異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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2巻

2-1




 僕――リーンハルト・ウエストランドは辺境伯家へんきょうはくけの三男坊で、現在8歳だ。
 7歳の頃、3兄弟で初めて領内の樹海に連れて行ってもらった際に、フェンリルの子供であるアトレと出会い、従魔契約を結んだ。
 それで、アトレのネームプレートを作るために宝石店を訪ねたら……色々あって、僕が思いついた物が新商品に結びつき、そこから怒涛どとうの商品開発が始まり、気がつけば商会を立ち上げることになってしまったんだよね。
 その後、次男のジェラ兄様がAランクの魔獣フィアンマ――リプカと、長男のクリス兄様がAランクの魔獣ベンダバール――ビアンカと出会い、それぞれ従魔契約をしたんだけど、そのことで、リナルーナ王女がウエストランドへやって来て、王家にも目をつけられるように。
 また、ウエストランド領に遊びに来た、クリス兄様の友人たちと樹海に行った際には、朽ちかけていた世界樹を見つけ、瀕死状態の精霊アルラウネに出会ったんだ。
 でも、世界樹とアルラウネは、植物神の加護を持つカイル隊長の協力で無事に助けることができた。何やかんやあって、その後アルラウネは3人に増殖したのだけれど……。


 それからもトラブルは続き、8歳の誕生日には、使用できる魔法の属性を調べるための魔力鑑定で周囲の注目を集めてしまった。加護を2つ持っているという、前代未聞の結果が判明したんだ。
 それでも、魔力鑑定で一緒になったカナルと友達になり、その繋がりで黄金の翼というBランクの冒険者パーティとも知り合いになれたのは良かったな。


 かわら版やティーバッグといった、前世の知識からの発明品を僕が思いついたせいで、さらなるトラブルに見舞われ、母様の兄上、ダヴィド伯父おじ様に協力を仰いだこともあったね。
 それから、貴族の社交シーズンには、王家主催のお茶会に参加して、ディアンヌという伯爵家の女の子を助けるために、ちょっとした騒ぎを起こしてしまった。
 とはいえ、その甲斐かいもあって、協力してくれた公爵家のラファエル、侯爵家のブリジット、そして助けたディアンヌと仲良くなることができた。もちろん、母様には怒られたけれど……。


 あとは、ステータスを確認する方法を発見して、王城に呼ばれたりもしたね。
 でもね、そのご褒美で王都図書館の書庫を訪れている最中に、【ボーナスが発生しました】というデジタル音声が頭の中に響き渡ったんだ。
 それで僕は嬉しさと同時に嫌な予感を覚えた。とにかく石板を確認したいので、急いで屋敷に戻ることにしたのだけど……。


 第1話 教会へ

 王都図書館から自分の部屋に戻った僕はさっそく石板を開く。
 すると、新しく【メール】というボタンが現れていて、ボタンの右上には「①」という数字が点滅している。
【メール】ボタンを押し、メールの内容を見る。


 賢者神の図書室にない本を賢者神に贈ったあなたには、ボーナスポイントが加算されました。
 教会にある賢者神の像の前で祈りを捧げれば、賢者神と話すことができます。


 いつ僕が賢者神に本を贈ったの? 意味がわからない。
 しかも賢者神と話せる?
 ……とにかく教会に行ってみるか。

 ◇ ◇ ◇

 翌日、僕はクリス兄様と教会へお出かけです。
 ボーナスポイントがもらえたこと、賢者神と話ができることを家族に話したら、また僕が倒れてもいけないからと、クリス兄様が付き添いとして一緒に行くことになった。
 王都の教会は、領都の教会と違って柱や壁に装飾があり、窓からの光も内部によく入っていて明るい雰囲気だった。
 僕はまず中央の創造神と豊穣神に祈りを捧げ、次に加護を持っている植物神にも祈りを捧げた。
 その後、メールで会話ができると言われた賢者神のもとへ行く。
 賢者神の石像の前でひざまずき、加護をくれたことと、昨日のボーナスポイントのお礼を伝える。
 そして、「お話ができると伺い参りました」と挨拶をした。
 すると石像が突然キラキラと輝き始め、石像に似た若い男性が現れた。
 石像よりもノリの軽そうな若者って感じがするけど、これが賢者神?
 でも後光が差していて近寄りがたい雰囲気があるから、やはり神様なのだろう。
 男性が口を開く。

