後天性オメガは未亡人アルファの光

おもちDX

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 他人事とは思えず眉尻を下げたミルファを見遣りながらも、ルシアーノは語り続ける。

「俺のことを勘違いした婚姻の申し出がたくさん来ていた。その中に、ミルファの名前を見つけて……友人としてでもいいから、パートナーになれないだろうかと思ったんだ」
「え……」
「ヤーヌスから聞いて、気が合いそうだと思っていた。だから手紙を貰えたのが嬉しかったし、内容も自分を飾らないところが面白くて温かくて……どうしてか、惹かれた」
「…………」
「共に過ごしていれば、惹かれる気持ちは強くなっていくばかりだったよ。仮の結婚生活は、温かくて穏やかで……幸せだった。友人に留まらず、本当の伴侶になりたいと思うまではそうかからなかった」

 その頃には色々と吹っ切れて、貴族位継承の手続きを進めることにした。ルシアーノが侯爵家に通っていたのは、残務処理のためだけではなかったということだ。侯爵としての仕事も山ほどあるだろう。

 まだミルファもベータだったし、準結婚ではなく今度はミルファを養子にしてしまうことも考えていたという。まさかオメガになるなんて、誰も想像しなかった。
 正式に手続きが終わるまでは何も言えず、解雇した下級使用人から情報を仕入れたクィリナーレ家が余計な干渉をしてきたせいで、関係は拗れてしまった。

 ルシアーノもミルファも傷つき、離れてしまった。
 さらに、ルシアーノが領地に引きこもっている間にミルファの拉致事件が起きた。
 気を利かせたミルファの上司と宰相、おそらく国王様の判断もあって、真っ先に情報を受け取ったルシアーノは、権力と金の使い所を知った。

「そのとき初めてミルファが後天性オメガだったと聞いたんだ。驚いたけど、なんだか納得したよ。君からはいつも、芳しい香りがした」
「か、芳しいって……そんなわけないのに」

 自分も常にルシアーノからいい香りがすると思っていたなんて言えず、恥ずかしくなり頬に熱が上る。黙って聞いていれば、これは愛の告白でもあるのだ。

「危機に陥ったミルファを見て、一度でも離れた自分を呪ったよ。何があっても、嫌われても忘れられても、もう二度と離せないと思った」
「っ……」
「ミルファの望みはなんでも叶えたい。俺のことは下僕しもべだとでも思ってくれていい。どうしてもそばにいたいんだ。可能なら……嫌われたくない。――もう、一人になりたくない」
「ルシアーノ……」

 切羽詰まった声に、こちらの方が苦しくなった。まっすぐとミルファを見つめる夜明け色の瞳は薄い涙の膜に覆われ、縋るような必死さを訴えている。
 ルシアーノの飾らない、全てをさらけ出した本音だ。心の柔らかい部分をキュッと掴まれて、自分はなにを躊躇っていたんだろうと馬鹿馬鹿しくなった。

 ミルファは相手をおもんぱかるふりをして、自分が傷つくのを恐れていただけなのだ。これほどまでに求めてくれている人を、無視できる人がいるのだろうか?
 あと一日でも、いや一分一秒でも、ルシアーノに孤独を感じさせたくない。自分一人でいいのなら、寄り添っていたい。

 ミルファは席を立ち、テーブルを回ってルシアーノのそばに立つ。座っているからこちらが彼を見下ろす形になって、不思議と「守りたい」と感じた。
 その思いのまま、両手で優しく抱き寄せる。ルシアーノの頭を胸に抱くと、いっそう愛おしさが増す。彼はミルファの胸の中で、小さく呟いた。

「愛してる……」

 声は、振動となってミルファの真ん中に届く。言葉にしがたい感動と多幸感でいっぱいになり、ミルファは衝動的に行動した。
 ルシアーノの顔を両手で包み、持ち上げるように上向かせる。潤んで見える彼の目が、閉じる暇もないほど前触れもなく――唇を重ねた。

「~~~っは、」

 技巧も何もない押し付けるだけのキスに、ミルファ自身が息切れする。
 伸びた自分の髪が彼の耳にかかっているのをくすぐったい気持ちで眺めつつ、ミルファは悪戯っぽく伝えた。

「僕だって愛してる。気づいているんでしょう?」
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