キャンピングカーで始める異世界スローライフ

まけない犬

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キャンピングカーで始める異世界スローライフ

第4話「異世界転生」

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 目が覚めたのは、ほんの少し前のことだ。
 魔物に出くわすようなトラブルもなく、キャンピングカーも脇に停めてあった。車内に入り、冷蔵庫からペットボトルを取り出してひと口飲んだ。
 異世界に放り出されたにしては、自分でも驚くほど冷静だったと思う。

 それからすぐにエクラの運転を始めた。

「すげー……まさに異世界ファンタジーって感じだな」

 我ながら気の利かないせりふだとは思った。
 転生前は都会住まいだったが、生まれと育ちは、田舎だ。
 それでもこんな大自然を味わったことはない。

 見渡す限りの草原が広がり、緩やかな風に草花が揺れている。
 半開きにしたウィンドウから流れ込む空気くうきを吸い込むと、青臭い味がした。

 でも、悪くはない。
 会社のデスクに座って、淀んだよどんだ呼吸……あの息苦しさがうそみたいだ。
 いや、比較するのも馬鹿らしい。
 
 視界を遮るようなビルはひとつもない。
 ときおり、石造りの建物が見える。だが、点々としすぎていて集落と呼べるのかも怪しい。

「土地……余ってんなぁ……」

 またもショボい感想が口からこぼれた。

 ゴトゴト、ゴトン――

 舗装されていない道の振動がシートから伝わってくる。人の歩みや馬車のわだちが、そのまま道になっているようだ。

 エルグランデ――それがこの異世界の名前らしい。転生の女神様はそう言っていた。

 しばらく走らせてから、休憩がてら車を止めた。出入り口のステップに腰をおろして空を見上げる。
 青黄赤の三色で並んだ月が見えた。信号機みたいだな、と思いながらスマフォで時間を確認すると、正午すぎだった。
 地球の、しかもJSTに合わせた時計だから狂っていそうなものだが、なんとなく合っている気がした。

 異世界ってなんだかんだ都合が良いようにできているものだろう。このままネットに繋げるつなげることができても驚かない。

 とにかくだ。目の前に異世界が広がっていて、キャンピングカーがあるのなら、やることはひとつだろう。

「そうだ。キャンプだ」

 ローンだって組んだばかりなんだ。
 死人から取り立てることはできないから、いまさらそんなことを気にしても無意味だろうか。

 社会からも、会社からも俺は逃げ出したかった。
 だけど、俺にはその勇気がなかった。

 俺を手放せと叫びながら、俺自身が社会を手放さなかったんだ。
 だけど、元の世界で死に、転生してしまったというのなら、とたんに話はシンプルになる。

 異世界を楽しもう。

異世界ここをキャンプ地とするっ!」  
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