異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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2巻

2-2

 ◇ ◇ ◇

 王都の屋敷に帰ってきた僕は、自分の部屋に入るなり「アトレ」と呼ぶが、アトレはいない。
 あれ、どこに行ったの?
 焦る僕に、侍従の少年ジョルジュが「庭でリプカ様やビアンカ様といますよ」と、窓から指を下に向けながら教えてくれた。
 僕はジョルジュの話を聞くなり、部屋を飛び出し庭へ向かった。

「アトレ」

 僕はアトレに駆け寄る。

「アトレは僕とまったく違う魔力属性なのに、僕と従魔契約して良かったの? それに僕、魔法が使えるようになってから、アトレに一度も魔力を渡していないよね。『勝手にもらっているから大丈夫』と言われて、すっかり忘れていたんだけれど」

 僕はアトレにそうまくし立てる。
 アトレは僕の勢いにびっくりしたようだったけれど、質問に答えてくれた。
 属性は違うけれど、神の加護を持っている僕の魔力は気持ちがいいとのこと。
 また、魔力調整が上手くできない僕から直接もらうより、自分から吸収する方が楽なことも教えてくれた。
 魔力調整がちゃんとできるようになったら、直接もらう方が僕の魔力量の減りが少なくなるので、その時に言おうと思っていたらしい。

「魔力量の減り具合なんて今まで考えたことなかった」

 僕は魔力をアトレにあげていることで、魔力量の減りが激しく、その分人よりも増え方が早いらしい。魔力量は自然回復する際に、総量が少し増えるようだ。
 ただ、アトレも大きくなると必要な魔力量が増えるし、僕自身が魔力を使うことも増えてくるだろうから考えた方がいいと言われた。
 うっ、アトレにさとされるなんて……。
 アトレたちが遊んでいるところがよく見え、庭に出られるドアがある1階の部屋にクリス兄様とジェラ兄様がいて、僕の慌てている様子をしっかりと見ていた。
 僕は部屋に入って、ジェラ兄様たちのもとへ向かう。

「あははは、ハルトが慌てふためいているから何事かと思ったら、今更そんなことを聞くなんて……」

 ジェラ兄様が近づいてきて、僕の背中を叩きながら笑った。
 ジェラ兄様、面白いことなんかないですよ。
 僕は背中が痛いのでジェラ兄様の手から逃れるように距離をとる。
 クリス兄様が質問をしてくる。

「アトレには何て言われたのかい? あと気にしてなかったことを急に何で聞こうと思ったの?」

 僕は今日のお茶会で「そういえば……」となったことと、アトレから言われた内容を話した。

「アトレに諭されたんだ。クッ、クッ」

 笑いをこらえられていませんよ、クリス兄様。僕は口をとがらせた。
 ジェラ兄様が僕に声をかける。

「まぁ、解決したみたいだし、兄弟でゆっくり話す時間もあんまりないからさ。今からハルトも一緒に過ごそう」

 クリス兄様が頷く。

「ジェラの言う通りだよ。年明けには2人ともウエストランド領に戻ってしまうし、そうすれば来年の夏まで、私は会えないと思うからね」

 アトレ、リプカ、ビアンカが遊んでいるのを見ながら、僕たち兄弟は楽しく話をして過ごした。

 ◇ ◇ ◇

 年初までの空いた時間で僕は読書三昧ざんまいのゆったりした時を過ごせた。
 そして、両親から年末の王宮のパーティーの様子がどうだったのかの話を聞いた。
 パーティーの途中で自分たちの魔力レベル、魔力量の見方が発表されたらしく、そこからはパーティーどころではない騒ぎになったらしい。
 呪文を唱えるだけという簡単さだ。聞けばすぐにやってみたくなる。そこからは魔力レベルや魔力量の自慢や比較が始まり、喜怒哀楽きどあいらく入り乱れて大変だったとのことだ。


 第2話 エミニーラダンジョン

 年が明けると、僕たちはウエストランド領に戻った。
 クリス兄様に会えたり、友達ができたりしたのは嬉しかったけれど、僕は王都よりやっぱりこちらの方が好きだ。
 賢者神の加護「図書館」で本が読み放題になったし、春までのんびり過ごそうと思っていたのだが……僕とジェラ兄様は父様に呼ばれて書斎しょさいにいる。
 僕たちを呼んだ父様が口を開く。

「騎士団の魔力レベルや魔力量について調べたが、カイル隊長の班の者だけ鑑定結果の備考欄に『魔法師は夏までに魔力レベル40になること。剣が得意な騎士は夏までにミスリル剣を保持し、使いこなすように』と書かれていた」

 レベルを上げなければならないということは、武力が必要な何かが起こるということ……。
 今年の夏、異変が起こるのかな?
 賢者神も否定はしなかったし、起こるとしたら、やはりホワイトドラゴンが住み着いた樹海の可能性が高そうだ。
 そして僕たちはその異変と立ち向かわないといけないということだろう。
 僕とカイル隊長は、樹海に行く時はいつも行動を共にしている。そして僕には意味深な内容不明の加護もある。だから、僕が樹海に行くことは確定なのかと思っていると……。
 ジェラ兄様が父様に尋ねる。

「父上、ミスリルを全員分用意できるのですか?」
「いや、全員分はないから、素材を集めにダンジョンに何度か行くことになる。お前たちも行きなさい」

 僕は父様の言葉に驚く。
 えっ、ダンジョンですか?
 ジェラ兄様が頷く。

「なるほど、カイル隊長の部隊ばかりが、何度もダンジョンに行っていると怪しまれる。ハルトの護衛ってことにすれば、怪しまれることもない」

 ジェラ兄様は理解したようだ。
 僕がダンジョンに行きたいとごねているように周囲に見せたいと言うことですね。
 まぁ、樹海にいるホワイトドラゴンのことを、領民や他の貴族に知られるわけにはいかないしなぁー。

 ◇ ◇ ◇

 そんなわけでやってきました、初ダンジョン。
 領都からは離れているが、馬を飛ばせば半日で着くみたい。でも僕がいるから1日かかった。
 最近、僕は1人で馬に乗っている。
 馬上の時、アトレは僕の抱っこバッグの中にいて、休憩になったら周辺を走り回っている。
 今日はダンジョンに一番近い街、エミニーラで1泊することになった。
 エミニーラはダンジョンが近いから、鍛冶かじ工房や貴金属工房が立ち並ぶ。
 また、ダンジョン目当ての冒険者や買付かいつけにやってくる商人のための食堂や商店、宿泊施設が充実していてにぎわっている。
 領都に次ぐ大きさで8万人が住んでいる街だ。
 明日から2泊3日でダンジョンに行く予定だ。
 僕は明日に備えて宿の部屋で大人しくしている。アトレとリプカも一緒だ。


 翌朝、街の門の入り口でカイル隊長とその隊員32名、ジェラ兄様、僕は3台の荷馬車に分かれて乗り込みダンジョンの近くまで行く。
 この荷馬車はダンジョンとこの街を行き来する定期便で、帰りはダンジョンからこの街へ帰る人を乗せるそうだ。
 僕たちが乗ってきた馬はこの街に預けるらしい。
 ダンジョンまでの道は整備されているので揺れはそこまでひどくなかった。
 荷馬車にはカイル隊長もいたから、僕はカイル隊長の横に座って小声で尋ねる。

「カイル隊長の石板の備考欄には、班の隊員と同じことが書かれていたの?」
「そうです」

 カイル隊長は何でか嫌な顔をした。石板に触れてほしくないこと書かれてあったのかな?

