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第一章「希望の光と絶望の認識」
第三話「実績解除:警戒緩和」
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「そうだね。化け物をこの星から追い出す算段もあるわけだし」
「え!?!?」
日常会話のように落とされた重大な言葉に、目を見開き、身を乗り出しすぎてベットから落ちそうになる。
「追々、話すよ」
愛梨は小さな声で呟き、部屋を出ていった。
看護室と呼ばれる部屋から、名無しも外に出る。
少女が布団に寝転んだのは、おそらく寝るにはちょうどいい深夜0時あたりだろう。
「君が新しい人かー」
入れられた部屋は、石造りの縦に長い四人用の部屋だ。
その中にいる、菱形の中に黒い線が十字に入った模様の目をする、白に近いオレンジ色の髪の少女より幼いであろう少女。
見るからに明るい雰囲気を醸し出し、布団の横で寝そべられながら話しかけてきた。
「あの誰で」
「名を名乗るなら~まずは君から!」
表情は不変でありながら、声の調子は高く、ペースを乱され言葉が詰まる。
「えっと名前は…ないです」
「じゃあ名無しで!」
「え?」
「名前がないから名無しいいでしょ!わかりやすいしコンパクト何より単純明快、愚直なネーミング!さすが私のセンスだね~」
自分で話し、自分で納得するこの少女に名無しはやりづらさと、少し怖さを感じた。
表情が変わらない所だったり、まばたきを一切しないことだったり、何より対面で話しているはずが会話している感じには名無しには見えなかった。
(正直不気味さを感じるし苦手だ。何もしていなければ可愛い子供なのに……)
「あの?」
「なになに?名無し。もしかして気に入りすぎて意見表明て感じかな?」
「寝ていい?」
「だめだよ~~。まだまだ話足りな、って寝ちゃだめーー。お姉ちゃんー!」
「ごめん、眠いの。それと私は一人っ子……」
それを最後に、少女は眠りについた。
目を閉じた瞬間に寝て、一瞬で目が覚めた。
「おはよう!!」
「おはよう……。朝からテンション高いね」
体を起こし、目を擦る。光景が代わり映えしなさすぎて朝と呼んでいいのかわからないがきっと朝だろう。
地下であるのに時計がない。普段はどうやって生活しているのか疑問が浮かんだ。
「お姉ちゃん!朝ご飯食べよ!」
ミージュという名前の少女は、もらった名無しの服のすそを扉の方へ引っ張り、無理やり食堂へ向かわせようとする。
「わかった。ちょっと待って」
名無しはマンションから盗った服に着替え、二人は湿った土の匂いのする廊下を歩く。廊下は間隔をおいて照明が置かれているだけで、迷子になりそうだったが、ミージュが案内してくれたおかげで、食堂にたどり着いた。
食堂は今まで見た部屋の中で一番大きく、テーブルと椅子が扉側に規則的に置かれ、向かい側は厨房になっている構造のようだ。
「おばちゃん!来たよ!」
「は~い。今行くよ」
奥から声が聞こえ、料理を両手で持ったおばあさんが現れ、座っていたテーブルに料理を置いてくれた。朝ごはんは食パンとスクランブルエッグと色とりどりのサラダとコーンスープ。家庭的な朝食メニューが目の前に並ぶ。
「いただきます!!」
「いただきます」
ミージュは元気いっぱいにいただきますと言い、名無しも小さい声で言い二人は朝食を食べた。
「いい食いっぷりだね。新人さん」
「美味しいので」
目の前にある朝食を次々口に入れ、頬が膨れる。
「おや、お世辞も言えるのかい。まだ小さいのに偉いね」
(十三歳って小さいの?それにしても美味しい。これなら毎日食べれる)
でもちょっとだけ名無しには疑問が浮かんだ。どうやってこれほどの食材を用意しているのだろうかということだ。野菜と卵は農業、酪農しないと手に入らない。それほど余裕があるということなのか。この施設もどこから出てきたのか謎だった。
「お姉ちゃん。後で隊長さんが来てだって」
「え?分かった」
「行き方は右真っ直ぐ左左右真っ直ぐ右左右だよ!」
「コマンドかな?」
そうして朝食をごちそうさせてもらった後、ミージュの言われた通り通路を進んだ。すると、隊長の私室と書かれた看板の部屋にたどり着いた。
ノックをせずに扉を開け、名無しは部屋に入る。
入ると、両隣がびっしり本棚で埋まっており、そこからこぼれ落ちるように本や紙が散らばっていた。部屋が雑なのは気にしないとして、よくわからなかったのが本のいくつかが見開きに何も書かれていないということだった。
(表紙はちゃんとしているのに、これじゃあ本がかわいそう………)
でも今は、そんなことを話しに来た訳ではない。
隊長はベッドに座り、扉の方を見ている。呼ばれた身である名無しは、前を見た。
「来たよ」
「ノックをせずにくるやつは有望だ。歓迎する」
(ん?ノックって何?私は知らない)
「とはいえ時間がない。すぐに本題に入ろう」
「本題?」
「ああ、君に世界の全容と我々の今を話す」
隊長はそう切り出し、この世界が置かれている現状について語り始めた。
「2025年8月13日セルトンネアス研究所から未知の生物通称『魂喰霊』が現れた。形状はコアを守るように三角錐状に白色の固い物質で覆われている、ニュースで報じられたやつだ」
最初の報道時、姿は確かに報じられていた。
「だが、最初はそこまで脅威ではなかった。むき出しのコアは銃で射抜けば、砕け消滅したからだ。戦況は優勢。軍が合流し、前線は前へ前へと進んでいき研究所まで奴らを追い返す事に成功した。勝利を目前、だが、あと一歩の所で一つの歯車が狂うことになった」
それはニュースを見ていた名無しも知っている。
これにより、魂喰霊の特性が明らかになったからだ。
「兵士が一人死んだ。死角からグサリとな。それで、奴らの”死者喰らい”の特性が明らかになった」
「それが最初の」
「ああ、最初の犠牲者。奴に冠された名は”原初の白炎”。刺された兵士は、魂喰霊が出す黒霧に包まれ乗っ取られたらしい。そして二つ目の特性、固有の能力とまれに角を持つということが判明した」
───固有の能力と角。
死体を乗っ取った魂喰霊は、空を飛んだり雷や炎を生み出したりと様々な能力を持ち、尋常ならざる人間の限界を超えた身体能力を持つらしい。
そして規則性は分からないが、最大二本の角をまれに持つ。
名無しを追ってきた魂喰霊も、一本の黒角を持っていた。
「そいつは白炎を纏った剣を扱っていた。どんな障害をも切り裂き、灰すら残さないその剣で、軍の総員全てが斬り殺された。そこから課せられた化け物の二つ名は白炎だと」
「そいつってどうなったの?」
単純な疑問として氷楼に問いかける。
「知らん」
「そ、」
「幸い、白炎は死体すら残さなかった。死体が乗っ取られることはなかったが、魂喰霊は解き放たれた。人類が滅亡するのは時間の問題となる。また、それに追い打ちをかけるように、研究所から正体不明の霧が世界中に拡散された」
「霧?」
そういえば逃げているときに、霧が濃かったような気がすると、名無しは思い出す。
「ああ、正体不明の霧は瞬く間に広がり、それに触れた人を一、二時間ほどで気絶もしくは死亡させた。それが決定打となり、無防備な人間は魂喰霊によって殺され、今世界中には化け物が溢れかえっている」
名無しが思ったより、状況は厳しかった。
世界中に魂喰霊がいるのだとしたら、全て討伐するには数と範囲が大きすぎるからだ。
「まぁそこまで気負いしなくてもいい。この状況を打破する目星はついてる」
「そうなの!?」
「知り合いに信用できるか怪しいが、研究所に詳しい奴が一人いる。そいつから魂喰霊の出現は、異世界のゲートに由来していることが分かった」
「ゲート?」
「魔導科学というものは知っているだろう」
名無しが生まれる少し前、新たなエネルギー源になる物質、魔素が見つかって、産業革命が起きた。
今では当たり前のように発電や一部通信などに使われている。
「ゲートは魔導科学の最高峰の研究。セルトンネアス研究所で開発されたそれは、異世界とつながりを持つことに成功したらしくてな。その結果、異世界側から魂喰霊が来たらしい」
「そうなんだ。じゃあ、ゲートをどうにかすれば全て解決する?ん……?解決しなくない?」
