4 / 7
キャンピングカーで始める異世界スローライフ
第4話「異世界転生」
しおりを挟む
目が覚めたのは、ほんの少し前のことだ。
魔物に出くわすようなトラブルもなく、キャンピングカーも脇に停めてあった。車内に入り、冷蔵庫からペットボトルを取り出してひと口飲んだ。
異世界に放り出されたにしては、自分でも驚くほど冷静だったと思う。
それからすぐにエクラの運転を始めた。
「すげー……まさに異世界ファンタジーって感じだな」
我ながら気の利かないせりふだとは思った。
転生前は都会住まいだったが、生まれと育ちは、田舎だ。
それでもこんな大自然を味わったことはない。
見渡す限りの草原が広がり、緩やかな風に草花が揺れている。
半開きにしたウィンドウから流れ込む空気を吸い込むと、青臭い味がした。
でも、悪くはない。
会社のデスクに座って、淀んだ呼吸……あの息苦しさが嘘みたいだ。
いや、比較するのも馬鹿らしい。
視界を遮るようなビルはひとつもない。
ときおり、石造りの建物が見える。だが、点々としすぎていて集落と呼べるのかも怪しい。
「土地……余ってんなぁ……」
またもショボい感想が口からこぼれた。
ゴトゴト、ゴトン――
舗装されていない道の振動がシートから伝わってくる。人の歩みや馬車の轍が、そのまま道になっているようだ。
エルグランデ――それがこの異世界の名前らしい。転生の女神様はそう言っていた。
しばらく走らせてから、休憩がてら車を止めた。出入り口のステップに腰をおろして空を見上げる。
青黄赤の三色で並んだ月が見えた。信号機みたいだな、と思いながらスマフォで時間を確認すると、正午すぎだった。
地球の、しかもJSTに合わせた時計だから狂っていそうなものだが、なんとなく合っている気がした。
異世界ってなんだかんだ都合が良いようにできているものだろう。このままネットに繋げることができても驚かない。
とにかくだ。目の前に異世界が広がっていて、キャンピングカーがあるのなら、やることはひとつだろう。
「そうだ。キャンプだ」
ローンだって組んだばかりなんだ。
死人から取り立てることはできないから、いまさらそんなことを気にしても無意味だろうか。
社会からも、会社からも俺は逃げ出したかった。
だけど、俺にはその勇気がなかった。
俺を手放せと叫びながら、俺自身が社会を手放さなかったんだ。
だけど、元の世界で死に、転生してしまったというのなら、とたんに話はシンプルになる。
異世界を楽しもう。
「異世界をキャンプ地とするっ!」
魔物に出くわすようなトラブルもなく、キャンピングカーも脇に停めてあった。車内に入り、冷蔵庫からペットボトルを取り出してひと口飲んだ。
異世界に放り出されたにしては、自分でも驚くほど冷静だったと思う。
それからすぐにエクラの運転を始めた。
「すげー……まさに異世界ファンタジーって感じだな」
我ながら気の利かないせりふだとは思った。
転生前は都会住まいだったが、生まれと育ちは、田舎だ。
それでもこんな大自然を味わったことはない。
見渡す限りの草原が広がり、緩やかな風に草花が揺れている。
半開きにしたウィンドウから流れ込む空気を吸い込むと、青臭い味がした。
でも、悪くはない。
会社のデスクに座って、淀んだ呼吸……あの息苦しさが嘘みたいだ。
いや、比較するのも馬鹿らしい。
視界を遮るようなビルはひとつもない。
ときおり、石造りの建物が見える。だが、点々としすぎていて集落と呼べるのかも怪しい。
「土地……余ってんなぁ……」
またもショボい感想が口からこぼれた。
ゴトゴト、ゴトン――
舗装されていない道の振動がシートから伝わってくる。人の歩みや馬車の轍が、そのまま道になっているようだ。
エルグランデ――それがこの異世界の名前らしい。転生の女神様はそう言っていた。
しばらく走らせてから、休憩がてら車を止めた。出入り口のステップに腰をおろして空を見上げる。
青黄赤の三色で並んだ月が見えた。信号機みたいだな、と思いながらスマフォで時間を確認すると、正午すぎだった。
地球の、しかもJSTに合わせた時計だから狂っていそうなものだが、なんとなく合っている気がした。
異世界ってなんだかんだ都合が良いようにできているものだろう。このままネットに繋げることができても驚かない。
とにかくだ。目の前に異世界が広がっていて、キャンピングカーがあるのなら、やることはひとつだろう。
「そうだ。キャンプだ」
ローンだって組んだばかりなんだ。
死人から取り立てることはできないから、いまさらそんなことを気にしても無意味だろうか。
社会からも、会社からも俺は逃げ出したかった。
だけど、俺にはその勇気がなかった。
俺を手放せと叫びながら、俺自身が社会を手放さなかったんだ。
だけど、元の世界で死に、転生してしまったというのなら、とたんに話はシンプルになる。
異世界を楽しもう。
「異世界をキャンプ地とするっ!」
10
あなたにおすすめの小説
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる