キャンピングカーで始める異世界スローライフ

まけない犬

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キャンピングカーで始める異世界スローライフ

第14話「謁見」

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 エクラに乗って異世界を見てまわる。

 それが俺のやりたいことだが、実はもうひとつテーマがある。
 それは――他人《ひと》のいうこと聞かないということだ。

 社畜に自由などない。自我に見せかけた鎖があるだけだ。
 サラリーという名の命綱を握られて、部署という名のおりに入れられる。

 理解を強要され、納得を命じられた先にあるのは、ほんの数日、生きながらえるための残高だけ。

 だが、もうそれはおしまいだ。
 俺は社会保障の奴隷だった。しかし、異世界に俺の戸籍はない。

 生きていても死んでいても、この世界にとっては「しったことではない」ということだ。

 だったら、誰にも媚びるこびる必要がない。
 俺は、俺の声だけに耳をかたむける。

 自らを由とする――喜びも後悔もすべてはこの手の中に――――――

「まことに大義であった」

 王にお褒めのお言葉を頂いた俺は「ハハー」と頭を垂れた。
 謁見の間はだだっ広く、閑静で、それでいて人が多かった。

 そこら中にやりを持った兵士が立っている。
 銀色の甲冑かっちゅうを身にまとった騎士風の男達が、コチラを睨みつけにらみつけてくる。
 睨むにらむというのは、被害妄想かもしれないが、腰に剣を差した男達に視線を向けられているから、無理もないだろ?

 玉座としか言いようがない椅子に座る人物は……初対面だけど、たぶん王様だ。
 リーシャーから「王への謁見が許された」と聞かされ、望んでもいないのにこの場に放り出された以上、間違いない。

 精悍せいかんな顔付きで、王冠を被っている。なによりもオーラが凄い。
 王様ってもっとしわくちゃな老人かと思っていた。この人はヤケに屈強で、眼力が強い。

 おそらく、この場にいる誰よりも強いんちゃうかな……とか、そんな風に感じる。

「この者が森のぬしをねぇ? 人は見かけによらぬと申しますけど、うふふふふ」

 クラリオン……それがこの国の名前らしい。
 つまり、目の前の御仁はクラリオン王で、いま口を開いたご婦人はクラリオン王妃となる。

 これもリーシャーから説明があったから確かだ。

 王妃という割には若く見えるけど、権力を持った男なんて若い娘を嫁にするもんだ。だから別に不思議でもない。
 当たり前のように美人で、どことなく誰かに似ているような気もするが……。

 誰だっけ? 地球にいた頃に見た女優とかかな?

「して、褒美としてなにを望むのだ?」

 この流れもあらかじめリーシャーに伝えられていた。
 王に失礼のないように、すべて事前に予習をしておけと言われた。

「はっ! えー……わたくし、いま旅をしとりまして……路銀など頂戴頂けますと……」

 緊張のしすぎでよく分からなくなってきた。
 昔みた時代劇みたいな口調になってしまっている。

「貴君っ!」

 王の視線が強まる。
 俺はビクンと肩を震わせた。

「あれほどの偉業を成し遂げながら、その欲のなさ……気に入ったぞ!」

 王が「わっはっはっは」と豪快に玉座に背を預けると、ギシリと音が鳴った。

「ははー! ありがたきしあわせっ!」

 自由とは自らに責任を持つことだ。
 生活費は必要だし、軍隊という究極の暴力装置を持つ王の権力は絶対だ。
 それらに向かって、自らの意思を持って頭を下げる……。

 つまりはそれが生きるということだ。
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