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法事
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三連休明けの火曜日、モブ共はいつもの様にダラダラ雑談していた。
「だりぃ~。既に週末が待ち遠しいわ~」
「僕も~」
「三連休、何かあった?」
「僕、親にキャンプに連れていかれた」
「高校にもなって勘弁だな」
「そう?俺んちは父親が何やるのも面倒な人で家族で外出とかマジで無い家だから羨ましいけどな」
「嫌々ついて行ったんだけどさぁ~、行ったら行ったで結構楽しかったんだよね」
「バーベキューとかやんの?」
「父さんが燻製に凝っててさ、サーモンとかチーズとか燻製にした」
「美味そうじゃん」
「・・・いーなー・・・家族団らん」
「どしたの?」
「俺んとこ法事だったんよ」
「誰の?」
「俺の婆ちゃんのお兄さんの四十九日」
「大伯父ってやつ?」
「そうそう」
「まあ、面倒だよな。法事とか」
「坊さんが激怒してさ」
「は?坊さんが激怒?」
「耳慣れないワードだな」
「何したんだよ」
「俺じゃないよ」
俄然興味津々になるモブ共。
「その婆ちゃんの兄さんってのはさ、最初の奥さんが病死して、2番目の奥さんがいたんだけどその人にも先立たれたんだよね」
「気の毒だな」
「いるよな。縁が薄いっていうかさ」
「で、その婆ちゃんの兄さんは」
「大伯父な」
「うん。大伯父さん。
で、お葬式の時は白木で出来た位牌を使うんだけど、四十九日にちゃんとした位牌にしてお坊さんに魂入れ?かなんかそんな感じなことするらしいんだけど、大伯父さんは生前に自分で戒名を決めて位牌も用意していたらしいんだ」
「ふんふん」
「その位牌を見て坊さんが
『こんな巫山戯た位牌に魂入れなんか出来るか!!』
って怒って帰るって言い出してさ」
「・・・巫山戯た位牌・・」
「・・・ってどんなの?」
「妙にデカいんだよな。位牌が。
で、真ん中に自分の戒名が彫ってあって、両側に先妻と後妻の戒名が彫ってあんの」
「・・・両手に花?!」
「何回も結婚した人って天国でどうすんだろ?」
「・・・天国で修羅場・・」
「『どっちを選ぶの?』とか詰め寄られんだゼ」
「コワっ・・・」
「まあ、オレらは大丈夫だろ」
「1回できるかどうかもわからんしな」
話が大幅に脱線したところで、モブの一人が軌道修正する。
「で、坊さんどうなったの?」
「プンプン怒ってる坊さんを大伯父さんの子供たちが必死で宥めて引き止めてさ。
こっちはその間ずっと正座で足が痺れてるし、さっさとお経を済ませてくれよ~って苦行よ苦行」
「正座はキツイよな」
「そんでなんとか坊さんの機嫌をとってお経を上げてもらったんだけどさ」
「まだなんかあんの?」
「お経の途中で参列者が一人ずつ順番に前に出て、仏壇に線香を上げるのよ」
「へぇ~」
「で、僕の番になったんだけど足が痺れてて立ち上がれないんだよ」
ハハハと笑いが起こる。
「母ちゃんは『早くしなさい!』って睨んでくるしさ、やっとのことで立ち上がったんだけどよろけて尻餅着いたらさ・・・それが親戚で一番のコワモテのオッチャンの膝の上で・・」
ハハハハ。
「もう、恥ずかしいやら怖いやらでさ、『す、スミマセン・・』って真っ赤になって謝って、這うようにして仏壇に辿り着いてなんとか線香を上げたんだけど」
「まだなんかあんの?」
「次にそのコワモテのオッチャンが立ち上がったんだけど、オッチャンも足が痺れてたみたいでさ、トットットッ!ってよろけるように前方に走り出したかと思うと仏壇に向かってダイブしてさ。
坊さんをなぎ倒すように下敷きにして、坊さん灰だらけになっちゃって」
「・・・大惨事だな」
「真面目な坊さんだから最後までお経は上げてくれたんだけどさ、顔面蒼白で謝る大伯父さんの息子さんに
『罪を赦すのが仏の道ですから』
とか言ってんだけど、明らかに怒っててさ」
「そりゃそうだろう」
「そんで坊さんのオデコにはお供えしてあった御膳に盛られてたご飯がくっついてんだけどさぁ・・・誰も指摘できないの」
ハハハハ。
「そんで坊さん、忙しいので失礼します。って、会食にも参加してくださらなくて早々にお帰りになられたのよ」
「・・・聞いてるだけなら笑えるけど、その場にいたら悲惨だな」
「そうよ。もうね、その後みんなでお寿司とか食べたんだけど、シーンとしてお通夜みたいなの」
「四十九日なのにね」
「馬鹿な従兄弟が『ロウソクの火が燃え移らなくてラッキーでしたねぇ?』とか空気読めない発言するから余計に皆シーンとしちゃってさぁ。
帰りの車の中では母さんが
『アンタのせいで恥かいた』
って何度も言うし、地獄だったよ」
「そもそも四十九日って何?」
「死んで?からかお葬式からか知らんけど四十九日目ってことでしょ?」
「だからソレが何?四十九日で天国に着くの?」
お得意の検索をするモブ。
「なんか四十九日目に最後の審判があって、極楽浄土に行けるかどうか決まるって書いてある」
