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震える手でケージに手をかけ、外側からロックを外す。人ひとりが入るにはあまりにも狭く、椿季に出てきてもらうしかない。「つばきっ」と声をかけるがぐったりしていて反応はなかった。
「もしかして、こいつの彼氏?言っとくけど、これ同意だから。こーゆー鬼畜プレイが好きなんだよこいつは」
「違う!!!」
不愉快な言葉に激昂し振り返ると、男はにやにやと楽しそうに嗤う。確かにプレイの程度は、好みによってさまざまだ。でも、椿季が決してこれを喜んでいないことはわかる。二年も一緒にいるのだから。
「横取りすんなよ、ひとの奴隷を」
男が傍にあった椅子を持ち上げ、振りかぶってくる。思わず背中にケージを守った。
――ガ、ッシャーン!
椅子はまるきり違う方向に飛び、テーブルにあったグラスを割った。僕が強いグレアを放つと、男は途端に腰を抜かしたのだ。その顔は血色をなくし青褪めている。
「の、ぶ……?」
小さな囁き声が聞こえて、ハッとする。振り向くと椿季が目を開けていた。ああ、椿季……!
「椿季、迎えにきたよ」
「ひっ!あ……喋ってごめんなさい……! お仕置きはやだ。痛いのやだ。許して……!」
ガクガクと震え出した椿季の目には、僕が映っていない。元彼がどんなことを彼に命じ、どんな風に扱っていたのか。すぐに助けに来られなかった悔しさに、奥歯を噛み締めた。
しかし事態は一刻を争う。恐慌状態に陥ったSubの行き着く先はサブドロップだ。堕ちてしまっては、また心に大きな傷を残す。
「椿季、〈こっち見て〉。そう……〈いい子〉、よくできたね」
簡単なコマンドと、威嚇とは違った優しいグレアを放つ。ぴくり、と指先が動く。
「〈ここまで出ておいで〉。迎えにきたよ、椿季。一緒に帰ろう」
椿季はゆっくりとだが、僕の言葉を理解してくれた。
よたよたと膝をついて出てきた身体を抱きしめる。僕の半身が戻ってきた。
「のぶ……こわかった」
「うん、うん……ごめんね。もう離さないからね」
「あのね、のぶだけだから……おれの、どむは」
安堵に目頭が熱くなる。――大丈夫。椿季はこう見えて弱くない。
擦り寄ってくる身体に自分の上着を着せ、抱き上げる。ケージの向こう、よく見える場所に椿季の財布とスマホがあった。
荷物を持ち部屋を出れば、大きなサイレンの音が聞こえる。
「警官の方、こっちです」
DomとSub間の事件は立件されにくいというが、あの部屋を見た警官にせいぜい取り調べを受ければいい。
元彼の不幸を切に願いながら、僕は救急車に乗り込んだ。
◇
「椿季、〈おすわり〉」
Subの基本姿勢を命令すると、椿季はつぶらな瞳をとろんとさせて床に腰を下ろした。ぺたんと膝を広げて座り、手を後ろにつく。
先日の誕生日に僕の贈ったカラー以外何も身につけていない今は、Kneelの姿勢で大事な場所が丸見えになる。その背中にはもう傷も痕も残っていないことを僕は知っていた。
「ん、かわいい。〈いいこだね〉」
「ふぁ……」
褒めて、ふわっと頭を撫でると心地よさそうに目を細めた。意識してグレアを強めれば、ぴくりとペニスが反応する。
