抱かれたい男No.1だけど抱かれたい

おもちDX

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48.愛してる

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 エッセンに運ばれてクヴェルがもう神殿に到着しているなら、治癒してもらって元気になっているかもしれない。
 先日怪我した騎士を運んで行ったとき、初めて神官が光魔法を使うのを見た。魔物に引っかかれて流血していた場所に魔法の光が集まったのち、傷口さえ残らないことには驚いた。

 クヴェルほど大怪我だったらどうなるのだろう。今は命さえ助かってくれれば……と思うが、欠損も治ったりするのだろうか。イーリスは神殿の事情についてほとんど知らない。

 逸る気持ちを抑えつつ、二度目の神殿へと到着した。白い石柱に支えられている神殿は、夜でもかがり火に照らされて輝いている。
 しかし建物の中に入ると、前回とは全く違った様相だった。

「ッ……これは」

 中央奥の祈りの間へ続く廊下も、治癒のために使われる左右の施術室の前の廊下も、人で埋め尽くされている。先に運ばれてきた市民は治癒を終えたのか、残っているのは騎士ばかりに見えた。
 あちこちから呻き声が聞こえ、付添い人の励ます声が重なる。血の匂いが濃厚だった。

(クソッ……当然だ。怪我人は他にも大勢いる。街の医者もパンクしてるだろうな)

 イーリスは自分の予想が甘かったことを知った。一度は収まっていた焦りが加速度的に膨らんでいく。

「イーリス、こっちだ!」

 エッセンの声が聞こえた方に向かうと、かなり奥の方にいた。床を見下ろすと、生きているのか疑いたくなるほど血の気のない顔のクヴェルが横たわっている。
 まだ、なにも状況は変わっていない。

「クヴェル……! 大丈夫か? 痛いよな、苦しいよな? おれがなんとかするから……」

 床に膝をつき声を掛けるも、もう指先さえ動く気配がなかった。口元に顔を近づけると、ひゅう、ひゅうと弱々しい呼吸音がかろうじて聞こえる。
 この空間で一番重症なのは間違いなくクヴェルだ。ドラゴンに狙われていたせいで、来るのが遅くなってしまった。

「ここまで来ると大神官様にしか手が負えないんだ。でも大神官様はもう、今日の魔力は使い果たしてしまわれた」
「そんな! どうにかならないんですか!?」
「寄付が……寄付額によっては、もしかすると……」

(結局金かよ!!!)

 エッセンには家庭があるし、クヴェルにどれだけ資産があるのかもわからない。そもそも勝手に寄付の当てにするわけにもいかない。
 イーリスは立ち上がった。奥の祈りの間への扉を押し開ける。

「待てっ、勝手に入っちゃ駄目だろ!」

 止められたけど、そんなの知るか。
 イーリスの目には神官の衣装を着た白い男が映っていた。中央の祭壇前で、御神体に向かって静かに祈っている様子だったが、物音に気付いたのかイーリスを振り返った。

 彼が大神官だ、と直感が告げている。
 衣装は華美ではないが他の神官服よりも立派で、白く長い髪を背中に垂らしている。一見女にも見えそうなほど顔立ちは中性的で、美しかった。思ったよりも若く、背は高い。

「何用ですか?」
「瀕死の人がいる。貴方の力で、どうか助けてほしい」
「残念ながら、魔力は無限ではありません。今日はもう使い果たしてしまったのです」

 返事は分かっていたが、引く気もない。イーリスは床につきそうなほど深く頭を下げた。

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