「ねぇ、何か書かれていたのでしょ? 嫌な顔するってことは」

 周りにも聞こえる声で、僕はカイル隊長に詰め寄った。

「いいえ、書かれていません」

 カイル隊長は無表情で否定してきた。

「マイヤー何か知っている?」

 矛先を変えてマイヤーに聞くと、笑いながら「言えません」との返答がある。
 やっぱり何か隠しているな。
 父様に聞くからいいよと僕が言うと、カイル隊長はしぶしぶ教えてくれた。
「称号:世界樹とアルラウネを助けし者」と書かれていたらしい。
 本当のことだから隠すことではないでしょって思ったけれど、カイル隊長的には僕に言われるままに行動しただけなので、助けた感じがしなく大袈裟おおげさに感じるようだ。
 本当にそれだけ? と思ったけれど、「到着したようですよ」とマイヤーから声をかけられたので追及はできなかった。
 たどり着いたのは、エミニーラダンジョンがある山のふもとの建物の前。
 冒険者ギルド、宿泊施設、食堂が一体になった建物だ。
 ダンジョンに行くには、冒険者ギルドで申請をしないといけないらしい。
 ダンジョンの入り口で冒険者ギルドでもらうメダルを渡さないと、入ることはできないとのこと。
 エミニーラダンジョンは鉱物資源がれるダンジョンだ。
 我が国最大のダンジョンで、現在24階層までは攻略済み。
 最後の階層まで到達した人は今のところいない。
 浅層では鉄と銅が、12階層から銀、金、プラチナなど貴金属、21階層からはエメラルド、サファイヤ、ルビー、ダイヤモンド、ミスリルなどといった高価な貴金属が採れる。
 このダンジョンは全ランクの冒険者対応型のダンジョンだが、ランクごとに行ける階層が決まっている。
 Gランクは2階層まで、Fランクは4階層まで、Eランクは8階層まで、Dランクは13階層まで……という感じだ。
 僕はGランクだけれど、同行者の騎士がみんなBランク以上なので11階層までは行っていいそうだ。
 ちなみに僕がFランクになってもみんなと一緒に行けるのは11階層まで。Eランクになると15階層まで行けるようになる。
 僕たちのグループは、僕とジェラ兄様について浅層から行くメンバーと、21階層から行くメンバーに分かれる。
 ミスリルが採れるのは22階層のボス部屋以降だからだ。
 20階層までで一度でも攻略した階層は飛ばすことができるが、21階層からは毎回挑まなくてはいけないそうだ。


 僕とジェラ兄様が冒険者ギルドで手続きを待っていると、「ハルト」と呼ぶ声がする。
 振り向くと、カナルが走ってこちらに来ていた。
 それを追いかける大人が5人見える。

「あれっ、カナルと『黄金の翼』のメンバーが何でここにいるの?」

 黄金の翼は、リーダーのセーラムさんが率いる男女5人組のパーティだ。
 カナルが言うには、黄金の翼が請け負っているシナーナ村への護衛や、森にひそむゴブリンやオーク討伐の手伝いをしていたようだ。
 黄金の翼から「ご褒美は何がいい?」と聞かれたから、ダンジョンに連れてきてもらったとのこと。

「だって、ハルトがダンジョンに行くって言っていたからさ。俺も行きたいなって。まさか同じ日になるとは思ってなかった」

 カナルがここにいる理由を教えてくれている途中で思いついたことがあったので、僕はセーラムさんに話しかける。

「……セーラムさん、僕をセーラムさんたちのグループに混ぜてもらうことってできますか? 僕とカナルがいたら大変かな?」
「いいえ、今回は浅層しか行きませんので大丈夫ですが……護衛の方々がいらっしゃいますから、皆さんもということですか?」
「僕の思いつきだから、ちょっと確認してきますね」

 僕はジェラ兄様と一緒に、カイル隊長のところへ行く。
 カナルの付き添いで、黄金の翼というBランクの冒険者パーティが、これからダンジョンの浅層に行くことを話す。
 そして、僕も冒険者パーティと一緒に行動すれば護衛を減らせて、上層に行く人を増やせるのではないかと説明する。
「信用できる人たちか?」とカイル隊長に問われる。
 以前、父様の了承を取って、魔法師団長の実技練習に参加した冒険者パーティだと答えた。
 ジェラ兄様が口を開く。

「カイル隊長、ハルトの案はいいと思うぞ。ミスリルは多く持ち帰りたいし、ダンジョンに来る回数は減らしたいからな。黄金の翼はハルトのことも知っているし、俺も17階層までは何度か行っているから大丈夫だ」
「わかりました。騎士4人をジェラルド様とリーンハルト様につけましょう」

