また、君と歩いていく

あめかわ しげる

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第3章『また、君と生きていく』

第1話「日々という、かけがえのないもの」

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ロサンゼルスの空は、今日も高かった。

映画の世界ツアーを終え、湊と私は再びこの街へ戻ってきた。

「ただいま。」

「……うん。“ふたりで”ただいま、だね。」

私たちは、前よりも少し静かに、でも深く、微笑み合った。



生活は、少しずつ日常を取り戻し始めた。

湊は次の作品の準備を始め、
私はカフェの仕事に戻りながら、
オンラインでの日本語レッスンのサポートを始めた。

「最近、英語より日本語を教えるほうが楽しくなってきたかも。」

ある日、そう言った私に、湊は笑って言った。

「それ、向いてるってことじゃん。」

「そうかな。」

「“先生”って呼ばれても違和感ない。」

「それはまだ慣れないな……。」

でも確かに、
ここで「自分だけの居場所」を少しずつ築いている実感があった。



ある週末。

ふたりで久しぶりに朝からベランダでのんびりしていた。

「この感じ、懐かしい。」

湊が、マグカップを片手に呟く。

「……時間が、止まってるみたいだね。」

「そうだね。」

でも私たちは知っている。
どれだけ穏やかな日々も、
永遠じゃないってことを。

だからこそ、いまこの瞬間が愛おしい。

湊が不意に言った。

「最近、君が幸せそうに笑うから、安心してる。」

「……うん、今はすごく幸せだよ。」

その言葉は、まっすぐで。
照れくさくて、でも真実だった。



夜。

湊が珍しくワインを片手に、真剣な顔をしていた。

「もし、いつか家を持つなら……どこがいい?」

「え?」

「いや、ふと思って。」

「まだそんな話、早くない?」

「いや、なんか……そろそろ“土台”を考える頃かなって。」

湊は、テーブルに肘をつきながら言った。

「ここが好きだけど、
いつか子どもができたら、
もっと自然が近い場所でもいいなって。」

“子ども”。

その単語が、ふわっと部屋の空気を変えた。

「……そうだね。」

私は笑った。
でもその胸の奥に、何かが小さく芽を出した気がした。

「そのときは、私ももっと強くなってなきゃ。」

「君はもう、十分強いよ。」

湊のその言葉に、また少し心があたたかくなった。



ベッドに入る直前。

湊が突然、私の手を握った。

「今が、ちゃんと幸せって言える日々を、大事にしような。」

「うん。」

「未来は、まだどうなるかわかんないけど……
ふたりで歩いていけば、きっと大丈夫だから。」

私は、そっと頷いた。

──そう、何があっても。
ふたりなら、乗り越えられる。

“生きていく”って、
きっと、そんなふうに思い続けることなんだと思う。
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