【旧作】最強をめざす少年は、剣聖の夜の相手だってしてみせる

市川

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 荒れ野のど真ん中で、ジェドはチームから脱退した。

 この荒野は奥へ行くほど魔物が強くなる場所で、一流の冒険者になるための登竜門として知られている。
 ジェドは己の力量でどこまで進めるか試したくなり、急ごしらえの初挑戦チームに加わっていた。けれども気合十分で臨んだジェドに対し、仲間たちは和気あいあいとした和やかな雰囲気で、つい「やる気あんのか」などと暴言を吐いたあげく、連携を乱して追い出されてしまったのだった。

 つやのあるジェドの黒髪は、いまや舞い散る砂埃ですすけてしまっている。
 周囲には単独では手に負えない魔物がうろついており、すぐにでも町に引き返さないと危険な状態だ。慎重に猫のような足取りで進んでいたけれど、まもなく腰丈ほどの小さなドラゴンの群れと目が合い、数匹倒したあとに囲まれた。

 つつかれ、引っかかれ、なぶられていく一方だったとき。突然、後ろから風が吹いてきた。
 金髪の男が飛び出してきて、ドラゴンたちに向けて横一線に長剣を振るっていく。するとドラゴンたちは血しぶきを散らして、ドミノ倒しのように倒れていった。
 それは、まさに神業だった。
 男は青い瞳を向けながら、金髪を風になびかせて朗々と笑った。

「おまえ、自分の実力わかってねえだろ。一人で来るなんてよ」

 その瞬間、ジェドは脊髄反射のように反発心を持った。「知ったかぶりやがって、一人で来たんじゃなく置いてかれたんだよ」などと思う。けれどここで身捨てられたら死ぬと解ってしまう。
 礼を言わないと――と口を開いたとき、チマチマと傷だらけになっているドラゴンを見やって、男が続けた。

「まあ、三匹倒したんだろ? 上出来だな。仲間にしてやろうか」
「え?」

 困惑を浮かべると、男は人受けしそうな笑顔で述べる。

「俺はローリーっていうんだ。よろしくな?」
「ローリーって……、まさか……あの!?」

 ジェドは目を見開いた。
 希代の剣士・<剣聖>として国中に名をはせている男の名だ。
 まじまじと見ると、精悍さと軽そうな雰囲気が混ざっており、遊び人だという情報も思い出した。
 ローリーは仰々しい動作で頷いてくる。

「そう、<剣聖>ローリー様とは俺のことだ。吟遊詩人の物語なら本当だぜ。クラーケン討伐に、ダークスパイダーの一万匹の討伐、ほかにもまだまだ……」

 自慢げに話す男を見つめながら、ジェドの鼓動は次第にトクトクと高鳴っていた。
 ローリーには仲間がいなかったはずだ。きっと雑用を任されるのだろうけれど、最強の剣士になることがジェドの目標で、この男といれば間違いなく目標に近づくだろう。

「入れてくれ、雑用だって何だってする……!」

 眼に力をこめて言うと、ローリーは片側の口角を上げ、「おう、歓迎するぜ」と答えた。





 町に入ると、子供たちが「ローリーだ! 握手してくれ!」とねだってきたり、女性たちが「ローリー様よ」とうっとりした声を上げたりする。ローリーはそのどれもに「どーもどーも」と愛想よく応えている。
 そして、酒場で早めの夕食を済ませたあとだった。

「ジェド、宿に行くぞ」と言われ、宿に入った途端に、肩を押されてベッドに押し倒されていた。

「……は?」

 目を丸くしていると、ローリーはぺろりと上唇を舐めた。

「まー仲間にしてやるわけだけど、おまえのメインの仕事はこっちだから」
「え」
「いいだろ? 男社会じゃたまにある話だし」

 唖然としつつ、ジェドはぐるぐると思考をめぐらせた。もしかしたら自分の腕が少しはお眼鏡にかなったのかも……なんて甘いことを頭のすみで考えていたのだ。

 ローリーは「おまえかなりタイプなんだよねぇ」と呑気に語っており、全く悪びれていない。
 もともとこの男が節操なしの遊び人だという噂は知っていた。
 それに、雑用係の少年が性処理係にされるなんていう話も、一応耳にしたことはある。

 そして汗をかきつつ、何を差し置いても――とジェドは考えた。こんな剣士に付いて行けるチャンスなんて普通は巡り合えないのだ。

「か……構わねえ……」

 少し震えた声で答えると、ローリーは悪戯っぽく目を細めた。

「決まりだな」

 言いながら手を伸ばしてきて、ジェドのガチガチに強ばった体を愛撫していった。

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