かわいい。
「さてと、椿季。今日はなにしたい?」
「んーと、その……」
「正直に〈言って〉?」
「っ、舐めたい……」
どうぞ?と手を差し出すと、ソファに座った僕の膝のあいだに擦り寄ってくる。腿の上に小さな顎を乗せ見上げてくる顔に、腰の奥がズクンと疼いた。
椿季は目の前にあった僕の親指にちゅうっと吸いつく。舌の先でチロチロと爪の先を舐め、口腔内で甘く締め付けられる。
「おいしそうに舐めるね……」
「んん、……」
おしゃぶりのような可愛らしさと、口淫のような艶かしさ。悪戯に指の背で上顎をくすぐってやれば、「ぁんっ」と甘い声が漏れた。
丸い爪をした手が僕のチャックを下ろし、下着からペニスを取り出す。期待で膨らみかけたそれを、アイスキャンディーのように下から舐め上げる。
途端にグッと硬度を増してしまい、椿季は嬉々として舐めやすくなったものをぺろぺろと唾液で潤していく。
「ッ。〈上手だね〉椿季」
「えへへ、もっと?」
「いや、〈ご褒美〉をあげる。膝の上に乗ってごらん?」
「もう……?」
物足りないというより不安そうな顔で見上げてくる。僕はたまらない気持ちになって、脇の下を抱えて椿季を膝の上に乗せた。
抱き合う形で向かい合い、背中に回した手を尻の狭間に持っていく。びくっと一瞬逃げようとした腰は、僕の半身にぶつかってさらにビクンと跳ねた。
逃げ場がないのをいいことに、後孔へと指を埋めていく。準備でわずかに濡れた蕾は、柔らかく僕の指を受け入れる。
ローションを足しながら拡げていくと、甘やかな喘ぎが耳元で響いた。
「ん、ああっ。……のぶ、そこ……っ!」
「気持ちいいね。でも、〈まだイッちゃだめだよ〉?」
「……っ!?」
前立腺を擦ると腰が揺れ、互いの半身同士が擦れる。
中の収縮具合と蕩けた表情で、もう保たないだろうなと分かっていて僕は命令した。前と後ろ、同時に刺激された椿季はいつもあっという間に達してしまうのだ。
半開きになっていた唇を奪い、激しく舌を絡める。音を立てて少し強めに舌を吸うと、椿季はぎゅうっと雄膣で指を締め付けて……あっけなく達した。
「んう~~っ。っあ!~~~……っ!!」
ぴゅくぴゅくと吐き出された精液が僕の腹とペニスを汚していく。
かわいい。エロい。正直、見ているだけでこっちもイキそうだ。
「もしかして、こいつの彼氏?言っとくけど、これ同意だから。こーゆー鬼畜プレイが好きなんだよこいつは」
「違う!!!」
不愉快な言葉に激昂し振り返ると、男はにやにやと楽しそうに嗤う。確かにプレイの程度は、好みによってさまざまだ。でも、椿季が決してこれを喜んでいないことはわかる。二年も一緒にいるのだから。
「横取りすんなよ、ひとの奴隷を」
男が傍にあった椅子を持ち上げ、振りかぶってくる。思わず背中にケージを守った。
――ガ、ッシャーン!
椅子はまるきり違う方向に飛び、テーブルにあったグラスを割った。僕が強いグレアを放つと、男は途端に腰を抜かしたのだ。その顔は血色をなくし青褪めている。
「の、ぶ……?」
小さな囁き声が聞こえて、ハッとする。振り向くと椿季が目を開けていた。ああ、椿季……!
