悪役令嬢だったらどうしましょう？！

はじまり

7. 前世の私はコミュ障でした

　前にも軽くさらっと書きましたが、思い出した記憶の中の私は、趣味にほとんどの時間を注ぎ込んでいました。ですが、軽くオタクが入っている程度です。重度のオタクになるほどの根性がなかったのです。どれもそこそこ。結局なにもかにも中途半端でした。
　極めようという意気込みもなければ、楽しみもなく、なんとなく流されるままに歳を重ねてしまったのです…。

　なんとモッタイナイことをしてしまったのでしょう！

　当然、人とも自分から積極的には関わらない。そんな感じでした。

　そして大きくなって思い知ったのです。コミュニケーションは訓練だ！と。
　え？そんなに遅く？？と言うなかれ。育ちきって思い知るまでは、それなりにソコソコやれていると思っていたのですよ。無意味に自己評価が高く、現実を知らなかったのです。

　だがしかし。面倒事は避ける、必要最低限で頑張る、という枷が外れた世界は、それはそれは厳しいものでした。趣味への現実逃避だけで乗り切るには、もうガリガリガリガリと、ありとあらゆるものが削り取られていく感じです。

　訓練の圧倒的に足りない新兵が、子供の頃からのたたき上げの熟練に対するようなものでした。そして私には立ち向かう気力がまず欠けていたのでした。

　足りない時間と根性。付け焼刃のありとあらゆるもの。
　あのような経験は二度としたくはないのです。

　そう、これからの私は違うのです！
　なんといってもまだ子供、時間はたっぷりあるのです。
　今から訓練を積んだ熟練のツワモノになって、完全装備で社交界という荒海をも制覇してみせるのです！いぇ、制覇しなくてよいですね。私がなりたいのは社交界を制圧する女帝ではないのです。
　社交界の荒海をも華麗に泳ぎ渡って、素敵な恋人を見つけ、理想の旦那様をゲットするのです！可憐な人魚姫のようですね。って人魚姫では悲恋じゃないですか？！

　コホン。
　とにかく！明るく可愛くみんなに愛されるリア充になるのです！
　って、なんだか転生乙女ゲーム小説の勘違いヒロインみたいですね。
　でも、私が勘違いヒロインと違うところは、なにもしなくても愛されるべき存在なのよ！と思っていないことと、この世界が乙女ゲームを舞台にした世界かどうかを知らないことです。

　うん、乙女ゲームも恋愛ゲームも未経験。
　そして周りにそれが大好きな知り合いもいなければ、はまっていて内容を誰彼かまわず吹聴するような知り合いもいなかったのでした。
　公式設定も裏設定も正解ルートもわからないまま、幸せ目指して突っ走るのです！

　みんなから愛される第一歩として、家族から愛されないといけません。ちょっと頑張ろうという程度の気持ちでは、前世と同じく簡単な方に流されてしまう可能性が高いのです。ライバルを得て張り合うより、味方と一緒に頑張りたいタイプの私は、家族からの溺愛＆シスコン希望なのです。

　そのためにはお兄様の心をつかむ第一歩として、お兄様と親しくなるのです！