私の日常-それぞれの-

林原なぎさ

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甥っ子から見たお話

悪魔と天使

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「斗真。」


木製バットを肩に担ぎ、にっこり笑う母は笑顔なのに笑顔では無い。


何とも言えぬ威圧感と迫力さが有り、逆らう事は許されない。


「いいから早くけつをこっちに向けなさい。」


「いや、母さん…それは、サスガに…。」


「早くしなさい。」



母の何とも言えぬオーラを感じ、従うしかないと判断する。





我が家で母は絶対の存在だ。


3歳にもなっていない頃。


「男がいつまでメソメソ泣いてるの?泣いてれば誰かが助けてくれるとでも思ってるのかしら?」


泣きじゃくる俺に言い放ち、母は膝を折り曲げ、ただ傍観するのみで一切手を貸してくれる気配は無かった。



4歳の頃。


「いい、斗真。人間いつ独りになるか解らない身よ。自分で出来る事は自分でやるのよ。」


掃除に洗濯、米の炊き方などのまだ4歳児にでも出来そうな雑用、整理整頓などの家事は一通り叩き込まれた。



7歳になる頃。


「女は生まれた瞬間から死ぬまで'女'なの。乱暴に扱ったりするなんてナンセンス。女性を敬い、常に紳士でいなさい。」


妹が生まれた俺に妹の世話を見させ、女性を敬う様にと教育される一方、母を絶対君主とする我が家の教育制度が本格的に始まった。


そんな母に洗脳…では無く。

育てられた俺は多分、相当な好青年に育ったと思う。(自分で言っちゃう時点でまだまだダメな子ね、と母から言われ事は気にしない。)



そんな絶対君主の母だが、妹の歩さんにはとんでもなく優しい。


同一人物かと自分の目を疑う位には違う。


ばあちゃん、じいちゃんが言うには昔からの様だ。



今だって。




「姉さんありがとう。」


「どういたしまして。」


歩さんが大好きだといううちから近所にあるケーキ屋のショコラケーキ。


歩さんの満足そうな表情に母は大満足の様子だ。

歩さんが来るからと、母は朝からケーキを買いに行ったのだ。

間違っても俺の為にわざわざケーキを買いに走らない。



「斗真くんも食べようよ。」


恨みがましく母を見るその視線を歩さんは俺も食べたいと勘違いしたのだろう。

優しい笑顔で俺の事も気を遣ってくれる。




ちなみに'歩さん'と呼ぶには理由がある。

昔、母がイトコの碧や遼哉に。


「まさか私を'叔母さん'なんて呼ぶ訳ないわよね。」


と、脅していた記憶がある。


そして母も俺自身に。


「歩を'叔母さん'なんて呼ぶ訳ないわよね。」


圧が凄かった…。





「歩さんありがとう。」



お礼を言うと歩さんも笑顔を返してくれた。


本当に母と血が繋がっているのかと問いたくなる。

あぁぁ。同じ姉妹でこうも違うとはっ…。

神様がいるならなんて不公平な事か、と嘆かわしくなる。




「なぁに?私にナニか言いたい事があるのかしら?」


「トンデモナイです。」


アンタの考えてる事なんか丸わかりよ、と隣に座る母に頬をつねられた。



「斗真くんと姉さんは本当に仲良しだよね。」


控えめにクスクス笑う歩さんは、甥っ子の俺の目から見ても可愛らしい人だと思う。


本当に母さんと血が…省略。


悪魔と天使。

こんな両極端な姉妹がいても良いのだろうか。



「誰が'悪魔'ですって。」


口に出していたらしい俺は再び母にケツバットを食らう羽目になったのだった。



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