江戸の『鬼』

小豆あずきーコマメアズキー

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「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

布団の上で仰向けになる美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になって仰向けになる、ブロンドの短い髪の、18の女、鈴の上に覆い被さる緑色が掛かった黒髪の、性的魅力に溢れた高身長の男、白鳥ナガレは、筋肉で引き締まった43歳とは思えない裸体を晒して、膣に人並み外れて大きな陰茎を差し込んで出し入れさせていた。

「あぁっ!あっ!はぁ!はぁはぁはぁはぁ」

なかなかお目にかかれない綺麗な形のほっそりとした脚をM字開脚しており、華奢なくびれた両手首を赤い縄で拘束され、夫婦の時間を楽しんでいた。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

額から一筋の汗を流し、突き昇ってくる熱の魅力に抗えず、欲望を燃え上がらせどくどくと全身の血が滾り、ビュクビュクと我慢汁が溢れ、バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!と、子宮を何度も突き上げる。

「んはぁ!あぁっ!あっ!あん!ん、あぁ!」

体は汗ばみ、この上ない快感に唾液を垂れ流し、締め付ける。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

振動で、ふっくらとした形の綺麗な大きな胸が揺れる。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ鈴」

夫は、妻の腕の細さくらいしかない腿を撫でるように触れ、アゴを掴んで舌を口内に差し込み絡ませる。

「ん、あぁ!はぁ」

ビクビクと腰を痙攣させて軽くイき、愛液がトロォッ♡と糸を引く。

あぁ!

心地良し(気持ち良い)!

舌と舌が触れ合うことによって官能的なキスを味わい、脊髄に鳥肌が立つほどの快感が走る。

「は、あぁん!は、ん!はぁはぁ」

快楽の海に溺れて這い上がる事が出来ず、体がバラバラになるほど愛され、一度からだにこびりついた快感はどこにも出ていかず、一筋の涙を流す。

「お慕い垂き(愛してる)。鈴」

「我も、思へ、り(私も、愛して、る)!ん、はぁ!!」

失神しそうな程のエクスタシーが体を駆け抜け、ビクビクと腰を痙攣させてブシュッ!と潮を吹き

「ぐ………………………ッ…おぉ!」

前髪の陰に隠れて表情は見えず、唾液を垂れ流して身をブルッと振るわせながら腰が痙攣し、子宮にグリッと突き付けた状態で唾液を垂れ流して腰を痙攣させて多量の精を放った。射精は力強く、雄々しく、精液はどこまでも濃密だった。きっとそれは子宮の奥まで到達したはずだ。あるいは更にその奥まで。それは実に非の打ち所のない射精。膣に射精された精子が駆け抜け、子宮へと到達する。そして、卵管を通り卵子を待つ。卵巣から排卵が起こる。精子と排卵をした卵子が、卵管膨大部で出会い、受精をする。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通り、子宮内へ移動する。子宮に到達した受精卵は、子宮内膜に着床し、妊娠が成立する。

「んうぅ♡!」

その際に、余分の脂肪の無い痩せて凹んだ腹部がボコッ!と膨れ上がり、子宮に熱湯が注がれたように熱くなり、下唇を噛み締め、夫の胴体を脚で挟む。

「ん、はあああぁ…」

自然と舌が出、定期的にぴゅぴゅっ!ぴしゅっ!と潮が吹き出

「やべぇ。未だ(まだ)射精る」

ビュクビュクとこっちも射精し切っておらず、コポコポと子宮に注ぐ。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

