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後編

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身体が動かない。私は今なんというか感じたこともない感覚を味わっている。あと、周りの様子から、自分が小さくなったということも分かる。でも、さすがにこれ以上のことは分からない。ただ一つ言えるのは
(あかりちゃん、なんでそんな顔してるんだろう。)
あかりちゃんが絶句しているという問題だ。私は一体、何に変身してしまったのだろう。あかりちゃんはその後しばらく固まったのち、私にやさしく話しかけてきた。
「大丈夫です。私は絶対に味方ですから。」
ますます心配になってきた。そうこうしているうちにあかりちゃんは不思議な石のネックレスをぶら下げ、私に話しかける。
「香蓮さん、落ち着いて聞いてくださいね。あなたは今、その、殿方のアレになっています。」
一瞬、意味を理解できなかった。




「ある意味、先に試しておいて正解でしたね。杏理さんの前でこうなっていたことを考えると恐ろしいものがあります。」
(確かに、それはいくら何でも恥ずかしすぎるわね、今でさえ恥ずかしいのに)
あかりちゃんの持っている手鏡には今の私の体がはっきりと映っている。本物と見間違うかのような精巧に作られたディルドの姿が今の私だ。恥ずかしくてたまらない。あかりちゃんは私のそんな心を見透かしたかのように話を続ける。
「今は女同士だから大丈夫ですよー。」
(それでも十分恥ずかしいのだけど。)
それでも確かに、一緒にいてくれたのがこの子でよかった。なんというか、この子がいると安心するというか、心が落ち着くというか、物になった子だから、私の気持ちもよくわかっているのかな。
(それにしても、この子顔だけじゃなくてスタイルもいいのね。ウエストは引き締まってるし、それでいて胸も大きいし、ってあれ?この子を見ていると体が熱くなってくる。)
人の形をしていないにもかかわらず、私の視線に気づいたあかりちゃんがにやりと笑う。
「ああ、気になっちゃいますか?まぁ今は男性器ですもんね。」
(ううっ//恥ずかしいこといわないでっ)
そんな私の気持ちを知ってか知らずかあかりちゃんが服を脱ぎだす。同性が着替えてるだけ、それなのに、目が離せない(目がないけど)。体全体が熱を帯びていく。
一糸まとわぬ姿になったあかりちゃんは私の体を指でつつきだした。
(あうっ、あかりちゃ、そこ、びんかんだからぁ、やめ)
されるがままになりながらも、私の目線はあかりちゃんの胸から離れられない。あとなんというか、もどかしくなってきて、もういろいろと切ない。切ないよぉ。泣きたくなってきた。
だが、そんな私をあかりちゃんは優しく握りこむ。
「大丈夫ですよ。私がついてます。こわくないですよー。一緒に気持ちよくなりましょう。」
そんな彼女に、私は身をゆだねる覚悟をした。


あかりちゃんは今、私の体をなめてくれている。いわゆるフェラチオというやつだ。男にすると喜ばれると友達が言っていたが、今、女であるはずの私は全身を使ってそれを受けている。
そんな私は
(ああんっ、あかりちゃ、そこ、そこはだめぇ)
「ふふん。どうですか香蓮さん。私のテクも捨てたものではないでしょう。」
あかりちゃんは楽しそうだけど私としてはそれどころではない。体全体が異常なまでに感じるのだ。きもちいい、もどかしい、恥ずかしいが混ざり合って本当に訳が分からなくなってくる。ううっ。
(ああんっあかりちゃんっやだっ//やめてえっもう訳わからなくなっちゃうからアアッひぃううっ)
私は懇願するけれどあかりちゃんはいたずらっ子のような笑みを私に向けてきた。
「そうですよねぇ。物になっていじられると人間と全然違う感じがしてわけわかんなくなっちゃいますよねぇ。しかも香蓮さんの場合男性のおちんちんになっちゃってますからねえ」
(い、いわないで…)
いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「普通に物になるよりもよっぽど感じるんじゃないですか?えいっ」
(ヒャアア、だめ、そこ刺激しないでぇ//ひぃぃぃっ//も、もどかしいよおっ!)
あかりちゃんが裏筋をなぞるようにして触る。も、もうだめかも、泣きたい。
(ぐずっ、う、ううっ)
だが、そういうときの対処が完璧なのがあかりちゃんである。
「大丈夫ですよー香蓮さんは気持ちいいってだけ考えておけばいいんです。」
(で、でも)
「どうしてもいやならここでやめますけど、せっかくここまで準備頑張ったんだから最後までしたくないですか?」
(じ、準備?何の?)
「ここの、ですよ。」
あかりちゃんが股を開く。割れ目が見える。女同士なら何も感じないはずなのに・・・
(なんでっ、入りたいようっ、私女なのにっ)
「今はおちんちんですからね。さっきからいろいろやりましたけどやっぱりこれをやんないと。もどかしいんでしょう。いいですよ。香蓮さんになら。入りたいですか?」
(入りたいっ。だ、だめっ、入れて入れてっ!なんでえっ!だめっい、いやぁ//入りたいよぅ)
「ふふふ、本能と理性がけんかしてますね。」
あかりちゃんの言う通り、私の中の葛藤はすさまじいものがあった。気持ちよくなりたい、入りたい、だめっ、私は女っ!ああっでもいれたいよぉ。
私は必死で抵抗したけど
(あかりちゃんっ、はいりたいっ。いれてっ!)
それでもとうとうこう思ってしまった。




「よしよし、香蓮さん、かわいいですねえ。心なしか大きくなってびくびくしてるように見えますね。」
(い、言わないで…お願い…早く…)
そんな私の懇願に、
「香蓮さん」
チュッ

「うひゃあああ///」
あかりちゃんはキスで返してくれた。びっくりする私に間髪入れず、あかりちゃんは私をその秘所につっこんだ。





(ああああああっ、あったかいよう!)
「んっ、香蓮さんっ、いいっ!」
それは、一人遊びに見える、奇妙なレズプレイ。
お互いがお互いを味わい尽くしている。
(ダメっ!そんなにきつく締めあげないでっ、おかしくなるぅっ!)
「ああっ!香蓮さんっ、香蓮さんっ」
ぎゅうぎゅうと、朱莉ちゃんの中が私を締めあげる。
(こんなのおかしいのにっ!体がっ、あかりちゃんを求めてるっ、ああんっ!)
「香蓮さんっ、いいっですっ、香蓮さんが中にいてっ、いいですっ!アアンッ!」
お互いがお互いを快楽へいざない、そしてまた、快楽となって跳ね返る。
(ひゃあっ、締まるぅっ、ああん、あかりちゃん、らめえっ!)
「香蓮さんっ、気持ちよすぎっ、アアンッ!」
そして、

「イクっ、いきますっ、ああっ!」
(ふぁああああ!)
私はそこで、意識を手放した。











「杏理さんが香蓮さんを気に入る理由が分かりました。」
一息ついたのち、あかりちゃんがそういって口を開いた。
「同性でもかわいいって思いましたもん。見た目がきれい系なのに反応がすっごくかわいかったです。私もスイッチ入っちゃいました。」
「反応も何も、わたし、あれだったけどね。」
さすがに男性器になったとは自分の口からは言いづらい。
だが、あかりちゃんはそんなことはまったく気にしないようで。
「それでもですよ。反応が可愛くって、かわいい声たくさん聴いちゃいました。キュンキュン来ました。」
たしかにあかりちゃんの眼には容赦の文字がなかった。攻めるときはとことん攻める。これが本来の彼女なのかもしれない。
そう思って彼女を見ていると「どうかしましたか」と言われた。私はこの際、全部聞いてみることにした。

「うちのグループの方針なんです。攻めるときはしっかり攻めろって」
そういってあかりちゃんは楽しそうに話す。
レン君やあかりちゃんのところの魔法使いさんはとてもモテる上に女遊びもすごいらしい。けどその分面倒見もよくて後輩の男の子にもナンパのやり方を教えたりしているらしい。
「あの人の場合、時には自分が女に化けてナンパの練習をさせたりするんですよ。それでいて男友達からも嫌われないから、なんというか、すごい人です。レン君もあの人からいろいろ教わってるみたいで。」
説明だけではどんな人かいまいちわからないけどあかりちゃんが楽しそうに話しているところを見ると、どうやら相当なカリスマ性をお持ちの方のようだ。そしてレン君の行動もあかりちゃんのグループでは当たり前のこうどうだったと。杏理君が事件だ事件だと騒いでいたけどやっぱり大した問題じゃなかったわね。
暖かい紅茶を飲みながら、私は次の質問を振った。
「ねえ、あかりちゃんって好きな人いるの?」














「わかったっ!レン君とあかりちゃんは元カノだっ!それであの反応にも説明がつく。」
そう結論付けた僕は確認のため本人に聞いてみることにした。あかりちゃんはかれんさんと女子会中だ。レン君に聞こうとしたら悠里君に捕まった。
「そんなデリケートな問題をいきなり人に聞かないでください。セクハラになりますよ。」
と悠里君が訳の分からないことを言う。
正直言って、いま一番分からない彼に怒られるというのはどうも釈然としない。
「元はといえば君にも気になってたんだよ?あかりちゃんいじってなんでこんなにふつうなのさ。女の子の体まさぐったんだよ?なんでそんなにどうどうとしてるのさ?実は女慣れしてるの?」
と聞いてみた。
悠里君の回答は無慈悲なものだった。
「いや、まさぐったって洗濯機をいじっただけですよ?さすがにそれだけじゃどうもしませんって。それにレン君も居たし。別にそういう雰囲気ではなかったでしょ?」
悠里君の発言に僕はとても悲しくなった。洗濯機をいじっただけ。どこまで淡々と生きているんだ。中身が女の子ならもっとこうくるものがあるだろう!あとレン君もいて別に雰囲気がそうでもなかった?あの甘いムードに気づかないのか!ああっ、悠里君の感性の乏しさ、鈍感さが悲しい。無自覚ジゴロがこんなにめんどくさいものだとは!



そんな僕のもとに招待状が届くまで、あと1週間。
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