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大運動会
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王宮では毎年職員達のレクリエーションを兼ねて運動会が開催される。
ゆるい感じの運動会なのだが、各競技の優勝者はご褒美が貰えたりするので、参加者はそれなりに真剣に勝負に挑む。
特に花形なのは騎士の模擬戦で、武術に長け見目も麗しいスター騎士達の試合には若い女の子達が鈴なりで黄色い声援を贈る。
迷惑なことにエドワードは何にでも出場したがるので、エドワードと同じ組で競争をさせられる羽目に陥った者たちは自然と忖度することとなり、『接待運動会』をしなければならず、せっかくのレクリエーションが台無しとなった。
エドワードは『徒競走』と『玉転がし』で1位となり商品の鉛筆と消しゴムをもらってホクホクしていた。
子供か。
『パン食い競走』ではスタートダッシュでいち早くパンの竿に辿りついたエドワードが全部のパンを一口ずつ食い荒らした。
「俺の好きなアンパンが無い!!」
「オイ!急いでアンパンを付けるんだ!!陛下が御所望だぞ!」
「何をやってるんですかっ!!
皆が楽しむための運動会をアナタが目茶苦茶にしてどうするんですかっ!!」
王妃の雷が落ちてシュンとするエドワード。
ヴィクトリアに促されて他の走者たちは遠慮がちにゴールに向かう。
「『ポケにゃん』のステッカーセットが欲しかったのにな~」
ヴィクトリアに叱られたエドワードは不貞腐れている。
子供か。
ランチタイムの前の午前の部を閉める『玉入れ競争』では、周りの人間が拾って渡してくるお手玉をエドワードが投げる、という殿様玉入れであった。
エドワードが投げた玉が入る度に
「ナイス、スローイン!!」
と周囲が拍手を送るので、エドワードのチームは負けてしまった。
その間いつもうるさいシャルたんはイケメン騎士に張り付いていて一向にエドワードとヴィクトリアの所には現れなかった。
競技場の外周には食べ物を出す屋台もたくさん出て、誰でも無料で好きな物を食べる事ができた。
城の職員達はそれぞれ家族や友人、恋人なんかを招いていて、若い職員の中には人目も憚らず食べ物を食べさせ合ったりイチャイチャ楽しそうにしている者達もいた。
エドワードはそれを羨ましそうに見ていた。
エドワードはチョコバナナを一本握りしめていそいそとヴィクトリアの側に来た。
「王妃、ハイあ~ん」
「・・・・・」
ヴィクトリアが嫌な虫でも見るような視線をエドワードに向けた。
「何のつもりですか?」
「え?」
「私がバナナが大キライってこともご存知ないんですね」
呆れたように言ったヴィクトリアの声に嫌悪に混じった幾分かの寂しさを感じ取ったエドワードはガックリと項垂れた。
「イカ焼きにすれば良かったかな・・・」
午後の部が始まった。
エドワードは借り物競走に出た。
スターターピストルと同時に飛び出したエドワードは借り物の書かれた紙を拾い上げる。
「王妃のハンカチ」
エドワードはヴィクトリアの元に走る。
「王妃、ハンカチ。ハンカチ貸して」
「嫌よ」
「ムムムッ!なんでだよっ!」
ヴィクトリアは白いレースのハンカチを取り出して、
ほーれほーれ、取れるもんなら取ってみろ~、とエドワードが取れないようにヒラヒラと振って挑発した。
「この勝負は絶対に勝たなくちゃいけないんだ!」
「大袈裟ね~」
「1位の賞品がペンギンのポーチなんだよぉ!!
