398 / 468
【リーンハルト:11歳】
第467話 普通じゃないの
しおりを挟む
数日後、私はマリアに頼まれた生地工房を訪ねている。
店主さんは40代後半の男性で細身の人だった。
工房の壁一面の棚にはいろんな色の糸が置いあるし、部屋の中にはたくさんの糸を、物干し竿のようなものにかけているのもあった。
どうやらここは染色工房らしいが、ラジエルとマリアと知り合った関係で、生地を作る機械を工房に持ち込まれて、我が家に頼まれた生地だけを作っているそうだ。
要はペレ糸とアイススパイダーの糸を使った生地らしい。
ペレの糸は新街の温泉で必要だし、アイススパイダーの糸は従業員の夏の制服で使用するから、ずっと織機は稼働しているみたいだ。
「おかげで庭とゆっくりする時間がなくなりました」
店主さんは冗談ぽっく言っているが、休みは大事だ。
「休みは必要だ。ちゃんと休んでほしい」
「家族で休む日を別けているだけですから、ちゃんと休んでいますよ」
言い方が悪くてすみません。むしろ仕事が増えて、収入も安定したのでありがたいですとお礼を言われた。
あと店主さんが奥から持ってきたものは、ウォータースパイダーの糸を木綿や絹に混ぜて作り、さらに割合を変えて作った各縦1メートル、長さ2メートルで生地を折りたたんで持ってきてくれた。
各生地の端には、割合を書いた紙を糸で括りつけていた。
「マリアさんから、大事なものなのでリーンハルト様が来られた時に渡してほしいと伝言がありました」
「ありがとう。いつもマリアの無茶を聞いてくれて申し訳ないね。新街の催しはぜひ家族で楽しんでほしい」
「ありがとうございます。家族みんなとても楽しみにしているんです」
私は生地を受け取り、工房を後にした。
そしてナナリーのところへ寄る。
「ナナリー、話す前に謝っておくよ。断れない状況だったんだ」
私は王城の魔導具師長が、年が明けたらウエストランドにマリアとナナリーに会いに来ること、魔導具の特許申請共同名義になる件を伝える。
話を聞いていたナナリーの顔が、だんだんと険しくなっていくのがわかったけれど、話さないといけないので一気に話した。
「リーンハルト様の無茶ぶりはいつもだけれど、今回はやり過ぎだろう」
ナナリーは怒鳴るのを耐えているような口調だ。
これはそうとう怒っているように感じる。
「本当にごめん。王家と仲違いするわけにはいかないんだよ。この通り!」
私はナナリーに両手を合わせて頼む。
この謝り方、この世界でも通じるだろうか?
やった後で思ったけれど、ついでにマジックバッグから大鍋を取り出す。
「これお餅入りのお汁粉。たくさん作って貰ったからみんなで食べてよ」
はぁーとナナリーはため息をつく。
「お汁粉は遠慮なく貰う。お金はたくさん貰っているからさ、正直嬉しいとかなくて、お偉いさんに会うのは面倒でしかない。今後もこんなことが続くようなら仕事を受けないぞ」
「それはないと思う。魔導具師長がナナリーのところにくる際は、私も同行するから」
「そんなの当たり前だろっ!」
ナナリーに怒られた。余計な一言だったようだ。
マリアもナナリーも怒らせると仕事を放棄されそうだから、今後は受けないようにしなくてはいけない。
年が明けて両親が戻ってきたが、ヘットハンティングした4人も一緒だった。
両親を出迎えたときに一緒だと父上に言われた時は驚いた。
翌日政務官室に4人が挨拶に来たので、みんなに紹介した後、そのまま4人と話をする。
「こんなに早くウエストランドに来てくれたのは嬉しいが、引継ぎは大丈夫なの?」
「引継ぎは2週間ぐらいで終わっています。あとは引っ越しの手続きや挨拶回りでしたので、これでもゆっくりなのですよ」
あといつウエストランドへ行けばいいか私に相談の連絡をしたら、私がウエストランドに帰ってしまっていたので、母上が一緒に行こうと提案したそうだ。
レイラさんの話を聞いて迷惑をかけたようなので4人に謝る。
「ゆっくり仕事を覚えてくれればいいといいたいけれど、2月、3月に新街で催しがあってね。通常業務を覚えながら手伝いもお願いしたい」
