ヒキこもりニートが異世界に転生したら、夢のなかだと思ったまま暢気に暮らしはじめました。

たがみ狐子

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薬草の急騰? いまが稼ぎ時だ。え? 獰猛な人狼? ぼくそんなの知らないよ? 

初装備は背負い収穫カゴと白い軍手。

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 窓に降り注ぐ陽射しで目が覚めると、さっそく出かける準備をはじめる。脱いでいたスウェットのズボンをはいて、ネックレスと数珠を身に付け、水晶を持つ。
 昨日集めた薬草を売れば、今夜もここに泊まれるはずだ。
(宿のおじさん、俺は今夜もまたここに帰ってくるぜ!)
 カウンターのなかで欠伸をしているおじさんに心のなかでこっそり宣言して、宿を出た。

 今日は一日ヤナとヘナ摘みだ。薬草採集だってコツコツ繰り返しているうちに、充分戦闘装備を買うお金が貯まる。武具と武器の相場も調べておかないと。

「ほんとだったらさきに装備の相場を調べに行きたいけどね」
 リアルでゲームをするのとちがって、夢の中では寝るところと食べ物の心配がいることがわかった。お腹がすいたら冷蔵庫をあけて、眠くなったらお風呂に入って歯を磨いて二階のベッドにむかえばいいってわけにはいかないのだ。

「この夢では空腹で死んだりもするのかな?」
 首をかしげる。
「いくら最終的には目が覚めるっていっても、痛かったりヒモジイ思いをするのはいやだな」
 ぶつぶつ言いながら歩いていたぼくは、やっとたどり着いた飲食店の扉をあけた。
 

「はぁ~。朝から店で食事なんて、ぼくにはこれだけで大イベントだよ」
 わくわく気分でモーニングを食べ、お金があるうちに水筒を買ってお茶をつめ、昼用の弁当も買っておく。それから雑貨屋で
「コストパフォーマンスを重視!」
と、安くても丈夫そうな軍手と背負いカゴを選んでレジに持っていく。

「おい、にいちゃん。昨日の薬草は結局いくらで売れたんだ?」
 このお店は昨日薬草を売るため、何軒か店を巡ったときに一度来ている。薬草の買値はいまいちだったから売りはしなかったけども、いい感じの背負いカゴや農機具を安くで取り扱っていたので目をつけていた。

「2000です」
「え? 何て? もちっと大きな声で話してくれよ」
「2000ですっ」
「うわっ、今度はでかすぎるよっ」
 店主のおじさんが顔をしかめた。
「ここのところ、薬草は値上がりし続けているんだ。今日も薬草を摘みに行くなら、ぜひともウチに売ってくれ」
(えっ、だってここ薬草の買値安かったし……)
 
 ノーと口にすることは苦手だ。
「……う、うーん」
 俯いてオドオドしていると、店のおじさんがガハハと笑った。

「ははは、あんたはホント細かいね。ヤナ薬は今日ここで買ってくれるんだろ?」
 コクリと頷く。ヤナでできた化膿止めの薬はこの店がいちばん安かった。それに昨日おじさんは「試しに」と言って、ぼくの怪我した後頭部に薬をひと塗りしてくれている。
 それなのにヤナを売るときは、高く買ってくれるお店を選んだ。ぼくってなんて酷いヤツなんだっ! と思いはしたが、ゲームってそんなもんだしね。

「はい」
 ヤナでつくった薬は一瓶800バイツ。これもここが一番やすかった。
 昨日はすこしでも高くヤナを売りたかったので、ちがう店を利用したが、できることなら今日はこのおじさんのお店をつかってあげたい。

「わかりました。あと、例のくすりもちゃんと置いておいてくださいね」
 頭の怪我治っても、その部分が脱毛してはいけない。ぼくが昨日相談したら、おじさんはそういうときのための育毛剤があると教しえてくれたのだ。ひと塗りすれば一夜にしてふっさふさだという育毛剤は一瓶20000バイツ。昨日の宿に一週間は泊まれる価格だが……。
 
(現実で毛生え薬がそんな価格売られていたら、世界からハ●は消えるなぁ)
 でも手もとに200バイツしかないぼくには大金だ。

「ああ、信用が第一だからね。ちゃんと置いておくよ、まかせておいて」
 おじさんは張った胸を叩いてそう言った。

 
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