「・・・そんな大事な日だったんだ」
「大丈夫なのか?オマエの大伯父さん」
(つづく・・・かも)
「だりぃ~。既に週末が待ち遠しいわ~」
「僕も~」
「三連休、何かあった?」
「僕、親にキャンプに連れていかれた」
「高校にもなって勘弁だな」
「そう?俺んちは父親が何やるのも面倒な人で家族で外出とかマジで無い家だから羨ましいけどな」
「嫌々ついて行ったんだけどさぁ~、行ったら行ったで結構楽しかったんだよね」
「バーベキューとかやんの?」
「父さんが燻製に凝っててさ、サーモンとかチーズとか燻製にした」
「美味そうじゃん」
「・・・いーなー・・・家族団らん」
「どしたの?」
「俺んとこ法事だったんよ」
「誰の?」
「俺の婆ちゃんのお兄さんの四十九日」
「大伯父ってやつ?」
「そうそう」
「まあ、面倒だよな。法事とか」
「坊さんが激怒してさ」
「は?坊さんが激怒?」
「耳慣れないワードだな」
「何したんだよ」
「俺じゃないよ」
俄然興味津々になるモブ共。
「その婆ちゃんの兄さんってのはさ、最初の奥さんが病死して、2番目の奥さんがいたんだけどその人にも先立たれたんだよね」
「気の毒だな」
「いるよな。縁が薄いっていうかさ」
「で、その婆ちゃんの兄さんは」
「大伯父な」
「うん。大伯父さん。
で、お葬式の時は白木で出来た位牌を使うんだけど、四十九日にちゃんとした位牌にしてお坊さんに魂入れ?かなんかそんな感じなことするらしいんだけど、大伯父さんは生前に自分で戒名を決めて位牌も用意していたらしいんだ」
「ふんふん」
「その位牌を見て坊さんが
『こんな巫山戯た位牌に魂入れなんか出来るか!!』
って怒って帰るって言い出してさ」
「・・・巫山戯た位牌・・」
「・・・ってどんなの?」
「妙にデカいんだよな。位牌が。
で、真ん中に自分の戒名が彫ってあって、両側に先妻と後妻の戒名が彫ってあんの」
「・・・両手に花?!」
「何回も結婚した人って天国でどうすんだろ?」
「・・・天国で修羅場・・」
「『どっちを選ぶの?』とか詰め寄られんだゼ」
「コワっ・・・」
「まあ、オレらは大丈夫だろ」
「1回できるかどうかもわからんしな」
話が大幅に脱線したところで、モブの一人が軌道修正する。
「で、坊さんどうなったの?」
「プンプン怒ってる坊さんを大伯父さんの子供たちが必死で宥めて引き止めてさ。
こっちはその間ずっと正座で足が痺れてるし、さっさとお経を済ませてくれよ~って苦行よ苦行」
「正座はキツイよな」
「そんでなんとか坊さんの機嫌をとってお経を上げてもらったんだけどさ」
「まだなんかあんの?」
「お経の途中で参列者が一人ずつ順番に前に出て、仏壇に線香を上げるのよ」
「へぇ~」
「で、僕の番になったんだけど足が痺れてて立ち上がれないんだよ」
ハハハと笑いが起こる。
「母ちゃんは『早くしなさい!』って睨んでくるしさ、やっとのことで立ち上がったんだけどよろけて尻餅着いたらさ・・・それが親戚で一番のコワモテのオッチャンの膝の上で・・」
ハハハハ。
「もう、恥ずかしいやら怖いやらでさ、『す、スミマセン・・』って真っ赤になって謝って、這うようにして仏壇に辿り着いてなんとか線香を上げたんだけど」
「まだなんかあんの?」
「次にそのコワモテのオッチャンが立ち上がったんだけど、オッチャンも足が痺れてたみたいでさ、トットットッ!ってよろけるように前方に走り出したかと思うと仏壇に向かってダイブしてさ。
坊さんをなぎ倒すように下敷きにして、坊さん灰だらけになっちゃって」
「・・・大惨事だな」
「真面目な坊さんだから最後までお経は上げてくれたんだけどさ、顔面蒼白で謝る大伯父さんの息子さんに
『罪を赦すのが仏の道ですから』
とか言ってんだけど、明らかに怒っててさ」
「そりゃそうだろう」
「そんで坊さんのオデコにはお供えしてあった御膳に盛られてたご飯がくっついてんだけどさぁ・・・誰も指摘できないの」
ハハハハ。
「そんで坊さん、忙しいので失礼します。って、会食にも参加してくださらなくて早々にお帰りになられたのよ」
「・・・聞いてるだけなら笑えるけど、その場にいたら悲惨だな」
「そうよ。もうね、その後みんなでお寿司とか食べたんだけど、シーンとしてお通夜みたいなの」
「四十九日なのにね」
「馬鹿な従兄弟が『ロウソクの火が燃え移らなくてラッキーでしたねぇ?』とか空気読めない発言するから余計に皆シーンとしちゃってさぁ。
帰りの車の中では母さんが
『アンタのせいで恥かいた』
って何度も言うし、地獄だったよ」
「そもそも四十九日って何?」
「死んで?からかお葬式からか知らんけど四十九日目ってことでしょ?」
「だからソレが何?四十九日で天国に着くの?」
お得意の検索をするモブ。
「なんか四十九日目に最後の審判があって、極楽浄土に行けるかどうか決まるって書いてある」
「・・・そんな大事な日だったんだ」
「大丈夫なのか?オマエの大伯父さん」
(つづく・・・かも)
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