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あっけなく上半身から服が抜き去られ、僕は意識を遠くへ飛ばすことに集中した。コートはどこで脱げたんだっけ……?
「おうおう、強がっちゃって、健気だなァ」
「いつまでその調子でいられるか、だな。ククッ、なぁ、先に喘がせた方が勝ちな」
「悲鳴も?」
「アリだ」
「おい、やりすぎるなよ」
ずっと黙っていた男が口を開いた。どこかおどおどとした声に、なんとなく聞き覚えがあることに驚く。どこかで、聞いた……?
「――いっ!」
「この薄ピンクが真っ赤になるまで可愛がってやるよ」
乳首を強くつねられ、鋭い痛みが走った。身体は本能的に手から逃れようとするが、目をギュッと閉じて耐える。
僕が大声を出さなかったことを不満に思ったのか、今度はグリグリと両手で摘んだまま刺激してくる。快感どころか、嫌悪感しかない。
もう一人が「まぁ、やっぱオメガはこっちだろ」と言いながら僕のズボンと下着を引き抜いた。ヒヤッとした外気が肌に触れて、ここには暖房もないことに気づく。
覚悟したはずなのに、全裸にされただけで途端に心もとない気持ちになった。遠慮なく脚を這う手に吐き気がする。
「うわ、たまんねぇ触り心地だぜ!なぁ、裏返せよ」
「うぇーい」
ごろんとうつ伏せにされ、尻を左右に開かれた。その手は躊躇なく後孔に触れ、ぐにぐにと押してくる。
いやだいやだいやだ!やっぱ無理。気持ち悪い。吐きそう……
四つの手が好き勝手に触ってくるが、痛いか、気持ち悪いかのどちらかだった。
どうにか思考を切り替えようとする。
……そうだ。リアンの手はいつも優しかった。僕を運んでくれるときは力強く、身体を洗ったり拭いたりしてくれるときは壊れ物に触れるみたいに優しい。ときには情熱的に熱い手が僕を導くこともあって、僕を夢中にさせる大きな手が、大好きだ。
目頭が熱くなる。うつ伏せにされていることを良いことに、数粒の涙が落ちることを自分に許した。
――カタン、
物音がして、男たちが入り口の方を振り向く気配がする。僕も思わず、首を横へ向けた。
「よぉ。メグム、複数の男に弄ばれて楽しそうじゃん?」
「チッ、早かったな……」
リアンのことを考えていたせいで、一瞬期待してしまった。そこにいたのはおそらく今回の暴行を依頼したアルファの……
――キリトだった。
「キリト、早く番にしてやってくれ」
「わぁーったよ。ちゃんと金寄越せよ?」
「番にしたらな。おいお前ら!さっさと発情の薬飲ませろ」
フードを被った男がキリトに話しかける。でも金を要求しているのはキリトの方?じゃあ依頼したのはそっちの男なの?フードの隙間から見える薄茶色の髪に、どうしても既視感があった。
僕が必死に考えていると、男が懐から液体の入った瓶を取り出した。目の前でお預けを食らったことに、つまらなそうな顔をしている。
発情促進薬は犯罪に使われる危険性があるため、医療用として厳重に管理されていると聞いたことがある。だからあれはきっと違法な薬だ。
どうなってしまうんだろう、僕は。キリトの番にされる?この世界に来た頃は心からそれを願っていたのに、いまは違う。
叶うなら……リアンの番になりたかった。
「やだ……助けて」
抵抗しないと決めていたものの、言葉が口から零れ落ちた。
――ガシャーン!
何かが割れたような、大きな音が聞こえた。
男たちはパッとドアの方を見つめ、僕の側にいた一番ガタイのいい一人が「見てくる」と言って玄関へ向かった。
僕は目を閉じる。勝手に期待して裏切られるのはもうまっぴらだ。
「おうおう、強がっちゃって、健気だなァ」
「いつまでその調子でいられるか、だな。ククッ、なぁ、先に喘がせた方が勝ちな」
「悲鳴も?」
「アリだ」
「おい、やりすぎるなよ」
ずっと黙っていた男が口を開いた。どこかおどおどとした声に、なんとなく聞き覚えがあることに驚く。どこかで、聞いた……?
「――いっ!」
「この薄ピンクが真っ赤になるまで可愛がってやるよ」
乳首を強くつねられ、鋭い痛みが走った。身体は本能的に手から逃れようとするが、目をギュッと閉じて耐える。
僕が大声を出さなかったことを不満に思ったのか、今度はグリグリと両手で摘んだまま刺激してくる。快感どころか、嫌悪感しかない。
もう一人が「まぁ、やっぱオメガはこっちだろ」と言いながら僕のズボンと下着を引き抜いた。ヒヤッとした外気が肌に触れて、ここには暖房もないことに気づく。
覚悟したはずなのに、全裸にされただけで途端に心もとない気持ちになった。遠慮なく脚を這う手に吐き気がする。
「うわ、たまんねぇ触り心地だぜ!なぁ、裏返せよ」
「うぇーい」
ごろんとうつ伏せにされ、尻を左右に開かれた。その手は躊躇なく後孔に触れ、ぐにぐにと押してくる。
いやだいやだいやだ!やっぱ無理。気持ち悪い。吐きそう……
四つの手が好き勝手に触ってくるが、痛いか、気持ち悪いかのどちらかだった。
どうにか思考を切り替えようとする。
……そうだ。リアンの手はいつも優しかった。僕を運んでくれるときは力強く、身体を洗ったり拭いたりしてくれるときは壊れ物に触れるみたいに優しい。ときには情熱的に熱い手が僕を導くこともあって、僕を夢中にさせる大きな手が、大好きだ。
目頭が熱くなる。うつ伏せにされていることを良いことに、数粒の涙が落ちることを自分に許した。
――カタン、
物音がして、男たちが入り口の方を振り向く気配がする。僕も思わず、首を横へ向けた。
「よぉ。メグム、複数の男に弄ばれて楽しそうじゃん?」
「チッ、早かったな……」
リアンのことを考えていたせいで、一瞬期待してしまった。そこにいたのはおそらく今回の暴行を依頼したアルファの……
――キリトだった。
「キリト、早く番にしてやってくれ」
「わぁーったよ。ちゃんと金寄越せよ?」
「番にしたらな。おいお前ら!さっさと発情の薬飲ませろ」
フードを被った男がキリトに話しかける。でも金を要求しているのはキリトの方?じゃあ依頼したのはそっちの男なの?フードの隙間から見える薄茶色の髪に、どうしても既視感があった。
僕が必死に考えていると、男が懐から液体の入った瓶を取り出した。目の前でお預けを食らったことに、つまらなそうな顔をしている。
発情促進薬は犯罪に使われる危険性があるため、医療用として厳重に管理されていると聞いたことがある。だからあれはきっと違法な薬だ。
どうなってしまうんだろう、僕は。キリトの番にされる?この世界に来た頃は心からそれを願っていたのに、いまは違う。
叶うなら……リアンの番になりたかった。
「やだ……助けて」
抵抗しないと決めていたものの、言葉が口から零れ落ちた。
――ガシャーン!
何かが割れたような、大きな音が聞こえた。
男たちはパッとドアの方を見つめ、僕の側にいた一番ガタイのいい一人が「見てくる」と言って玄関へ向かった。
僕は目を閉じる。勝手に期待して裏切られるのはもうまっぴらだ。
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