18 / 68
第18話 難破船
しおりを挟む
ハンスが島に来たのでヘレンさんに至急来てほしいと伝言を頼むと、翌日ヘレンさんがやってきた。
「ダニエル様、お呼びと伺いましたが、グロースシューレが見つかったのですか?」
「3匹獲れたけれど、別件。見てもらったほうが早い」
私は海に入り難破船を海面まで持ち上げ、すぐに海の中に戻して砂浜に戻る。
「な、難破船ではないですかぁー!!」
砂浜で絶叫していたヘレンさんは、戻ってきた私に詰め寄った。
「ダニエル様、船内には入ったのですか?」
興奮したヘレンさんが早口でまくし立てる。
「いや、白骨化した遺体もあると思うと・・・・」
「失礼しました。確かにそうですね」
それからヘレンさんはマジックバッグから玉のようなものを取り出す。
「ダニエル様、この玉は写し玉といって映像を残せるものです」
写し玉は、1度だけ転写でき映像は何度も繰り返し見ることができる代物だそうだ。
だからたくさんの人に映像を見てもらえば、持ち主がわかるかもしれないと教えてくれる。
「写し玉って聞いたことがないから貴重なものではないの?」
「そうですね。最近ある錬金術師が開発して出回り始めたものです。あと船内に貴重品が残っていればそれなりの謝礼も出ますよ」
私はヘレンさんの提案に賛成して、写し玉に映像を残すために海に潜って、難破船を海面に持ち上げる。
最初は船底を持ち上げていたけれど、海の中にいれば全然重くないから、試しに船首部分を持つだけで難破船を海面へ押し上げてみたらできた。
だからハンスの舟が難破船の周りを回っている状況を、海の中でも確認できるから楽になった。
ハンスの船が砂浜に戻っていったので私も難破船を下ろして砂浜に戻ると、先に戻っていたヘレンさんが難しい顔をして待っていた。
「先端に紋章らしきものがありました。確認すれば持ち主がわかるかもしれません」
「任せてもいい?」
「もちろんです。船内に高価なものがあるか、確認しなくてもよろしいのでしょうか?」
「別に謝礼とかを期待していないし、私だとどうしたらいいかわからないから任すよ」
「わかりました。最善を尽くします」
ヘレンさん持参のマジックバッグに映し玉をしまうと結果がわかれば報告しますと言って、ハンスをせき立ててそのまま帰って行った。
あっ、グロースシューレを渡すのを忘れていた。
まだ時間あるから次回でいいか。
「エインズワース伯爵様、お時間をいただきありがとうございます」
早急に極秘で話したいことがあると子爵領のギルド長から連絡が来たので、何とか時間をやりくりして会っている。
「いやいい、ダニエルが世話になっているからな。早速だがグロースシューレの件ではなく、急ぎで伝えたい用件とは何だ」
ギルド長の話は、ダニエルが難破船を発見して、引き上げに成功したという話だった。
「難破船だと?」
「はい、船内の確認はしておりませんが、幸い紋章ははっきりと残っておりました。その紋章がナビア王国の紋章でございます」
「なんだと!」
「幸い私が写し玉を保持しておりましたので、見ていただければと思い参りました」
「もしかして……」
「断定はできませんが、伯爵様と私の考えの通りだとすると今回の国際会議で……」
伯爵がそれ以上言うなと片手を前に出して話を中断させた。
「わかった。まずは写し玉の映像を見せてくれ。それから対応を考える」
映像を見終わったあと、アーカンソーから商業ギルド長は辞任して商人に戻ったと話があった。
アーカンソーはダニエルが今後も何かするのではないか、できれば傍で手助けしたいという。
商人としての感ですがと笑って言っていたが、ダニエルにはもう味方が出来ているようだ。
あれは不思議と人に好かれる、オーガストが嫉妬している原因の一つだろう。
オーガストにもっと伯爵家の仕事を任せてみるか、自信がつけば落ち着くかもしれない。
「あともうひとつご相談があります」
「まだあるのか?」
アーカンソーの話は掌に痣のある獣、ダニエルは神獣と呼んでいたそうだが、【スキル:獣語】を持つ者と会話ができ、無人島の開拓を手伝ってくれているらしい。
ダニエルから神獣のことは隠したいと言われているが、伯爵家で読んだ本に書かれていたという。
「その本を見つけて内容を知りたいということか」
「はい、是非お力を貸していただきたく存じます」
「わかった。調べてみよう」
私は宰相様にアポを取り、アーカンソーを連れて宰相室にいた。
「宰相様、急な訪問お許しください」
「国際会議の料理でいい食材を見つけてくれたエインズワース伯爵だ。さて今日はどういった要件だ」
私は息子のダニエルが難破船を発見したこと、船内の確認をしていないが、船にナビア王国の紋章がついていることを話した。
「その話は本当なのか?」
いつもは冷静な宰相様がこちらに身を乗り出した。
「こちらにいる商人が、難破船を映した写し玉を持ってきております」
「わかった、映像を確認させてもらおう」
「これはまさしくナビア王国の紋章だ。もし我々が思っている船だとしたら、あと1隻が近くにあるはずだ。探し出して引き上げてほしい」
「もう1隻ですか?」
「そうだ、ダニエル君に何としても見つけ出して貰いたい。しかしダニエル君ははずれスキルだといわれていたが、まったく違ったな。今回の件が成功すれば彼は陞爵されるぞ」
「お待ちください。息子は子爵家を継ぐ予定です」
ただ宰相様は、陞爵はしなかったとしても、はずれスキルといわれるものは我々の教えの通りだと教会が動くだろうから、いずれにしてもダニエル君は注目されるだろうおっしゃる。
難破船についても当時のことをもう一度調べ直しておくと約束してくれた。
写し玉は宰相様にお預けすることになった。
宰相様は国王陛下やナビア王国の外交官に映像を見せるとおっしゃられている。
難破船は両国の関係性の悪化した原因だから改善につながればいい。
しかしダニエルの評価が高まるのは嬉しいが、注目され過ぎるとオーガストが騒ぎ出しそうで頭が痛い。
だが両国の関係性改善のほうが大事だから、やはりオーガストに伯爵家の仕事を与え忙しくさせれば、後継ぎとしての自覚が出てくることにかけてみるしかないか。
オーガストもダニエルが絡まなければまともだから、もっと視野が広くなれば大人になるだろうか。
話は纏まり、宰相室を退出する。
王城の廊下を少し後ろで歩いているアーカンソーに話しかける。
「すまなかったな。緊張したであろう」
「とんでもございません。私のような地方の商人が、お目にかかれるような方ではございません。ご配慮感謝いたします」
ただの顔つなぎだが、どこかで役立つときもあるからな。
アーカンソーはわかっているようだ。
「アーカンソー、詳細はダニエルに話さず、難破船をもう一つ探し出すよう話を持っていってほしい」
「それはかまいませんが、本当にダニエル様にお話ししなくてよろしいのですか?」
「ああ、ダニエルに余計なプレッシャーを与えたくない」
「承知いたしました」
「あと写し玉については、私の方で早急に手に入れてそなたに渡そう。もう一隻見つけたら映して持ってきてほしいが、無理はするな」
確かに国際会議までに2隻見つければ一番いいことだが、1隻はあるのだから見つからなくても大丈夫だろう。
ダニエルが無人島を開拓したいと言った時は失敗すると思っていたが、短期間でここまで活躍するとはな。
「ダニエル様、お呼びと伺いましたが、グロースシューレが見つかったのですか?」
「3匹獲れたけれど、別件。見てもらったほうが早い」
私は海に入り難破船を海面まで持ち上げ、すぐに海の中に戻して砂浜に戻る。
「な、難破船ではないですかぁー!!」
砂浜で絶叫していたヘレンさんは、戻ってきた私に詰め寄った。
「ダニエル様、船内には入ったのですか?」
興奮したヘレンさんが早口でまくし立てる。
「いや、白骨化した遺体もあると思うと・・・・」
「失礼しました。確かにそうですね」
それからヘレンさんはマジックバッグから玉のようなものを取り出す。
「ダニエル様、この玉は写し玉といって映像を残せるものです」
写し玉は、1度だけ転写でき映像は何度も繰り返し見ることができる代物だそうだ。
だからたくさんの人に映像を見てもらえば、持ち主がわかるかもしれないと教えてくれる。
「写し玉って聞いたことがないから貴重なものではないの?」
「そうですね。最近ある錬金術師が開発して出回り始めたものです。あと船内に貴重品が残っていればそれなりの謝礼も出ますよ」
私はヘレンさんの提案に賛成して、写し玉に映像を残すために海に潜って、難破船を海面に持ち上げる。
最初は船底を持ち上げていたけれど、海の中にいれば全然重くないから、試しに船首部分を持つだけで難破船を海面へ押し上げてみたらできた。
だからハンスの舟が難破船の周りを回っている状況を、海の中でも確認できるから楽になった。
ハンスの船が砂浜に戻っていったので私も難破船を下ろして砂浜に戻ると、先に戻っていたヘレンさんが難しい顔をして待っていた。
「先端に紋章らしきものがありました。確認すれば持ち主がわかるかもしれません」
「任せてもいい?」
「もちろんです。船内に高価なものがあるか、確認しなくてもよろしいのでしょうか?」
「別に謝礼とかを期待していないし、私だとどうしたらいいかわからないから任すよ」
「わかりました。最善を尽くします」
ヘレンさん持参のマジックバッグに映し玉をしまうと結果がわかれば報告しますと言って、ハンスをせき立ててそのまま帰って行った。
あっ、グロースシューレを渡すのを忘れていた。
まだ時間あるから次回でいいか。
「エインズワース伯爵様、お時間をいただきありがとうございます」
早急に極秘で話したいことがあると子爵領のギルド長から連絡が来たので、何とか時間をやりくりして会っている。
「いやいい、ダニエルが世話になっているからな。早速だがグロースシューレの件ではなく、急ぎで伝えたい用件とは何だ」
ギルド長の話は、ダニエルが難破船を発見して、引き上げに成功したという話だった。
「難破船だと?」
「はい、船内の確認はしておりませんが、幸い紋章ははっきりと残っておりました。その紋章がナビア王国の紋章でございます」