「椿季、迎えにきたよ」
「ひっ!あ……喋ってごめんなさい……! お仕置きはやだ。痛いのやだ。許して……!」
ガクガクと震え出した椿季の目には、僕が映っていない。元彼がどんなことを彼に命じ、どんな風に扱っていたのか。すぐに助けに来られなかった悔しさに、奥歯を噛み締めた。
しかし事態は一刻を争う。恐慌状態に陥ったSubの行き着く先はサブドロップだ。堕ちてしまっては、また心に大きな傷を残す。
「椿季、〈こっち見て〉。そう……〈いい子〉、よくできたね」
簡単なコマンドと、威嚇とは違った優しいグレアを放つ。ぴくり、と指先が動く。
「〈ここまで出ておいで〉。迎えにきたよ、椿季。一緒に帰ろう」
椿季はゆっくりとだが、僕の言葉を理解してくれた。
よたよたと膝をついて出てきた身体を抱きしめる。僕の半身が戻ってきた。
「のぶ……こわかった」
「うん、うん……ごめんね。もう離さないからね」
「あのね、のぶだけだから……おれの、どむは」
安堵に目頭が熱くなる。――大丈夫。椿季はこう見えて弱くない。
擦り寄ってくる身体に自分の上着を着せ、抱き上げる。ケージの向こう、よく見える場所に椿季の財布とスマホがあった。
荷物を持ち部屋を出れば、大きなサイレンの音が聞こえる。
「警官の方、こっちです」
DomとSub間の事件は立件されにくいというが、あの部屋を見た警官にせいぜい取り調べを受ければいい。
元彼の不幸を切に願いながら、僕は救急車に乗り込んだ。
◇
「椿季、〈おすわり〉」
Subの基本姿勢を命令すると、椿季はつぶらな瞳をとろんとさせて床に腰を下ろした。ぺたんと膝を広げて座り、手を後ろにつく。
先日の誕生日に僕の贈ったカラー以外何も身につけていない今は、Kneelの姿勢で大事な場所が丸見えになる。その背中にはもう傷も痕も残っていないことを僕は知っていた。
「ん、かわいい。〈いいこだね〉」
「ふぁ……」
褒めて、ふわっと頭を撫でると心地よさそうに目を細めた。意識してグレアを強めれば、ぴくりとペニスが反応する。
かわいい。
「さてと、椿季。今日はなにしたい?」
「んーと、その……」
「正直に〈言って〉?」
「っ、舐めたい……」
どうぞ?と手を差し出すと、ソファに座った僕の膝のあいだに擦り寄ってくる。腿の上に小さな顎を乗せ見上げてくる顔に、腰の奥がズクンと疼いた。
椿季は目の前にあった僕の親指にちゅうっと吸いつく。舌の先でチロチロと爪の先を舐め、口腔内で甘く締め付けられる。
「おいしそうに舐めるね……」
「んん、……」
おしゃぶりのような可愛らしさと、口淫のような艶かしさ。悪戯に指の背で上顎をくすぐってやれば、「ぁんっ」と甘い声が漏れた。
丸い爪をした手が僕のチャックを下ろし、下着からペニスを取り出す。期待で膨らみかけたそれを、アイスキャンディーのように下から舐め上げる。
途端にグッと硬度を増してしまい、椿季は嬉々として舐めやすくなったものをぺろぺろと唾液で潤していく。
「ッ。〈上手だね〉椿季」
「えへへ、もっと?」
「いや、〈ご褒美〉をあげる。膝の上に乗ってごらん?」
「もう……?」
物足りないというより不安そうな顔で見上げてくる。僕はたまらない気持ちになって、脇の下を抱えて椿季を膝の上に乗せた。
抱き合う形で向かい合い、背中に回した手を尻の狭間に持っていく。びくっと一瞬逃げようとした腰は、僕の半身にぶつかってさらにビクンと跳ねた。
逃げ場がないのをいいことに、後孔へと指を埋めていく。準備でわずかに濡れた蕾は、柔らかく僕の指を受け入れる。
ローションを足しながら拡げていくと、甘やかな喘ぎが耳元で響いた。
「ん、ああっ。……のぶ、そこ……っ!」
「気持ちいいね。でも、〈まだイッちゃだめだよ〉?」
「……っ!?」
前立腺を擦ると腰が揺れ、互いの半身同士が擦れる。
中の収縮具合と蕩けた表情で、もう保たないだろうなと分かっていて僕は命令した。前と後ろ、同時に刺激された椿季はいつもあっという間に達してしまうのだ。
半開きになっていた唇を奪い、激しく舌を絡める。音を立てて少し強めに舌を吸うと、椿季はぎゅうっと雄膣で指を締め付けて……あっけなく達した。
「んう~~っ。っあ!~~~……っ!!」
ぴゅくぴゅくと吐き出された精液が僕の腹とペニスを汚していく。
かわいい。エロい。正直、見ているだけでこっちもイキそうだ。
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