

寝取らるては（寝取られては）。

おらぬごとし（いないようだ）。

「鈴」

ゆっくりと出し入れし、彼女は背中に腕を回して抱き締め、なかなかお目にかかれない綺麗な形のほっそりとした脚を腰に回し、自ら腰を振る。

「あ…………ッ…あぁ………はぁ！」

ナガレは、帰宅した。

「よぉ！帰ったぞ！」

「難儀（大変）さね！」

ドタドタと走って囲炉裏へ入って来た爻の言葉にビクッとし、彼はこう言った。

「ばれたとか（バレたんか）あぁ！？」

「否（違うさね）！」

目の前に来て立ち止まりこう口にした。

「京牙熱があとは倒れたでござる（熱があって倒れた）さね！」

「何！？」