「やっと会えたね、リーンハルト。ハルトってこれからは呼んでいいかい?」

 僕は「構いません」と答える。

「なかなか図書館に行ってくれないから、加護の内容が話せなくてヤキモキしたよ」

 その後、男性――賢者神は加護の内容を、次のように説明してくれた。
 最初は、どこの図書館でも館内なら本が速く読め、難しい本も理解できるようになる。
 ランクアップ後は、王都図書館の本の内容を白紙の本に転写できるようになる。
 加護の内容は僕の予測と合っていた。
 読書や、賢者神が設定した行動をするとポイントが増え、基準に達するとランクアップするらしい。
 ただ、現在の総ポイント数、ランクアップの基準は見られないそうだ。
 数値を目的に頑張るのは賢者神のポリシーに反するらしく、また「ランクアップがいつ来るかわからないドキドキ感も面白くていいでしょ」と言っていた。
 賢者神のおまけで、Eランクまでは早くランクアップできるようになっているらしい。
 今は図書館で一部の本が閲覧えつらんできなくなっているが、それは僕の魔力量が上がれば解消されるとのこと。
 ちなみに重複する本は統合されるようになっているそうだ。
 なお、賢者神の図書室にない本を見つけた場合には、ボーナスポイントがもらえるようになっている。王都図書館の書庫に1冊あったそうだ。いったいどれだけの本を保有しているのだろう。
 このボーナスポイントの仕組みとしては、僕が行った場所に賢者神の図書室にない本があったら、自動的に賢者神に届くようになっているそうだ。
 説明の最後に「行ったことのない図書館を見つけたら、一度は入ってね」と言われた。
 僕は気になっていたことを尋ねる。

「夢の中で『転生した人が、一度は言いたくなるセリフはなーんだ』と言っていたのは賢者神様ですか?」
「そうだよ。『ステータスオープンと唱えよ』と言うよりも、なぞなぞの方が楽しいじゃないか。難しくはないなぞなぞだけれどね」

 賢者神に見えないなこの人。
 僕がそんなことを考えていると、賢者神が話し出す。

「あっ、だめだよ。賢者神っていったら生真面目きまじめで固いイメージを持たれがちだけれど、その先入観は良くないぞ」

 心に思ったこと読めちゃうのか……神様だから……。
 僕は素直に謝る。

「申し訳ありません」
「いいよ。あと1つだけ質問を受け付けるけれど、あるかな?」

 僕が持つ3つの加護(1つはいまだ不明)は領地の樹海やホワイトドラゴンに関するものなのかを尋ねる。
 すると、「加護についてはいずれわかる時が来る。君なら使いこなせると思っているから」と曖昧あいまいな答えが返ってくる。
 賢者神は言葉を継ぐ。

「今回のボーナスは僕と話せること。新しい本を見つけてくれた時も話せるから。教会にある僕の石像の前で祈ってよ。じゃあねー」

 僕、いいように利用されているだけではないだろうか……。
 そのまま賢者神は姿を消した。


「ハルト、もう終わったのかい。では帰ろうか」

 跪いていた僕が立ち上がったので、クリス兄様が教会を出ることを促す。
 教会の前で馬車に乗ると、クリス兄様が口を開く。

「教会の見習いが仕事をしているふりしてハルトを遠くから見ていたんだ。あのままゆっくりしていたら、教会の上の方の人間が出てくる可能性があったから、かしてしまった」

 水魔法のコントロールがしっかりできるようになれば、回復魔法の練習が始まる。そこで回復魔法のレベルが高ければ、教会から勧誘(囲い込み)があるだろうと言われている。
 クリス兄様は僕が教会に目をつけられないようにしてくれたのだ。
 実際、回復魔法の力が強い人は、貴族、庶民関係なく勧誘され、教会の治療院で働くことが多い。
 さらに浄化の力が強い人は聖人や聖女と呼ばれている。
 我が国にも何人かいるそうだ。
 聖人、聖女は他国からの依頼で、魔力だまり(スタンピードが起こるきっかけ)を浄化することもあるらしい。
 我が国に聖人、聖女が多いのは、かつて大聖女様がいたためだと言われている。
 今の聖人、聖女たちの先祖をたどれば、大聖女様の血筋に繋がるのではないかと噂されているが、本当かどうかは知らない。
 いずれにしても、教会が力を持ち続けるために彼らに地位を与えて、こき使っているわけだ。
 すでに、回復魔法の講師を派遣しましょうかと、父様宛てに手紙が来たそうだ。
 丁重に断ってくれたらしい。
 教会にこき使われるのも嫌だし、僕はウエストランドの領民や騎士団、魔法師団のために自分の能力を使いたい。
 国の民のために力を使えと言われても、じゃあ自分たちが働けよと思う。
 教会の人気取りのために利用されるのはごめんだ。
 だから僕の好きなようにさせてくれる、家族や僕の周りのみんなには、本当に感謝している。

「賢者神とは話せたのかい? 賢者神に祈っている時間は、他の神に祈っている時間と変わらなかったけれど」

 クリス兄様の疑問に僕は驚いた。

「クリス兄様、本当ですか? それなりに話していたはずです」
「……だったら、賢者神との会話中、周りの時間が止まっていたのかもしれない。神の力でね」
「次、話すことがあったら聞いてみます」
「えっ、また賢者神と話せるのかい?」

 僕は賢者神との話をすべてクリス兄様に伝えた。なぞなぞの部分は除いてだけれど。
 また、僕が持つ3つの加護につていも話した。

「賢者神が否定しなかったということは、ハルトの3つの加護は樹海やホワイトドラゴンに関する可能性が高くなったね。ハルト、魔法の練習を増やした方がいい。来年の夏、ホワイトドラゴンと対峙するのかもしれない」

 僕の話を聞いたクリス兄様がそう口にした。


 家に帰り、家族にも報告をした。
 あわせてクリス兄様の見解も伝えた。

「以前、世界樹を来訪したクリスの学友たちにもレベルを上げるようにと神からのお告げがあったし、何かが樹海で起こる可能性が高いということだろう。樹海にはホワイトドラゴンも住み着いていることだし……」

 父様もクリス兄様と同じ意見のようだ。
 ジェラ兄様、母様が、来年の夏までにしなければいけないことを挙げていく。

「兄上と俺は、2つの魔法のレベルを両方とも30以上にした方が良さそうだ」
「樹海近くの村の領民の避難場所の選定、食料確保、誘導手順の確認。今のうちにできることはしておきましょう。杞憂きゆうで終わればそれでいいし、突然対応に追われ被害が拡大するより、よっぽどいいわ。対処できる時間を神からもらえたと考えましょう」

 母様の言う通り、対処できるようにヒントと時間がもらえたと思った方がいい。
 ちなみに、年末の王城で開かれるパーティーに両親は必ず出席しないといけない。
 そのため、ウエストランド領に戻るのは年明け早々になることが決まった。

 ◇ ◇ ◇

 宰相室に入ってきたルーズベルト・クロンデール公爵に、宰相である私は話しかける。  

「どうでした、リーンハルト君に会ってみて?」

 宰相室のソファーに座ったクロンデール公爵が口を開く。

「宰相の君が会った方がいいと言うし、息子からも彼の名前がよく出るのでね。興味はあったよ。王都図書館の書庫の本を難なく読んでいたし、本の内容を理解できているようだ。書庫の本は大人でも難しい本ばかりなのだがね」

 宰相である私は、執務席から移動して、クロンデール公爵の対面に座る。

「賢者神の加護の力か……」

 私の呟きを聞いて、クロンデール公爵がソファーから身を乗り出す。

「えっ、何だそれ?」

 リーンハルト君には、図書館という加護があること。その加護の力で、王都図書館の本を読むスピードが速くなることを話した。
 リーンハルト君が王都図書館の本をどこにいても読めることを話したら、公爵は彼にまとわりつくだろうから、それは言わないでおこう。

「そんなにいい加護を持っているのか、彼。なんで私にはないのだ? こんなにも本を愛してやまないのに……」

 公爵の話が長くなりそうなので、私は話の途中で尋ねる。

「彼はどんな本に興味を持っていたのですか?」

 公爵の話だと、通常の原因ではない木の枯れ方に関して調べていたそうだ。だから回復魔法と呪詛浄化の本をすすめておいたということだ。
 私は口を開く。

「さすがは王宮図書館長殿で、魔塔の長。助言が的確ですね。ウエストランド領から、樹海の一部が枯れたらしいと報告がありましたので、そのことを調べていたのでしょう」
「もう彼と会うのはダメなのか? 加護のこと詳しく聞きたいな。賢者神に祈れば、今からでも私に同じ加護をくれないかな……」

 やはりクロンデール公爵はリーンハルト君に興味を持ってしまったか。

「国王陛下が彼に会うことを禁止しています。それに、何度も偶然をよそおうのは無理がありますよ」

 クロンデール公爵は、自分の興味があることのためなら、労力を惜しまない人だからな。
 どうにかして彼と話そうと画策しそうだ。
 前回のリーンハルト君の謁見にいなかったから会わせたが、そうするべきではなかったかもしれないな……。

 ◇ ◇ ◇

 僕が年明けすぐにウエストランドに戻ると知ったラファエルが、ブリジット、ディアンヌと4人で、ラファエルの家でお茶会を開きたいという手紙を寄こしてきた。
 そして4人の日程が合った今日、僕は馬車でクロンデール公爵家の門を通っていた。
 ラファエルの王都の屋敷――クロンデール公爵家は王城に近く、また敷地はウエストランド家が王都に持つ屋敷の2倍はありそうな広さだった。
 門をくぐってからしばらく経つが、公爵家の屋敷が見えない。
 王都の隣にあるクロンデール公爵家の領地は小さいが、ダンジョンが2つある。
 1つは肉や魚がドロップ品のダンジョンで、もう1つが薬草や果物などが採れるダンジョンだ。
 どちらも低ランクの冒険者たちがもぐれるダンジョンなので、人気があり常に盛況のようだ。
 別名、王国の食糧庫とも呼ばれている土地だ。
 2つのダンジョンや領内の管理をしつつ、王城内の仕事をしている家らしい。
 ようやく着いた屋敷は、前世で見たヨーロッパの宮殿っぽい。
 いったい何百人住めるの? っていうぐらい大きい。維持費が大変そうだ。
 現れた執事らしき人に、美しい庭が見えるガラス張りの部屋に案内された。
 部屋には、ラファエル、ブリジット、ディアンヌがすでに待っていた。僕は声をかける。

「待たせたかな、3人とも。1か月ぶりだね。元気にしていた?」

 ブリジットが返事をする。

「私たちも今来たところよ。私がディアンヌを迎えに王城に行ってたから」
「ブリジットのおかげで来られたの。さすがに王家預かりの身で遊びに行きたいとは言えなくて」

 ディアンヌがそう言った。
 ラファエルが笑顔で僕らに話しかける。

「リーンハルトがウエストランド領に戻る前に集まれて良かったよ。今日は楽しもう」

 ラファエルは公爵家の嫡男という立場なのに気遣いが凄すぎる。急なお茶会の手配、大変だっただろうに。
 ディアンヌが改まった表情で頭を下げた。

「改めて、みんなにはお礼を言わせてください。本当にありがとう。父が色々不正をしていたようで、私が伯爵をいだ時には手遅れだったかもしれないと言われたわ。みんなのおかげで伯爵家を取り戻すことができました。まだ、私1人では何もできないけれど、助けてもらった恩は必ず返すわ」

 ブリジットが笑顔で応える。

「ディアンヌ、私たちはきっかけを作ったにすぎないわ。これから伯爵家を立て直すのは大変だし、わたくしでは協力できることは少ないけれど、愚痴ぐちぐらいは聞いてあげられるから、ため込んではダメよ」
「ブリジットが言うように助けが必要な時は言ってくれ。まだ僕らには力はないけれど、できることはするから」

 ブリジットとラファエルの「協力する」という言葉は、ディアンヌにとって心強いだろう。

「僕の従兄いとこのユベール兄様が、ガルーダ領でお茶の改良とかに携わるみたい。素敵な兄様だから安心して相談していいよ」

 ガルーダ領はディアンヌの実家である。
 僕の言葉にディアンヌが驚いた様子を見せる。

「えっ、ノーストレイド家の現当主の次男の方よね。リーンハルトの従兄なの?」
「そうだよ、母方のね。もともと新事業には関わる予定の人なんだ」

 ユベール兄様は自分の魔法を活かした仕事をしたいという希望を持っていた。だから、僕がガルーダ家に頼んでみたらどうかとユベール兄様に提案したのだ。
 僕が魔法の話をしたから、今度は自分たちの魔力属性の話題になる。
 ラファエルは水と雷、ブリジットは氷と風、ディアンヌは火と土、僕が水と回復魔法を使う。
 それぞれの属性を知ったラファエルが言う。

「みんなバラバラだな。唯一、僕とリーンハルトの水だけが重なっている」
「バラバラな方が楽しいわよ。色んな魔法が見られて。それよりも自分の属性レベル、魔力量が見られるようになるってうわさがあるの。知っている?」

 ブリジットがそうみんなに問いかけた。
 それを聞いたラファエルがうなずく。

「あぁ、私も父上から聞いたよ。年末の王家のパーティーで発表されるらしくて、全貴族が参加するように招待状に書かれていたそうだ。ただ、父上が面白いことを言っていてね。発見したのはウエストランド家ではないかって。そうなのかい、リーンハルト?」

 うげっ、まさかラファエルから聞かれるとは……。さすが公爵家、情報力が凄いな。
 僕はごまかすことにする。

「そうなの? 僕は父様から聞いてないからわからないな」

 すかさずブリジットが質問をしてくる。

「リーンハルト、ウエストランド家の兄弟全員が従魔契約をしたと聞いたわ。本当なの?」

 相変わらずブリジットの情報力も凄いな。それともこれが貴族では普通なのか?

「そうだよ。時期はバラバラだけれどね。それに生まれて間もない魔獣のひなや子供だけど」

 僕が答えると、従魔契約したきっかけを教えてほしいとみんなにせがまれた。
 僕はしぶしぶ説明をした。

「リーンハルトの従魔はフェンリル。兄上たちの従魔はベンダバールとフィアンマ。それが子供でも凄いことだ。そもそも従魔契約ができるなんて……聞いたことがないよ」

 ラファエルが、凄いことなんだぞと強調してきた。

「ラファエルの言う通りよ。リーンハルトの従魔のフェンリルを見たかったわ。連れてくれば良かったのに」

 ブリジットが残念そうに言っていると、ディアンヌが良いことを思いついたという顔をする。

「次に会う時は連れてきてほしいわ。無理なら、リーンハルトの王都のお屋敷で次のお茶会をお願いしましょうよ。それなら、他の従魔にも会わせてもらえるかも」
「ディアンヌ、いいアイデアだわ。次のお茶会は来年の冬になってしまうけれど、リーンハルトの王都のお屋敷でお願いしましょう」

 ブリジットはディアンヌの提案に大賛成のようだ。
 2人からのお願いに負けた僕は、来年の4人のお茶会を、王都の僕の屋敷ですることを了承してしまった。
 会話に加わらずに考え込んでいたラファエルが、「従魔に魔力をあげていると聞いたが、リーンハルトの兄上たちは従魔と同じ魔力属性なのに、リーンハルトだけ違うのは大丈夫なのか?」と聞いてきた。
 あれ? 確かにアトレの属性は氷と風だ。僕は水と回復。
 しかも僕、魔法が使えるようになってからアトレに一度も魔力を渡していない。
 出会った頃に、アトレが「勝手にもらっているから大丈夫」と言っていたから忘れていた。
 兄様やカイル隊長たちには同じ属性だからと、リプカやビアンカ、アルラウネに魔力を渡してもらっていたのに……。
 ほんとなら、魔力属性的にはクリス兄様とアトレの相性がバッチリだ。
 アトレ、ほんとはクリス兄様が良かったとか? ……まったく気にしていなかった。
 やばい……どうしよう、不安になってきた。
 お茶会がお開きになり、手紙のやり取りをすることと来年の冬に会うことを約束して、クロンデール公爵家を後にした。
 ラファエルからの質問でお茶会の途中から気もそぞろになってしまった。
 今は早くアトレに確認したい。

感想 34

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