「もちろんです」
レイラさんの言葉に他の3人も頷いた。
「今日、明日は休みにするから、街に出てもいいし、ゆっくりしてよ」
「私たちは今日から働くつもりだったのですが・・・・」
「一日かけて王都から来たんだよ。体を休めた方がいい」
「でもウエストランドの社員寮は、いたせりつくせりですることも何もないですから、手持無沙汰なのです」
レイラさんの言葉に、温泉のことか?と思っていたら、ダミアンが口をはさんでくる。
「リーンハルト様、私もここでしか働いていませんが、ここの社員寮を知ったら他へはいけませんよ」
「どうして?温泉があるから?」
社員寮は個室で鍵付き、家族寮は夫婦ともにウエストランドで働いていれば入居できる。
しかも料理は他所よりもはるかに美味しく、3食食べられる。
基本定時で終了、残業しても残業代が貰え、週1日必ず休みがあり、1年に1回連続5日間休暇があるところはないだろうとダミアンに言われた。
「連続休暇以外は、普通じゃないの?」
「「普通ではありません」」ローザとロゼッタの声を揃った。
「私の実家でも週1日の休みが、お店が忙しいと半日になったりしました。割り増しの出勤手当はありましたが・・・・」
ローザの実家って大商会だよな、週1日の休みが半日だって。
しかも中小の商会だともっとひどく、残業代が無いところが多いらしい。
これから新街に遊びに来て貰わないといけないのに、連続休暇をとるのが難しいと、新街が観光都市にならないではないか!!
今回の催しが連続休暇の始まるきっかけになって、領内に広まっていってほしい。
今後は領内の収入の底上げや連続休暇の普及いついても考えないといけない。
店主さんは40代後半の男性で細身の人だった。
工房の壁一面の棚にはいろんな色の糸が置いあるし、部屋の中にはたくさんの糸を、物干し竿のようなものにかけているのもあった。
どうやらここは染色工房らしいが、ラジエルとマリアと知り合った関係で、生地を作る機械を工房に持ち込まれて、我が家に頼まれた生地だけを作っているそうだ。
要はペレ糸とアイススパイダーの糸を使った生地らしい。
ペレの糸は新街の温泉で必要だし、アイススパイダーの糸は従業員の夏の制服で使用するから、ずっと織機は稼働しているみたいだ。
「おかげで庭とゆっくりする時間がなくなりました」
店主さんは冗談ぽっく言っているが、休みは大事だ。
「休みは必要だ。ちゃんと休んでほしい」
「家族で休む日を別けているだけですから、ちゃんと休んでいますよ」
言い方が悪くてすみません。むしろ仕事が増えて、収入も安定したのでありがたいですとお礼を言われた。
あと店主さんが奥から持ってきたものは、ウォータースパイダーの糸を木綿や絹に混ぜて作り、さらに割合を変えて作った各縦1メートル、長さ2メートルで生地を折りたたんで持ってきてくれた。
各生地の端には、割合を書いた紙を糸で括りつけていた。
「マリアさんから、大事なものなのでリーンハルト様が来られた時に渡してほしいと伝言がありました」
「ありがとう。いつもマリアの無茶を聞いてくれて申し訳ないね。新街の催しはぜひ家族で楽しんでほしい」
「ありがとうございます。家族みんなとても楽しみにしているんです」
私は生地を受け取り、工房を後にした。
そしてナナリーのところへ寄る。
「ナナリー、話す前に謝っておくよ。断れない状況だったんだ」
私は王城の魔導具師長が、年が明けたらウエストランドにマリアとナナリーに会いに来ること、魔導具の特許申請共同名義になる件を伝える。
話を聞いていたナナリーの顔が、だんだんと険しくなっていくのがわかったけれど、話さないといけないので一気に話した。
「リーンハルト様の無茶ぶりはいつもだけれど、今回はやり過ぎだろう」
ナナリーは怒鳴るのを耐えているような口調だ。
これはそうとう怒っているように感じる。
「本当にごめん。王家と仲違いするわけにはいかないんだよ。この通り!」
私はナナリーに両手を合わせて頼む。
この謝り方、この世界でも通じるだろうか?