頭上に追いやられていたその縛られた両手首を掴んで布団に押し付け、ヌルッと離れれば、舌先と舌先で唾液が繋がり合う。

「やべぇ。心底にて(マジで)好き過ぎる」

その後頭部に腕を回し、ギュッと抱き締める。妻が愛おしくて愛おしくて、堪らず愛してしまう。

「我もいと恋し(私も大好き)。ナガレ」

だが、そんな夫が愛おしくて、鈴も堪らず愛す。

明けたばかりの空が、朝の冷気とともに新鮮に輝く。

父の手を握って歩くのは京牙だ。村を歩く父のナガレに似てイケメンな風貌を貰い、目元のキッとした感じはママの鈴にそっくりな栗色の髪のヤンチャ系な男の子。

「真っ赤じゃな」

「あいあい」

息子が歌うそれに合いの手を入れるのは、緑色が掛かった黒髪の、性的魅力に溢れた高身長の男、ナガレだ。

「真っ赤じゃな」

「せいへいいえい!」

「緑の葉っぱは真っ赤じゃな!」

「へいらっしゃい!!」

2人は、黙り込んだ。

「続き是非に及ばぬ(続き知らないや)」

「そもそも緑の葉っぱは真っ赤ではないであろう(じゃねえだろ)?」

京牙は顔を向けると、ニヤッとした。

「えっ?では(じゃあ)その部分の歌詞はなに?」

「あぁ?紅葉の葉っぱは真っ赤じゃなでないのか(だなじゃねえの)?」

「では(じゃあ)その続きは?」

「あん?続き?あぁ~」

彼は、痒くも無いのに肩を掻き始めた。

「仁、導♡」

村を歩いていた黒髪で、高身長のイケメンの風貌の主である男、鬼賀乃仁導は立ち止まり、ふと後ろを向いた。

「相変わらず、こころもち悪しき男じゃ(気持ち悪い男だ)」

後ろに立っていたのは、西宮崗絛だ。鮮やかな水色の肩にかかるくらいの髪に、高身長で細身な上に筋肉で引き締められたその肉体美は、男も女も酔わせ、男が見ましても吸い付いてみたいほどの初々しい美形。だが、どこか変わっている一面もあり、村の人たちからは『変わり者』扱いされている。

「脚音にて(足音で)、分かる」

先日、両目を抉られた。ストーカーとしての報いを得させる為、あん団子の串でくり抜いたのだが、崗絛は、足音を聞き分ける事が出来るようで、しかも家の配置もしっかりと分かっている為、外に一人で出る事が出来る。

「一所外に出られぬやう、脚を切断するでござる必定がござる(一生外に出られないよう、脚を切断する必要がある)」

刀を抜き、仁導はニヤッとした。

「仁、導♡ それがしは、御身が、ばらばらに、なり申しても。仁導の、元に参上するで候?仁導、が、おのこか、おなごか、確かめに、参上するで候(僕は、体が、バラバラに、なっても。仁導の、元に行くよ?仁導、が、男の子か、女の子か、確かめに、行くよ)」

彼は、笑みを浮かべていた。そこへ

「ひい人にて出歩ゐちゃだめでござる(一人で出歩いちゃダ~メ)」

甲斐田純也が歩いて来て声を掛けたのだ。黒髪の爽やか系な、顔が整った美形の主であり、片方の前髪が長いのが特徴。

「うな輪とはいえしてちょーだいおけ。其れとはいえ外に出やうと致すなら、両脚と両腕を斬り落としてちょーだい部屋にて監禁しろ。こやつは生きておるのみにて妨害なおすじゃ。飼とはゐるなら躾けろ(首輪でもしておけ。それでも外に出ようとするなら、両脚と両腕を斬り落として部屋で監禁しろ。コイツは生きているだけで妨害なオスだ。飼っているなら躾けろ)」

歩いて来るなり、その刀で純也の腕を斬り付けようとするのかと思えば、瞬時に懐に手を差し込んで銃を手に、肩に撃ったのだ。

「!!!!!!!!!!?」

顔を歪ませてバランスを崩し

「つうぅ…」

傷口から血が流れる。

「ひどゐな仁導殿。それがし(ひどいな仁導様。俺)にとばっちり?」

喉元に軽く刃先を差し込めば、ツーッと、一筋の血が滴る。

「貴様がこやつを躾けらばそれがしの癇に触る事はひい切無くなるんじゃ!手を抜くな!寝ずに躾けろ!其れとはいえしつこくそれがしに関わらふと致すなら、貴様諸共屋敷を燃やす!分かったな(貴様がコイツを躾ければ俺の癇に触る事は一切無くなるんだ!手を抜くな!寝ずに躾けろ!それでもしつこく俺に関わろうとするなら、貴様諸共家を燃やす!分かったな)!?」