どうしても欲しいんだよぉ!」
子供か。
するとエドワードはヴィクトリアをひょいと抱えるとハンカチごと走り出した。
ヤンヤヤンヤの大歓声の中、二人はゴールした。
エドワードは満足そうに1位の賞品のペンギンのポーチを受け取るとヴィクトリアに手渡した。
「?」
「・・・覚えてないか・・・。
まだ、子供の頃、城を抜け出して行ったお祭りで」
「・・・あー・・・」
射的の賞品にあったペンギンのポーチを10歳の頃のヴィクトリアは欲しがったのだ。
なんとしても取ってやりたかったエドワードはこっそり持ち出したお小遣いが尽きるまで射的に注ぎ込んだが、バネを緩く設定してある空気銃ではいくら的に当ててもペンギンのポーチを落とすことはできなかったのだ。
「・・・あ、・・・ありがとう」
ヴィクトリアは子供っぽいペンギンのポーチをそっと抱きしめた。
そんなちょっとしたハートウォーミングな出来事もありはしたが、勝負は勝負である。
本日のメインイベント、騎馬戦が控えていた。
騎馬戦は王様チームと王妃様チームに別れて互いのハチマキを奪い合うのだが、エドワードとヴィクトリアも騎乗して参加するのである。
王と王妃は一騎打ちで他の騎馬が近づいてはいけないことが暗黙の了解になっている。
両騎は間合いを取って対峙した。
ぐるぐると回りながら両者が睨みあっている。
するとヴィクトリアが先に手の形の物がついた棒を取り出した。
エドワードの隙をついてその棒をエドワードの頭に着ける、と次の瞬間一気に引き剥がした!
ベリッ!!
「痛っ!!」
ヴィクトリアの手元に戻った棒の先の手のひらからはエドワードの柔らかい金髪が数本たなびいている。
手の平様の棒の先にはトリモチが塗ってあるようだ。
両騎は再び互いの隙を突こうとぐるぐる回る。
するとまたヴィクトリアの棒が光の速さで伸びてきて、エドワードの髪を毟り取った。
痛ったーーーッ!!!
「きっ、貴様!さっきからわざとやってるだろう?!
ハ チ マ キ !
髪じゃなくてハチマキを取る競技なの!!」
高笑いするヴィクトリアの顔はまさしく魔女。
もう一度ヴィクトリアがエドワードに攻撃を仕掛けようとした時、ホイッスルが鳴った。
「反則!!
王妃様、反則です」
本日の戦い。
反則負け!反則負けで
エドワード王の勝利!!
ゆるい感じの運動会なのだが、各競技の優勝者はご褒美が貰えたりするので、参加者はそれなりに真剣に勝負に挑む。
特に花形なのは騎士の模擬戦で、武術に長け見目も麗しいスター騎士達の試合には若い女の子達が鈴なりで黄色い声援を贈る。
迷惑なことにエドワードは何にでも出場したがるので、エドワードと同じ組で競争をさせられる羽目に陥った者たちは自然と忖度することとなり、『接待運動会』をしなければならず、せっかくのレクリエーションが台無しとなった。
エドワードは『徒競走』と『玉転がし』で1位となり商品の鉛筆と消しゴムをもらってホクホクしていた。
子供か。
『パン食い競走』ではスタートダッシュでいち早くパンの竿に辿りついたエドワードが全部のパンを一口ずつ食い荒らした。
「俺の好きなアンパンが無い!!」
「オイ!急いでアンパンを付けるんだ!!陛下が御所望だぞ!」
「何をやってるんですかっ!!
皆が楽しむための運動会をアナタが目茶苦茶にしてどうするんですかっ!!」
王妃の雷が落ちてシュンとするエドワード。
ヴィクトリアに促されて他の走者たちは遠慮がちにゴールに向かう。
「『ポケにゃん』のステッカーセットが欲しかったのにな~」
ヴィクトリアに叱られたエドワードは不貞腐れている。
子供か。
ランチタイムの前の午前の部を閉める『玉入れ競争』では、周りの人間が拾って渡してくるお手玉をエドワードが投げる、という殿様玉入れであった。
エドワードが投げた玉が入る度に
「ナイス、スローイン!!」
と周囲が拍手を送るので、エドワードのチームは負けてしまった。
その間いつもうるさいシャルたんはイケメン騎士に張り付いていて一向にエドワードとヴィクトリアの所には現れなかった。
競技場の外周には食べ物を出す屋台もたくさん出て、誰でも無料で好きな物を食べる事ができた。
城の職員達はそれぞれ家族や友人、恋人なんかを招いていて、若い職員の中には人目も憚らず食べ物を食べさせ合ったりイチャイチャ楽しそうにしている者達もいた。
エドワードはそれを羨ましそうに見ていた。
エドワードはチョコバナナを一本握りしめていそいそとヴィクトリアの側に来た。
「王妃、ハイあ~ん」
「・・・・・」
ヴィクトリアが嫌な虫でも見るような視線をエドワードに向けた。
「何のつもりですか?」
「え?」
「私がバナナが大キライってこともご存知ないんですね」
呆れたように言ったヴィクトリアの声に嫌悪に混じった幾分かの寂しさを感じ取ったエドワードはガックリと項垂れた。
「イカ焼きにすれば良かったかな・・・」
午後の部が始まった。
エドワードは借り物競走に出た。
スターターピストルと同時に飛び出したエドワードは借り物の書かれた紙を拾い上げる。
「王妃のハンカチ」
エドワードはヴィクトリアの元に走る。
「王妃、ハンカチ。ハンカチ貸して」
「嫌よ」
「ムムムッ!なんでだよっ!」
ヴィクトリアは白いレースのハンカチを取り出して、
ほーれほーれ、取れるもんなら取ってみろ~、とエドワードが取れないようにヒラヒラと振って挑発した。
「この勝負は絶対に勝たなくちゃいけないんだ!」
「大袈裟ね~」
「1位の賞品がペンギンのポーチなんだよぉ!!
どうしても欲しいんだよぉ!」
子供か。
するとエドワードはヴィクトリアをひょいと抱えるとハンカチごと走り出した。
ヤンヤヤンヤの大歓声の中、二人はゴールした。
エドワードは満足そうに1位の賞品のペンギンのポーチを受け取るとヴィクトリアに手渡した。
「?」
「・・・覚えてないか・・・。
まだ、子供の頃、城を抜け出して行ったお祭りで」
「・・・あー・・・」
射的の賞品にあったペンギンのポーチを10歳の頃のヴィクトリアは欲しがったのだ。
なんとしても取ってやりたかったエドワードはこっそり持ち出したお小遣いが尽きるまで射的に注ぎ込んだが、バネを緩く設定してある空気銃ではいくら的に当ててもペンギンのポーチを落とすことはできなかったのだ。
「・・・あ、・・・ありがとう」
ヴィクトリアは子供っぽいペンギンのポーチをそっと抱きしめた。
そんなちょっとしたハートウォーミングな出来事もありはしたが、勝負は勝負である。
本日のメインイベント、騎馬戦が控えていた。
騎馬戦は王様チームと王妃様チームに別れて互いのハチマキを奪い合うのだが、エドワードとヴィクトリアも騎乗して参加するのである。
王と王妃は一騎打ちで他の騎馬が近づいてはいけないことが暗黙の了解になっている。
両騎は間合いを取って対峙した。
ぐるぐると回りながら両者が睨みあっている。
するとヴィクトリアが先に手の形の物がついた棒を取り出した。
エドワードの隙をついてその棒をエドワードの頭に着ける、と次の瞬間一気に引き剥がした!
ベリッ!!
「痛っ!!」
ヴィクトリアの手元に戻った棒の先の手のひらからはエドワードの柔らかい金髪が数本たなびいている。
手の平様の棒の先にはトリモチが塗ってあるようだ。
両騎は再び互いの隙を突こうとぐるぐる回る。
するとまたヴィクトリアの棒が光の速さで伸びてきて、エドワードの髪を毟り取った。
痛ったーーーッ!!!
「きっ、貴様!さっきからわざとやってるだろう?!
ハ チ マ キ !
髪じゃなくてハチマキを取る競技なの!!」
高笑いするヴィクトリアの顔はまさしく魔女。
もう一度ヴィクトリアがエドワードに攻撃を仕掛けようとした時、ホイッスルが鳴った。
「反則!!
王妃様、反則です」
本日の戦い。
反則負け!反則負けで
エドワード王の勝利!!
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