世界に散らばった魂喰霊は無数にいる。
全て倒すのは不可能に近い。
星のいたるところをしらみつぶしに探すのも、現実的ではないだろうと、名無しは考える。
「いや、そこに関しては俺が何とかしよう。お前らはゲートを破壊するか封じるか、どんな手段であれゲートの機能を停止させれば、全て解決する」
「何とかって、できるの?」
「約束通りならな。詳しいことは言えないが」
要領を得ない内容を言い表わす氷楼に疑念を抱くが、こんな状況で嘘をつく必要がないと名無しは判断し、ひとまず話を信じることにした。
「大体わかった。つまり私たちは魂喰霊を掻い潜り、セルトンネアス研究所に向かう。そして、ゲートを破壊する。そういうこと?」
「そうだ。これからお前には、第二拠点に行ってもらう。詳細は行ってから聞け。今は時間がない」
さきほどまで、悠長に話していた氷楼が急に話を切り、ベッドから立ち上がる。
扉のとなりぐらいにあるマイクに向かって歩きマイクとつながっている赤いボタンを押した。
「この放送を聞く全ての人員に告ぐ!2時間以内にこの第一拠点を捨て、第二拠点もしくは第三拠点へ向かえ!」
マイクに乗った氷楼の声は放送によって施設内に拡散された。
急な出来事に名無しは動揺し、唖然とする。
氷楼はマイクを切り、再びベッドへと座った。
「能力で未来が見えた。今言った通りだ。お前も誰かと行け」
そんな事言われても何が何だか、名無しには分からなかった。
(急にこの世界の事を教えられて、来たばっかの拠点を捨て、第二拠点に行くことになって、それに能力って?)
「ほら、行け。行かないと死ぬぞ」
命に関わるという言葉に、化け物の姿を思い出し、名無しの手が小刻みに震える。
鋭い目つきで睨む氷楼に、これ以上聞く勇気は名無しにはなかった。
「分かった」
分からないことだらけだ。疑問は山のようにある。だが、今は言われた通りにしたほうがいいだろうと、少女は考える。分からない事だらけなら、言われたことをやるのが良いはずだと。
氷楼は、部屋を後にする名無しに声をかける。
「また後でな」
その言葉に、名無しは胸がざわついた。
さっきまでとは違う柔らかな声色に名無しは振り返る。まるで昔会ったことのあるような、懐かしいその声と言葉に。
「え!?!?」
日常会話のように落とされた重大な言葉に、目を見開き、身を乗り出しすぎてベットから落ちそうになる。
「追々、話すよ」
愛梨は小さな声で呟き、部屋を出ていった。
看護室と呼ばれる部屋から、名無しも外に出る。
少女が布団に寝転んだのは、おそらく寝るにはちょうどいい深夜0時あたりだろう。
「君が新しい人かー」
入れられた部屋は、石造りの縦に長い四人用の部屋だ。
その中にいる、菱形の中に黒い線が十字に入った模様の目をする、白に近いオレンジ色の髪の少女より幼いであろう少女。
見るからに明るい雰囲気を醸し出し、布団の横で寝そべられながら話しかけてきた。
「あの誰で」
「名を名乗るなら~まずは君から!」
表情は不変でありながら、声の調子は高く、ペースを乱され言葉が詰まる。
「えっと名前は…ないです」
「じゃあ名無しで!」
「え?」
「名前がないから名無しいいでしょ!わかりやすいしコンパクト何より単純明快、愚直なネーミング!さすが私のセンスだね~」
自分で話し、自分で納得するこの少女に名無しはやりづらさと、少し怖さを感じた。
表情が変わらない所だったり、まばたきを一切しないことだったり、何より対面で話しているはずが会話している感じには名無しには見えなかった。
(正直不気味さを感じるし苦手だ。何もしていなければ可愛い子供なのに……)
「あの?」
「なになに?名無し。もしかして気に入りすぎて意見表明て感じかな?」
「寝ていい?」
「だめだよ~~。まだまだ話足りな、って寝ちゃだめーー。お姉ちゃんー!」
「ごめん、眠いの。それと私は一人っ子……」
それを最後に、少女は眠りについた。
目を閉じた瞬間に寝て、一瞬で目が覚めた。
「おはよう!!」
「おはよう……。朝からテンション高いね」
体を起こし、目を擦る。光景が代わり映えしなさすぎて朝と呼んでいいのかわからないがきっと朝だろう。
地下であるのに時計がない。普段はどうやって生活しているのか疑問が浮かんだ。
「お姉ちゃん!朝ご飯食べよ!」
ミージュという名前の少女は、もらった名無しの服のすそを扉の方へ引っ張り、無理やり食堂へ向かわせようとする。
「わかった。ちょっと待って」
名無しはマンションから盗った服に着替え、二人は湿った土の匂いのする廊下を歩く。廊下は間隔をおいて照明が置かれているだけで、迷子になりそうだったが、ミージュが案内してくれたおかげで、食堂にたどり着いた。
食堂は今まで見た部屋の中で一番大きく、テーブルと椅子が扉側に規則的に置かれ、向かい側は厨房になっている構造のようだ。
「おばちゃん!来たよ!」
「は~い。今行くよ」
奥から声が聞こえ、料理を両手で持ったおばあさんが現れ、座っていたテーブルに料理を置いてくれた。朝ごはんは食パンとスクランブルエッグと色とりどりのサラダとコーンスープ。家庭的な朝食メニューが目の前に並ぶ。
「いただきます!!」
「いただきます」
ミージュは元気いっぱいにいただきますと言い、名無しも小さい声で言い二人は朝食を食べた。
「いい食いっぷりだね。新人さん」
「美味しいので」
目の前にある朝食を次々口に入れ、頬が膨れる。
「おや、お世辞も言えるのかい。まだ小さいのに偉いね」
(十三歳って小さいの?それにしても美味しい。これなら毎日食べれる)
でもちょっとだけ名無しには疑問が浮かんだ。どうやってこれほどの食材を用意しているのだろうかということだ。野菜と卵は農業、酪農しないと手に入らない。それほど余裕があるということなのか。この施設もどこから出てきたのか謎だった。
「お姉ちゃん。後で隊長さんが来てだって」
「え?分かった」
「行き方は右真っ直ぐ左左右真っ直ぐ右左右だよ!」
「コマンドかな?」
そうして朝食をごちそうさせてもらった後、ミージュの言われた通り通路を進んだ。すると、隊長の私室と書かれた看板の部屋にたどり着いた。
ノックをせずに扉を開け、名無しは部屋に入る。
入ると、両隣がびっしり本棚で埋まっており、そこからこぼれ落ちるように本や紙が散らばっていた。部屋が雑なのは気にしないとして、よくわからなかったのが本のいくつかが見開きに何も書かれていないということだった。
(表紙はちゃんとしているのに、これじゃあ本がかわいそう………)
でも今は、そんなことを話しに来た訳ではない。
隊長はベッドに座り、扉の方を見ている。呼ばれた身である名無しは、前を見た。
「来たよ」
「ノックをせずにくるやつは有望だ。歓迎する」
(ん?ノックって何?私は知らない)
「とはいえ時間がない。すぐに本題に入ろう」
「本題?」
「ああ、君に世界の全容と我々の今を話す」
隊長はそう切り出し、この世界が置かれている現状について語り始めた。
「2025年8月13日セルトンネアス研究所から未知の生物通称『魂喰霊』が現れた。形状はコアを守るように三角錐状に白色の固い物質で覆われている、ニュースで報じられたやつだ」
最初の報道時、姿は確かに報じられていた。
「だが、最初はそこまで脅威ではなかった。むき出しのコアは銃で射抜けば、砕け消滅したからだ。戦況は優勢。軍が合流し、前線は前へ前へと進んでいき研究所まで奴らを追い返す事に成功した。勝利を目前、だが、あと一歩の所で一つの歯車が狂うことになった」
それはニュースを見ていた名無しも知っている。
これにより、魂喰霊の特性が明らかになったからだ。
「兵士が一人死んだ。死角からグサリとな。それで、奴らの”死者喰らい”の特性が明らかになった」
「それが最初の」
「ああ、最初の犠牲者。奴に冠された名は”原初の白炎”。刺された兵士は、魂喰霊が出す黒霧に包まれ乗っ取られたらしい。そして二つ目の特性、固有の能力とまれに角を持つということが判明した」
───固有の能力と角。
死体を乗っ取った魂喰霊は、空を飛んだり雷や炎を生み出したりと様々な能力を持ち、尋常ならざる人間の限界を超えた身体能力を持つらしい。
そして規則性は分からないが、最大二本の角をまれに持つ。
名無しを追ってきた魂喰霊も、一本の黒角を持っていた。
「そいつは白炎を纏った剣を扱っていた。どんな障害をも切り裂き、灰すら残さないその剣で、軍の総員全てが斬り殺された。そこから課せられた化け物の二つ名は白炎だと」
「そいつってどうなったの?」
単純な疑問として氷楼に問いかける。
「知らん」
「そ、」
「幸い、白炎は死体すら残さなかった。死体が乗っ取られることはなかったが、魂喰霊は解き放たれた。人類が滅亡するのは時間の問題となる。また、それに追い打ちをかけるように、研究所から正体不明の霧が世界中に拡散された」
「霧?」
そういえば逃げているときに、霧が濃かったような気がすると、名無しは思い出す。
「ああ、正体不明の霧は瞬く間に広がり、それに触れた人を一、二時間ほどで気絶もしくは死亡させた。それが決定打となり、無防備な人間は魂喰霊によって殺され、今世界中には化け物が溢れかえっている」
名無しが思ったより、状況は厳しかった。
世界中に魂喰霊がいるのだとしたら、全て討伐するには数と範囲が大きすぎるからだ。
「まぁそこまで気負いしなくてもいい。この状況を打破する目星はついてる」
「そうなの!?」
「知り合いに信用できるか怪しいが、研究所に詳しい奴が一人いる。そいつから魂喰霊の出現は、異世界のゲートに由来していることが分かった」
「ゲート?」
「魔導科学というものは知っているだろう」
名無しが生まれる少し前、新たなエネルギー源になる物質、魔素が見つかって、産業革命が起きた。
今では当たり前のように発電や一部通信などに使われている。
「ゲートは魔導科学の最高峰の研究。セルトンネアス研究所で開発されたそれは、異世界とつながりを持つことに成功したらしくてな。その結果、異世界側から魂喰霊が来たらしい」
「そうなんだ。じゃあ、ゲートをどうにかすれば全て解決する?ん……?解決しなくない?」
世界に散らばった魂喰霊は無数にいる。
全て倒すのは不可能に近い。
星のいたるところをしらみつぶしに探すのも、現実的ではないだろうと、名無しは考える。
「いや、そこに関しては俺が何とかしよう。お前らはゲートを破壊するか封じるか、どんな手段であれゲートの機能を停止させれば、全て解決する」
「何とかって、できるの?」
「約束通りならな。詳しいことは言えないが」
要領を得ない内容を言い表わす氷楼に疑念を抱くが、こんな状況で嘘をつく必要がないと名無しは判断し、ひとまず話を信じることにした。
「大体わかった。つまり私たちは魂喰霊を掻い潜り、セルトンネアス研究所に向かう。そして、ゲートを破壊する。そういうこと?」
「そうだ。これからお前には、第二拠点に行ってもらう。詳細は行ってから聞け。今は時間がない」
さきほどまで、悠長に話していた氷楼が急に話を切り、ベッドから立ち上がる。
扉のとなりぐらいにあるマイクに向かって歩きマイクとつながっている赤いボタンを押した。
「この放送を聞く全ての人員に告ぐ!2時間以内にこの第一拠点を捨て、第二拠点もしくは第三拠点へ向かえ!」
マイクに乗った氷楼の声は放送によって施設内に拡散された。
急な出来事に名無しは動揺し、唖然とする。
氷楼はマイクを切り、再びベッドへと座った。
「能力で未来が見えた。今言った通りだ。お前も誰かと行け」
そんな事言われても何が何だか、名無しには分からなかった。
(急にこの世界の事を教えられて、来たばっかの拠点を捨て、第二拠点に行くことになって、それに能力って?)
「ほら、行け。行かないと死ぬぞ」
命に関わるという言葉に、化け物の姿を思い出し、名無しの手が小刻みに震える。
鋭い目つきで睨む氷楼に、これ以上聞く勇気は名無しにはなかった。
「分かった」
分からないことだらけだ。疑問は山のようにある。だが、今は言われた通りにしたほうがいいだろうと、少女は考える。分からない事だらけなら、言われたことをやるのが良いはずだと。
氷楼は、部屋を後にする名無しに声をかける。
「また後でな」
その言葉に、名無しは胸がざわついた。
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