「なんだと!」
「幸い私が写し玉を保持しておりましたので、見ていただければと思い参りました」
「もしかして……」
「断定はできませんが、伯爵様と私の考えの通りだとすると今回の国際会議で……」
伯爵がそれ以上言うなと片手を前に出して話を中断させた。
「わかった。まずは写し玉の映像を見せてくれ。それから対応を考える」
映像を見終わったあと、アーカンソーから商業ギルド長は辞任して商人に戻ったと話があった。
アーカンソーはダニエルが今後も何かするのではないか、できれば傍で手助けしたいという。
商人としての感ですがと笑って言っていたが、ダニエルにはもう味方が出来ているようだ。
あれは不思議と人に好かれる、オーガストが嫉妬している原因の一つだろう。
オーガストにもっと伯爵家の仕事を任せてみるか、自信がつけば落ち着くかもしれない。
「あともうひとつご相談があります」
「まだあるのか?」
アーカンソーの話は掌に痣のある獣、ダニエルは神獣と呼んでいたそうだが、【スキル:獣語】を持つ者と会話ができ、無人島の開拓を手伝ってくれているらしい。
ダニエルから神獣のことは隠したいと言われているが、伯爵家で読んだ本に書かれていたという。
「その本を見つけて内容を知りたいということか」
「はい、是非お力を貸していただきたく存じます」
「わかった。調べてみよう」
私は宰相様にアポを取り、アーカンソーを連れて宰相室にいた。
「宰相様、急な訪問お許しください」
「国際会議の料理でいい食材を見つけてくれたエインズワース伯爵だ。さて今日はどういった要件だ」
私は息子のダニエルが難破船を発見したこと、船内の確認をしていないが、船にナビア王国の紋章がついていることを話した。
「その話は本当なのか?」
いつもは冷静な宰相様がこちらに身を乗り出した。
「こちらにいる商人が、難破船を映した写し玉を持ってきております」
「わかった、映像を確認させてもらおう」
「これはまさしくナビア王国の紋章だ。もし我々が思っている船だとしたら、あと1隻が近くにあるはずだ。探し出して引き上げてほしい」
「もう1隻ですか?」
「そうだ、ダニエル君に何としても見つけ出して貰いたい。しかしダニエル君ははずれスキルだといわれていたが、まったく違ったな。今回の件が成功すれば彼は陞爵されるぞ」
「お待ちください。息子は子爵家を継ぐ予定です」
ただ宰相様は、陞爵はしなかったとしても、はずれスキルといわれるものは我々の教えの通りだと教会が動くだろうから、いずれにしてもダニエル君は注目されるだろうおっしゃる。
難破船についても当時のことをもう一度調べ直しておくと約束してくれた。
写し玉は宰相様にお預けすることになった。
宰相様は国王陛下やナビア王国の外交官に映像を見せるとおっしゃられている。
難破船は両国の関係性の悪化した原因だから改善につながればいい。
しかしダニエルの評価が高まるのは嬉しいが、注目され過ぎるとオーガストが騒ぎ出しそうで頭が痛い。
だが両国の関係性改善のほうが大事だから、やはりオーガストに伯爵家の仕事を与え忙しくさせれば、後継ぎとしての自覚が出てくることにかけてみるしかないか。
オーガストもダニエルが絡まなければまともだから、もっと視野が広くなれば大人になるだろうか。
話は纏まり、宰相室を退出する。
王城の廊下を少し後ろで歩いているアーカンソーに話しかける。
「すまなかったな。緊張したであろう」
「とんでもございません。私のような地方の商人が、お目にかかれるような方ではございません。ご配慮感謝いたします」
ただの顔つなぎだが、どこかで役立つときもあるからな。
アーカンソーはわかっているようだ。
「アーカンソー、詳細はダニエルに話さず、難破船をもう一つ探し出すよう話を持っていってほしい」
「それはかまいませんが、本当にダニエル様にお話ししなくてよろしいのですか?」
「ああ、ダニエルに余計なプレッシャーを与えたくない」
「承知いたしました」
「あと写し玉については、私の方で早急に手に入れてそなたに渡そう。もう一隻見つけたら映して持ってきてほしいが、無理はするな」
確かに国際会議までに2隻見つければ一番いいことだが、1隻はあるのだから見つからなくても大丈夫だろう。
ダニエルが無人島を開拓したいと言った時は失敗すると思っていたが、短期間でここまで活躍するとはな。
135
あなたにおすすめの小説
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
前世のノリで全力面接対策したらスパイを疑われた
碧井 汐桜香
ファンタジー
前世の記憶のあるジョセフィーヌ・アイジャルは、ついに学園を卒業する。
王宮に士官するために、筆記試験は無事に好成績で突破し、最後の面接試験だ。
前世の通りにガクチカ、自己PRと企業分析。完璧に済ませて臨んだ面接は、何かおかしな様子で……?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる