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リリーお姉さまが手掛けた小礼拝堂の祭壇画は聖なる川でのメシアの受洗をモチーフにしたもので、古典技法に則りながらも水色を基調とした明るい画面の中に奥行きを持たせた素晴らしい出来栄えだった。
記念ミサは管区司教により厳かに捧げられた。
この素晴らしい壁画は後世に残る文化遺産になるだろう、という司教様からの有難いお言葉を頂き私は自分が誉められているように誇らしく思った。
その後、司祭館の庭でパーティーが開かれ教会関係者や有力信者を中心に多くの人が集まった。
リリーお姉さまは名士といわれる方々から呼び止められてエドガーと共に挨拶回りに忙しい様子だったが、私は用意されたお料理やお菓子を楽しんだ。
供される料理は教会の婦人会で用意したもので、お母様も朝早くから準備に出掛けていた。
お菓子は各地の修道院のもので場所によってアップルパイが名物だったりクッキーが有名だったりと一般にも販売されている人気のものだった。
プロの職人が作るものとは一味違う素朴ながらも祈りを込めて丁寧に作られた尊い味がする。
今は新しい目標を見つけた私だが、一時は本気で修道院に入って祈りの生活をすることを考えていた。
私はあったかも知れない別の生き方に思いを馳せながらナッツ入りのクッキーを噛みしめた。
司教様はワインをたくさん召し上がって上機嫌だった。
私はご挨拶をしてメダイを祝別してもらえるようお願いした。
芸術の守護聖人でもあるルカのメダイは教会の売店で買った金メッキの安物だったが、これからも離れて暮らす姉をこのメダイに守ってもらいたくて。
ダンスが始まった。舞踏会のように形式ばったものではなく誰もが気軽に楽しめるフォークダンスの延長みたいなものだった。
私はアレクと楽しく踊った。
アレクは武術の達人だからか、
「ダンスって、あまりやったことないんだよ」
と言いながらも素晴らしいリズム感でステップを踏んで私をクルクル回した。
足を悪くする前から王子は私を放置していたのでダンスをする機会は今までほとんどなかったのだが、自由に動くようになった足で好きな男性と踊るダンスは最高に楽しかった。
その様子を見た両親は目に涙を溜めて何度も何度もしつこいくらいアレクにお礼を言って、更にお祖父様にもくれぐれも宜しくと繰り返してアレクを困らせていた。
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