 ジェラ兄様の後押しもあってか、カイル隊長は了承してくれた。
 僕、ジェラ兄様、アトレ、リプカと騎士4人は、カナルと黄金の翼と一緒に浅層に行くことになった。
 僕たちに同行するのは、いつも僕のそばにいるマイヤー、ウィルソンに加えて、ミック・ハミルトンとラウル・カムエラという騎士だ。
 ハミルトンとカムエラは土魔法と剣が得意なのだとか。
 全員が集まると、僕はジェラ兄様たちにカナルと黄金の翼を紹介する。
 それを聞いたマイヤーが呟く。

「アークランド魔法師団長のおいさんと、Bランクの冒険者パーティですか」

 その組み合わせに疑問を持ったようだ。
 カナルが、僕と一緒にアークランド魔法師団長から魔法を習っていること、黄金の翼とは父親が商品を卸しているシナーナ村までの護衛依頼で出会ったと説明をする。
 僕も黄金の翼と一緒に魔法の練習をしたことがあると付け加えた。
 そのままお互いの自己紹介が終わったところで、ダンジョンへ向かう。


 ダンジョンに入るとそこは部屋になっていて、中央に水晶玉が鎮座している。
 奥には大きな扉もある。
 この扉はダンジョンからの出口となっていて、こちら側からは入れない。
 そして、この部屋はダンジョンの10階層にあたるようだ。
 なんでもこのダンジョンは山の中腹から1階層が始まり、そこから下に潜っていくらしい。
 そしてダンジョンの入り口と呼んでいる場所――山の麓が10階層になっていて、11階層からは地下だそうだ。
 1階層には、部屋にある水晶玉を使って転移で移動する。
 行ったことがある階層であればどこにでも転移できるようだが、僕は初めてのため、1階層にしか飛ぶことができない。
 階層ごとでおもむきが違うため、地下とはいえ、到底地下には見えない階層もあるとのこと。
 僕のグループとカナルのグループは別々に1階層に転移する。
 転移した場所は大きな扉の前だった。
 カナルたちも転移してきたため、カナルと一緒に大きな扉を開けると、そこには森が広がっていた。僕たちが今いる場所は魔獣に襲われないセーフティーゾーンで、森に入るとゴブリンに遭遇そうぐうするそうだ。

「ハルト、やっと一緒に行けるな。負けないぞ」
「カナル、僕も負けないよ」

 カナルと僕はお互いに初ダンジョンだから、テンション高めである。
 1階層と2階層は森になっていて、現れるのはゴブリンのみ。
 ゴブリンの見た目は小鬼こおにっぽく、身長は1メートルもない。1体1体は弱いが、樹海だと50体以上が集団生活していることが多いため、油断できない相手である。
 1階層で遭遇するゴブリンは一度に5体前後。2階層では10体前後になるそうだ。
 ゴブリンに遭遇したら、僕とカナルが1体は倒し、残りはジェラ兄様たちが対応することに決まった。


 早速森に入ると、ゴブリンが現れる。
 僕とカナルは水魔法のウォーターボールでゴブリンを倒していく。
 すべてのゴブリンを倒した後に出てきたのは、びたナイフ5本だった。
 どうやらドロップ品のようだ。
 あと何回遭遇するかわからないが、1回の遭遇でドロップ品が錆びたナイフ5本って、割に合わないのではないか?
 僕が疑問を口にしたところ、セーラムさんが教えてくれる。
 1階層を奥まで進むとゴブリンとの遭遇は多くなり、ドロップ品の数も増えてくるらしい。
 この1階層の森は一本道になっていて、左右から突然ゴブリンが飛び出してくることの繰り返しだった。
 2時間ぐらい歩き続けると、大きな木の下で数組の冒険者パーティが休憩をしていた。
 セーフティーゾーンのようだ。

「この調子で進めば、1時間ほどでボス部屋につきそうだ。ボス部屋はホブゴブリン3体だ。ハルトとカナルで1体ずつ倒したとして、あとの1体はどうする?」

 ジェラ兄様が、僕とカナルに確認してきた。
 ホブゴブリンは身長150センチ前後のゴブリンを統括するボスだ。
 力はゴブリンよりも強く、Gランクの冒険者だと手こずる相手だ。
 カナルが話しかけてくる。

「ハルト、俺たちで3体倒そうよ」
「僕もできそうならやってみたいな。ダメかな、ジェラ兄様?」

 僕はジェラ兄様にお願いした。
 そこでアトレが口を開く。

『ハルト、ボクが残りの1体を倒したい』
「えっ、アトレ、ホブゴブリン倒したいの? 魔法を使っているところ、ほとんど見たことないけれど大丈夫?」

 アトレが言うには、あまり使っていないから参加してきたえたいそうだ。
 確かにアトレとリプカはダンジョンを楽しみにしていたな。
 アトレは樹海に行ったら走り回っているから、普段は遭遇した魔獣を倒しているのかもしれない。
 ダンジョンは始まったばかりだ、無理をしないでいこう。ということで、アトレに3体目を任せることになった。
 順調にゴブリンを倒しながら森を進むと、突然大きな扉――ボス部屋が現れた。
 その扉の前で5組ほどのパーティが待っていた。
 順番を待っている間、黄金の翼のアリーさんが僕たちに聞いてくる。

「誰がどのホブゴブリンを受け持つか決めたのかしら?」
「俺が左、ハルトが中央、アトレが右だよ」

 カナルの緊張感がない返事に苦笑いしながら、黄金の翼のグレゴリーさん、ウィルさんも話に加わってくる。

「全然緊張感がない初ダンジョン組だな」
「まぁ、1階層は心配ないよ。この2人なら」

 セーラムさんはリーダーらしい言葉を僕たちに掛ける。

「2人とも、何が起こるかわからないから油断するなよ」


「そろそろ順番が来るみたいだ。みんな行こう」

 ジェラ兄様の言葉で、みんな、ボス部屋の扉の前に移動する。さらにジェラ兄様は、ボス部屋に入る際のルールを教えてくれる。

「ハルト、カナル。この扉が青く光った時は、すぐにボス部屋に入れる。これはどの階層のボス部屋でも同じだから覚えておきなさい」
「「はい」」
「扉が青くなったら、お前たちのタイミングで扉を開ければいい。俺たちは後ろで見ているから」

 しばらくすると、扉が青く光り出す。
 僕はカナルと顔を見合わせ頷き合う。
 アトレにも準備はいいかと聞くと『大丈夫だよ』と返ってきたので、僕とカナルで扉を開けた。
 ボス部屋の中は岩肌のようになっていて、どこにホブゴブリンが隠れているかわからなかった。
 しばらく待つけれどホブゴブリンは出てこない……。
 なぜ? と疑問に思った瞬間、ホブゴブリン3体が飛び出してきた。
 僕は慌てて水魔法のウォーターボールを放つが、けられてしまう。
 さらに慌てた僕は、ビッグウォーターボールをホブゴブリンの顔に当て、顔を水で覆って息ができないようにした。
 息ができないホブゴブリンは転がりまわって、やがて動かなくなった。
 アトレとカナルの方を見ると、すでにホブゴブリン2体を倒していた。
 ボス部屋でのドロップ品は、鉄の粒が入った小袋3つだ。
 また、ボス部屋には先ほどまではなかった扉が出現していた。
 扉を開けると、目の前には下へ続く階段と、水晶玉が鎮座している。
 この水晶玉を使うと、同じ階の入り口か、10階層の出口に行くかを選べるらしい。触ってただ念じればいいとのことだ。
 そして、階段を使うと次の階層に進める。
 これはどの階層でも同じだそうだ。

「このボス部屋は、通称フェイント部屋と呼ばれていて、ボスはすぐには襲ってこないのです。ホブゴブリンが出てこないなと思って集中力が途切れた瞬間に飛び出てきます」

 2階層に進む階段を下りながら、セーラムさんが僕とカナルに、ボス部屋の仕組みを事前に教えてしまうと実践練習にならないと思い黙っていたと教えてくれた。
 アトレはフェイントにも動じず、氷魔法のアイスボール一撃で倒したそうだ。
 見たかった、アトレの雄姿ゆうし!!


 カナルもウォーターボールをホブゴブリンの頭に向かって数発撃って、倒したそうだ。
 僕が一番慌てふためいていた。
 カナルから「毎月シナーナ村への往復の道中か、村の近くの森でゴブリンに遭遇するから慣れだよ」と言われた。
 僕はいつも練習だけで、実戦経験はほとんどないからなぁー。
 今回、カナルと一緒にダンジョンで行動できてよかったと思った。

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