パァン!パァン!パァン!3発撃てば、彼はドサッと倒れてしまう。

「純、也?」

すると仁導は崗絛を殴り付け、この場から去る。

「うぅ…」

頬に触れ、唇を切ってしまう。

「ふふふ。仁導殿(様)。けふ(今日)もお怒り」

彼はにこやかな笑みを浮かべて言い、立ち上がる。射撃で外した事が無い男は、致命傷を避けて撃っていた。仁導が本気になれば、今頃…。

「仁導は、常に、孤独、じゃから。それがし(だから。僕)が、居て上げ、たゐ」

「情け深い(優しい)ね?崗絛は」

すると、純也は崗絛の後頭部に腕を回して引き寄せ

「それがしがお主の眼になるから。沢山それがしに迷惑千万掛けて(俺が君の目になるから。沢山俺に迷惑掛けて)」

額に額を当て、彼と仁導の関係がどうなるか、その行く末が楽しみで仕方が無い。

「よぉ」

「?」

ふと彼は立ち止まると、窓越しに声を掛けた栗色のソバージュが毛先に掛けられた唇にさしている紅が良く似合う高身長の女、奈良和美嘉は、花魁煙管を手にしていた。

「ぶすに用はござらぬ。消ゑろ(ブスに用はない。消えろ)」

「挨拶せるばかりならむ(挨拶しただけだろう)!?」

額に欠陥が浮き、手にしていた花魁煙管がバキッと折れた。

「ぶすが気安く挨拶するでござるな(ブスが気安く挨拶するな)」

「お前まこと、鼻に付くぞな(お前本当、鼻に付くよな)?」

すると仁導は近付くと腕を掴み

「!!!!!!!!!?」

引き摺り出したのだ。

「ゔあぁ!!」

窓から身を乗り出し、地面に叩き付けられる。

「ぶすはなにしてちょーだいもぶすじゃな(ブスはなにしてもブスだな)?」

口のあたりに意地の悪い笑みを彫りつけたように浮かべ、その肩を踏み付ける。

「ぐ、うぅ!」

このをのこ(この野郎)!

いつか首の骨折る(いつか首の骨折ってやる)!

暫くして歩いていると

「仁導!」

ナガレ親子が走って来たのだ。

「なぁ、『紅葉の葉っぱは真っ赤じゃ(だ)な』の次の歌詞なんじゃ(だ)?」

「其れを聞きに駆けて参ったとか?揃ゐも揃とは暇人な親子じゃ(それを聞きに走って来たのか?揃いも揃って暇人な親子だ)」

「存じておるなら教ゑて(知ってるなら教えて)!」

「左様な詮無い事にて付き合とはられるでござるか(そんなくだらん事で付き合ってられるか)」

そう、冷たく親子を突き放して歩き出した。

「左様な事申すなで候仁導殿(んな事言うなよ仁導さんよぉ)!」

そう言い肩に腕を回し

「仁導殿(仁導さんよぉ)~!」

父の真似をしてその裾を掴み引っ付く。

「離れろ愚民親子共が!」

「ぶははははは!それがし心底にて貴様好いておる(俺マジでお前え好きだわ)!」

どんなに蹴落とされても、仁導が好きで好きで、堪らないようだ。

「愚民の貴様に、好かるる筋合ゐはござらん(好かれる筋合いは無い)!」

その夜。

ススキが、風に揺られて靡く。寝てしまうには惜しいほど綺麗な月を見ながら、男女は団子を食べる。縁側に座る茹でた餅を食べている新島唯子は、きな粉を掛けて食べていた。妊婦のように腹の突き出た元服を迎えた15歳の乙女であり、黒髪を一つで結んで、鮮やかな緑色の着物が良く似合うが、際立ったところのない平凡な顔立ちをしている。

「真っ赤かな 真っ赤かな つたの葉っぱも真っ赤かな もみじの葉っぱも真っ赤かな(真っ赤だな 真っ赤だな つたの葉っぱも真っ赤だな もみじの葉っぱも真っ赤だな)」

そして、黙り込んだ。

「この続き、知れりや(知ってますか)?」

ここにも続きを知らない人が居た。

「話し掛けるな豚が」

あん団子を食べていた仁導はそう言った。

「愚民親子もそうでござるが、同じ箇所にて躓くな(そうだが、同じ箇所で躓くな)」

「我と同じ人の居しかな。いかがすともこの続きばかりえ歌はぬなり(私と同じ人が居たんですね。どうしてもこの続きだけは歌えないんです)」

「察すか(知るか)」

そしてあん団子を食べ、月を見上げる。

「………………………………………」

その歌自体。

拙者是非に及ばぬ(俺は知らん)!

そんな中、囲炉裏を囲んで雑炊を食べる白鳥家族。

「真っ赤じゃな 真っ赤じゃな 緑色の葉っぱは真っ赤じゃな」

「じゃから緑の葉っぱは真っ赤にはござらん(だから緑の葉っぱは真っ赤じゃねっつの)!」

「母上その続き歌ゑる(母ちゃんその続き歌える)?」

ふと、食べていた手を止め、鈴は歌い出した。

「真っ赤かな 真っ赤かな つたの葉っぱも真っ赤かな もみじの葉っぱも真っ赤かな」

そして、黙り込んだ。

「知らず(知らない)」

知らないのにチャレンジしたようです。

「つたとは(って)なに?」

「そもそも貴様その歌詞すら入とは無かったでないか(お前えその歌詞すら入って無かったじゃねえか)」

「あれ?なになりや(なんだっけ)?」

忘れにけり(忘れちゃった)。

そんな中、提灯を手にして歩く黒髪で、25歳には見えない程童顔であり、低身長の男、伊村尊は口ずさんでいた。

「真っ赤じゃな 真っ赤じゃな 紅葉はなんでも真っ赤じゃな」

そもそも歌詞を間違えて歌っている人と、歌を知らない人と様々であり、結局続きが歌えない、白鳥家なのであった。
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