やった後で思ったけれど、ついでにマジックバッグから大鍋を取り出す。
「これお餅入りのお汁粉。たくさん作って貰ったからみんなで食べてよ」
はぁーとナナリーはため息をつく。
「お汁粉は遠慮なく貰う。お金はたくさん貰っているからさ、正直嬉しいとかなくて、お偉いさんに会うのは面倒でしかない。今後もこんなことが続くようなら仕事を受けないぞ」
「それはないと思う。魔導具師長がナナリーのところにくる際は、私も同行するから」
「そんなの当たり前だろっ!」
ナナリーに怒られた。余計な一言だったようだ。
マリアもナナリーも怒らせると仕事を放棄されそうだから、今後は受けないようにしなくてはいけない。
年が明けて両親が戻ってきたが、ヘットハンティングした4人も一緒だった。
両親を出迎えたときに一緒だと父上に言われた時は驚いた。
翌日政務官室に4人が挨拶に来たので、みんなに紹介した後、そのまま4人と話をする。
「こんなに早くウエストランドに来てくれたのは嬉しいが、引継ぎは大丈夫なの?」
「引継ぎは2週間ぐらいで終わっています。あとは引っ越しの手続きや挨拶回りでしたので、これでもゆっくりなのですよ」
あといつウエストランドへ行けばいいか私に相談の連絡をしたら、私がウエストランドに帰ってしまっていたので、母上が一緒に行こうと提案したそうだ。
レイラさんの話を聞いて迷惑をかけたようなので4人に謝る。
「ゆっくり仕事を覚えてくれればいいといいたいけれど、2月、3月に新街で催しがあってね。通常業務を覚えながら手伝いもお願いしたい」
「もちろんです」
レイラさんの言葉に他の3人も頷いた。
「今日、明日は休みにするから、街に出てもいいし、ゆっくりしてよ」
「私たちは今日から働くつもりだったのですが・・・・」
「一日かけて王都から来たんだよ。体を休めた方がいい」
「でもウエストランドの社員寮は、いたせりつくせりですることも何もないですから、手持無沙汰なのです」
レイラさんの言葉に、温泉のことか?と思っていたら、ダミアンが口をはさんでくる。
「リーンハルト様、私もここでしか働いていませんが、ここの社員寮を知ったら他へはいけませんよ」
「どうして?温泉があるから?」
社員寮は個室で鍵付き、家族寮は夫婦ともにウエストランドで働いていれば入居できる。
しかも料理は他所よりもはるかに美味しく、3食食べられる。
基本定時で終了、残業しても残業代が貰え、週1日必ず休みがあり、1年に1回連続5日間休暇があるところはないだろうとダミアンに言われた。
「連続休暇以外は、普通じゃないの?」
「「普通ではありません」」ローザとロゼッタの声を揃った。
「私の実家でも週1日の休みが、お店が忙しいと半日になったりしました。割り増しの出勤手当はありましたが・・・・」
ローザの実家って大商会だよな、週1日の休みが半日だって。
しかも中小の商会だともっとひどく、残業代が無いところが多いらしい。
これから新街に遊びに来て貰わないといけないのに、連続休暇をとるのが難しいと、新街が観光都市にならないではないか!!
今回の催しが連続休暇の始まるきっかけになって、領内に広まっていってほしい。
今後は領内の収入の底上げや連続休暇の普及いついても考えないといけない。
1,362
あなたにおすすめの小説
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい
よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。
王子の答えはこうだった。
「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」
え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?!
思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。
ショックを受けたリリアーナは……。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。