嫌われ者のオメガ領主は今日も夫に片想い

おもちDX

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71.最終話



 冬特有の澄みきった空を見上げ、シェリールは「んんーっ」と伸びをした。最近は領内の視察もルイや部下に任せているから、身体が凝りがちだ。
 散歩に行こうと外に出ると、外で鍛錬していたルイが走ってくる。寒い季節なのに薄着だ。汗の浮かぶ肉体美に惑わされ、シェリールは少しよろけた。

「うっ、僕の夫が美しすぎる……! 心臓が持たないよぉ……」
「おいっシェリール、まっすぐ立ってくれ! 心臓が持たないのはこっちの方だ……。もう一人の身体じゃないんだから、ふらふらするな。散歩だな? 飲み物は持ったか。いい、荷物は俺が持つ。寒くないか? もう一枚重ねたほうが……」

 シェリールのおかしな言動に慣れたルイは、最近突っ込みも鋭い。さらには過保護にも磨きがかかって、シェリールは常に怒られ、それ以上に甘やかされている。
 その理由は、シェリールのお腹にいる。

「寒くないよ。でも、手を繋いでくれる? ルイの手はあったかいから」
「ああ」

 シェリールが伸ばした手はすぐに取られ、指を絡めて繋がれる。今やルイの体温は、シェリールを落ち着かせる材料にもなる。

 親指で手の甲を撫でられると、くすぐったさが甘く全身を駆け抜けた。隣を見上げると、柔くルイが微笑む。
 自然な笑みが完璧すぎる美貌と相まってシェリールを直撃する。落ち着くどころか心臓がスキップを始めてしまった。

(あああああっ、来世も推します!!!)

 かあっと熱を持った頬を誤魔化しながら、シェリールはルイの手を引いて歩き出した。途中で出会った領民がにこにことして、「今日も仲が良いですね」と声を掛けてくる。

 そういえばミュンジング王国では先日、反乱が起こったらしい。
 シェリールの噂に勇気を貰ったオメガたちが主導となって、腐敗したミュンジング王政は自滅に追い込まれた。ハルシュタット王国は混乱を収めるために介入し、事実上ミュンジング王国を統合することとなった。

 のどかなブランディーユ領を治めているシェリールは、自分がまさか隣国にまで影響を与えていることなんて知りもせず、今日も夫を推して愛している。





――――――――――





最後までお読みいただきありがとうございました!
感想 38

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みんなの感想(38件)

ひつじさん
2026.04.07 ひつじさん
ネタバレ含む
解除
みかん
2026.04.01 みかん

完結おめでとうございます、そして素敵なお話を、ありがとうございました😂シェリールとルイ末永くお幸せに〰です🎉

2026.04.02 おもちDX

みかんさん最後までありがとうございました!
この二人の未来はまだまだ続きます🥰
幸せな想像をしていただければ幸いです✨

解除
とこ
2026.04.01 とこ
ネタバレ含む
2026.04.02 おもちDX

とこさん応援たくさんありがとうございました!
ラストは幸せいっぱいの未来を垣間見ていただきました🥹🩷
シェリールにとってルイはずっと推しですが、これからは家族として支え合って生きていけるはずです。ルイはどんどん過保護が加速しそう😂✨
楽しんでいただけて光栄です!

解除

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