抱かれたい男No.1だけど抱かれたい

おもちDX

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 ドラゴンは他の魔物よりも賢い。イーリスをどこかに叩きつけるか、上空から落として仕留めるつもりなのだろう。そのどちらであっても自分は生きていられない。
 ここから攻撃しても振り落とされる可能性がある。

 必死で考えていると、近くにあった比較的高い建物の屋上にポイッとイーリスは投げ落とされた。ぎりぎり受け身を取れる高さで、ごろごろと転がったがなんとかミンチにならずに着地する。

(なんだ? 殺すことが目的じゃないのか!?)

 ドラゴンは再び口を開けてイーリスを狙ってくる。今度はブレスの発動を感じ、魔法で炎の槍を突っ込むことで強制的にキャンセルさせた。

「グガァッ、グァァッ!」
「お前、もしかして……食いたいのか?」

 目印が魔物にどんな影響を与えているかまでは考えが及んでいなかった。
 だがこれまでの行動を顧みると、純粋な殺意だけでは説明がつかない。むしろ、とびきりのご馳走だと思われている方が納得できる。

(なるほど……だけど食われるわけにもいかねぇ)

 どちらにせよ死の危険が迫っている。だがイーリスは今や全身の神経が張りつめ、最大限に集中力が高まっているのを感じていた。



 「<煉獄の業火パーガトリー・フレイム>」

 イーリスが呪文を呟くと、ふっと身体から力が抜けるのを感じた。魔力切れだ。もうどんな小さな魔法さえ使えそうにない。

 目の前では青の業火で体表を黒くしたドラゴンが瀕死の状態で横たわっている。あとは息の根を止めるだけだが、その目に理知的な光を感じイーリスは切なくなった。

「なあ、お前、どこから来たんだ? こんな目印でおびき出されないでいたら、生まれた場所で悠々と飛べたかもしれないのになあ……」
「グォ……」
「……悪いな。次は違う場所で、愛される生き物として生まれて来いよ」

 そう言って、イーリスはひと太刀でドラゴンの首を落とした。ドン、と落ちた傍から粒子になって消えていく様子は輝いていて、まるで氷の結晶のようだった。

「……クヴェル、無事でいてくれっ」

 ひと抱えもある魔石を持って屋上から階段を駆け下りる。クヴェルもあの時点で、瀕死といって差し支えない状態だったのだ。放っておけば静かに息を引き取りそうな。
 ……最悪の想像に、イーリスは小さく首を振った。イーリス然り、クヴェルも丈夫な身体を持っている。そう簡単に死んだりしない。そうであってほしい。

「イーリスだ! イーリスが来たぞ! 魔石を持ってる、本当に勝ったんだ!!」
「猛火のイーリス、万歳!」

 元いた広場からはそれほど離れていなかったようだ。イーリスが駆け足で戻ると歓声を上げて出迎えられる。
 しかしイーリスの目はたった一人を探していた。すぐに真剣な表情のビアと目が合い、「こっちだ!」と誘導された。

「イーリスがスノードラゴンを引き離した直後に、副団長が団長を運び出したんだ。もう神殿についてると思う」
「そうか……!」
「俺はここでまだ仕事がある。この馬使っていいから、急いで行ってこいよ」
「ありがとう、ビア!」

 騎士たちがここへ来るときに乗ってきた馬は、ドラゴンを怖がるため少し離れた場所に繋がれていた。イーリスはビアに感謝して馬に跨った。
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