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9 ラウラご乱心
しおりを挟むじゃあ、とラウラが歩き出すと後ろからランディーがついてくる。
「なんでついてくるの?」
「オレもカリスの店に行く」
「なんでよ!」
「だって、酒飲んだ女が一人で帰ったら危ないじゃないか」
「カリスの家に泊めてもらうからご心配なく!」
ラウラはシッ!シッ!と言いながらランディーを手で払った。
「ヒドイよ。他人を犬みたいにさ」
結局ランディーはpanicまでついてきてしまった。
カリスはランディーを見るなり、
「アンタは出禁~」
とヘラヘラ笑った。
「なんでだよ!オレたち友達だろ?」
仕方ないので一杯だけ飲んだら帰ることを条件に店内に入れてやる。
ラウラがいつものカウンター席に座るとしれっと隣に座ろうとするランディー。
「ちょっと!離れて座ってよ」
1つ隣にずれる。
「もっと!」
もう1つ隣にずれる。
「もっと!」
もう1つずれる。
「もっと!」
「壁だよ!!」
ランディーは3つ間を空けた席でウイスキーを減らないようにチビチビと舐めながら、ラウラとカリスの話に聞き耳を立てていた。
「カリスはライアン様とはどうするの?」
ライアンはカリスの彼氏だ。
ラウラがpanicに頻繁に顔を出すようになってから何回となく顔を合わせている。
「どうもしないわよ」
「結婚は?」
「今のところは考えてないかな~」
ライアンは政治評論家だかをやっているちょっと神経質そうな渋めのイケメンだ。
彼にも別れた奥さんとの間に息子がいるらしい。
「カリスには子供がいるから孤独死は免れそうだもんね。
結婚に縛られずにお互い自由に恋愛するってのもアリだわね」
「結婚してた時はさ、ダンナの顔色伺って言いなりになって我慢して我慢して。
挙げ句の果てに浮気されて。あっちの女に男の子が生まれたから別れてくれ、とかさ」
「ますます結婚への夢も希望もなくなるわ」
「まだ諦めてないの?」
「ヒド~イ。
だけど、まあ、絶対この人って相手が現れるんじゃなきゃ、もう結婚できなくてもいいや」
「まあ、自立して生活の糧を得て、フィーリングの合う男と遊ぶってのが最高かもよ」
「じゃ、老後は婆さん二人で共同生活してくれる?」
「えー!そんな枯れた生活はイヤよ。
私は金持ち婆さんになって、老後は若い男の子達を侍らして暮らすの」
「じゃあ私は宝くじが当たったら月曜の男から土曜の男までタイプの違うイケメンを雇おうかな~。日替わり愛人」
「日曜はどうすんのよ?」
「日曜日はホーリーデイじゃない」
「なんと罪深い!ハッハッハッ」
二人で盛り上がっていると、
「カリスはラウラに悪影響だ!」
突然ランディーが割って入った。
「なによ~アンタまだいたの?」
「飲み終わったら帰りなさいよ」
「なんだよ、まだ残ってんだろうー!」
粘ろうとするランディーはカリスに摘まみ出される寸前まで、ラウラに送って行くから一緒に帰ろうなどと騒いでいた。
「なにアイツ。もしかしてラウラのこと好きなんじゃないの?」
「ヤメテよ気持ち悪い」
その日は週の始めだったので客は少なく、ラウラとカリスは他の常連客とワーワー騒いで楽しく飲んだ。
明日も仕事だからいい加減帰らなければと立ち上がったラウラの足元はフラついていたが、
「送って行こうか」
というカリスに大丈夫だと元気に答える声は上機嫌だった。
翌日ガンガン痛む頭を抱えて目を覚ますと、下着姿の自分の隣にパンツ一丁の美少年が寝ていた。
ガバッと起き上がって辺りを見回すも見慣れた自分の部屋に違いない。
恐る恐る首をベッドに向けると、やはり見覚えのない美少年が熟睡している。
夢じゃない・・・。
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