10 / 40
10 帰宅時に灯りが点いてると嬉しい
しおりを挟むラウラは急いで簡単に身支度を整えるとおそるおそる少年に声をかけた。
「ねえ、起きて」
起きる気配がないので遠慮がちに揺り起こす。
うーん、と目を擦って起き上がった少年は寝顔も美しかったが、寝ぼけ眼で朝日に眩しそうに目を細める姿は色っぽくてドキッとした。
「あ、キレイなお姉さん おはよう」
「・・・えっと・・・あなたは・・・その・・・」
少年はまだ頭がボンヤリしているのか何も言わない。
「えっと。私、酔っ払ってたみたいで何も覚えてないの。・・・あなたダレ?」
「僕はニコ。本当はニコラウスだけどニコって呼ばれてる。
キレイなお姉さんは?」
「あ、ごめんなさい。私はラウラ」
「ラウラさん。お姉さんにピッタリのステキな名前だね」
長い睫毛に縁取られた澄んだ目でじっと見つめてくる。
まだ少年っぽい細身のしなやかそうな体だけど筋肉がしっかり浮き出ていて白い肌はピッチピッチだ。
「あ、あの・・・服、着てくれるかな」
ニコは自分の格好に気付いて脱ぎ捨てた衣服を拾ってごそごそシャツに腕を通している。
「あ、あのさ・・・なんていうか私達・・・ていうか、ニコ君は何歳?」
「16だよ」
16か。ギリギリ成人。とりあえずセーフ!
「えっと。なんていうか、なにかしちゃったのかしら、私達」
「なにかって?」
ニコはキョトンと首をかしげている。
「だから、その・・・男女の・・・」
「お姉さんがボクを買ったんだよ」
「!!買った?」
「だけどお姉さんベッドに入ったらグーグー鼾かいて寝ちゃってさ、ボクお金もらってないから待ってたんだけどボクも疲れてたし、気がついたら寝ちゃってた」
「・・・・」
「やっぱ、何もサービスしてないのにお金だけ貰うってできないよね?
それとも今からサービスしようか?」
「ちょっと待って!ごめんなさい。私、本当になんにも覚えてないのよ」
ニコは家出少年だった。
俳優を目指して田舎から出てきたが、頼れる知り合いもいないし仕事も見つからない。
所持金が尽きていよいよ物乞いになるしかないかと思案していたところ、
「親切なオバサンがご飯食べさせてくれて、家に来たらお小遣いもくれるっていうからホイホイついていったら、体を売れって言われて。
必死で走って路地裏に逃げ込んだらラウラさんに会ったんだよ」
「それで?聞くのは物凄く怖いんだけど、私はどうしたのかしら?」
「ラウラさんが千鳥足で近づいて来て、
『ウツボカズラの中の汁を飲んだことはあるか?』って」
「・・・・」
「ないです。って答えたら、常識にとらわれるな!限界を自分で決めるな!
慣習の外側に出る勇気の有る者にこそ自由はあるのだ!って」
「・・・ウツボカズラの汁を飲むと自由になれるのかしら・・」
「でもね、ボクは限界感じてたし田舎に戻るお金さえなくて、夢なんか見てバカだったのかなってうちひしがれていたから、ラウラさんの言葉にスゴく元気づけられて、それで
『僕を買ってくれませんか』
って言ったんだ」
「・・・で?」
「ラウラさんは
『よしきた!ついて来い』 って」
ラウラは頭を抱えた。頭痛は酷くなる一方だ。
「・・・・ホンっとにゴメン。
私、昨夜飲み過ぎて調子に乗ってたんだと思う。
ところで ニコ君は行くとこあるの?」
「ない」
「じゃ、とりあえず私は仕事にいかなきゃいけないから話は夕方ね」
ラウラはカリスに渡されていた2本の鍵のうちの一本とご飯代を渡して、
「いい?出入りする時は絶対に他人に見られないでよ」
と念を押した。
最悪のコンディションの中どうにかその日の業務を終わらせたラウラは家路を急いだ。
ニコは悪い子には見えなかったけど下手すりゃ部屋から換金できそうなものを根こそぎ持ってトンズラしているかも知れない。
そう思ってアパートの部屋につくと、中から良い匂いが漂ってくる。
「ただいま~」
するとエプロン姿のニコが
「ラウラさん お帰り~」
と笑顔で出迎えてくれた。
めちゃくちゃ可愛い。
「その辺にあった食材 勝手に使っちゃた」
テヘっと笑う顔が、めちゃくちゃ可愛い。
ニコが作ってくれたシチューと卵料理を食べる。
料理上手男子なんてハイスコア進呈。
疲れて仕事から帰ってきたら美少年がエプロン姿でお出迎えって、天国か。
ラウラとニコは出逢ったばかりとは思えないくらい自然に打ち解け合った。
会話も弾んで楽しい夕食だった。
「夕食が済んだら会わせたい人がいるの」
しばらくニコの面倒を見るにしてもカリスに話を通しておくべきだろうと、ラウラはニコをpanicに連れて行くことにした。
195
あなたにおすすめの小説
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる