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旅立ち編
三本目『罪を裁く者』《後編》②
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デクスターは、自分で考えた作戦ではあるが、段々ともう少し良い手があったかなと自身を疑い初めてきた。
「僕、今日一日で体張り過ぎだなぁ……」
そうボヤいていると、砂嵐が例の地鳴らしが段々と近付いてくるのが聞こえてくる。
「来た……!!」
デクスターは胸の内にある迷いを振り切り、覚悟を決める。
パジェットから借りた馬に乗り、十分に引き付けてから走り出す。
「まだ……まだ……ここだ!!」
デクスターが右に手綱を切ると、先程まで進んでいた直線上に青白い炎の壁が作り出される。予め知っているなら避けるのはわけないが、全力で彼を追いかけていたホワイプスの群れの先頭陣は炎に呑み込まれ、苦痛の叫び声を上げる。
「よし! 上手くいった!!」
昔、火を使ったバッファロー狩りを父から聞かされたのを思い出し、それをホワイプス用に応用させた。本来はバッファローの逃走経路を制限する為に火を使うが、敵を追いかける事にしか脳味噌が働かないホワイプスなら、自分の勢いを制御し切れず自滅すると考えた。
何度も……何度も……デクスターは急カーブをしてホワイプス達を炎に飛び込ませる。大分削れて来たが、何度も無理に曲がったせいで馬から疲労の様子が見受けられるようになった。
「ごめんね! あともう少しだから……!!」
しばらく進むと、崖に挟まれた一本道が見えてくると、デクスターは思い切り息を吸い込んでその名を叫ぶ。
「セオドシアーッ!!」
「遅いよ、全く」
崖の上からセオドシアはギガゴダの右腕を動かし、馬ごとデクスターを乗せ浮かび上がり、一本道の奥へと進む。ホワイプス達は飛び上がるが、高度が高い為、届かずに落ちていく。
「どうだ! ここまでは届かな……い!?」
偶然か計算かはわからないが、一体のホワイプスが、落ちていく仲間を踏み台に、ギガゴダの人差し指を掴み取り、無理矢理乗手する。
「デクスター君!?」
「あぁ、クソッ!? ──男は度胸ォォォッ!!」
デクスターは矢を一本手に持つと、落下の勢いを活かし、ホワイプスの眼球目掛けて突き刺す。
「ホアアアアアッ!?」
深くまで矢を突き刺されたホワイプスは持ち堪えていた手を離し落下する。デクスターは持っていた弓をハンガーにして、落下を持ち堪える。
「全部入れたぞチクショーッ! セオドシア!!」
「全く……不死身か君は……」
セオドシアが指を鳴らすと、一本道の入口が青白い炎によって塞がれ、退路が絶たれる。次の瞬間、ホワイプス達に慌てる時間を与える間もなく、足元から青白い炎が現れ始める。よく見ると、地面には骨が一定の感覚で刺さっており、小さい炎ではあるが、地雷の様にしてホワイプス達の足を奪っていく。
「御膳立てはしたよ、片付けな、退魔師」
「ボクに命令するな」
セオドシアに呼ばれ、パジェットは地雷に苦しむホワイプス達の頭上に蜘蛛の巣の様に茨を張り巡らせる。
「その魂、主の命により返して貰う」
パジェットは茨の巣の上から、茨を触手の様に操ってホワイプスの首を締め上げると、巣に括り付け、次々に宙に吊るしていく。ホワイプス達は跳躍し、対抗しようとするが、炎によって脚を奪われ、なす術もなくただ死を待つのみだった。炎と大勢の絞首……地獄絵図としか言いようが無い光景に見ていた二人は言葉を漏らす。
「凄いな……これじゃまるで……」
「罪人の処刑だ……」
◆◆◆
あの後、パジェットによって作られた地獄絵図によって、ホワイプスの群れは完璧に制圧し、抜け出た魂はセオドシアによって呑み込まれる事で終結した。新月が相変わらず浮かぶ空ではあるが、疲労もあって、デクスターは夜明けの様な晴れやかな気分になった。
「……感謝するデクスター。勇気と知恵……君には勇者の素質があるな」
「そ、そうかな……? えへへ、なんか照れるな……」
「ねぇ私は~? めちゃくちゃ血使ったよ~? 誰かさんに肋骨折られたのに~」
「また倒れてくれればよかったのに、今度は置いてってやるからさ」
「もう! また喧嘩して……まぁ、殴り合うより言い合いの方がまだいいか……」
どの道デクスターにはもう二人を止めるだけの気力は無かった。思えば、パジェットを刺す為にろくすっぽ眠る事も出来なかった……セオドシアはちゃんと寝ていた気がするが、怒るのも今は面倒くさかった。
「もう終わったなら寝よう……移動は後って事で……」
「そうだね……あっ、もう終わったから、どっか行っていいよ~」
シッシッと野良猫を追い払う様な仕草でパジェットを追い払おうとする。しかし、彼女は動かずに、腕を組んでその場に立つ。
「いくら君が死霊術師とは言え、その負傷はボクの責任だ……次の国、アイウスに着くまで同行してやる。デクスターに聞いたぞ、地図を持たずに砂漠越えと言う愚行をしているのだろう?」
「はぁ~? 場所じゃなくて行く場所に起こる事象にこそ意味があるんだよ、君も言ったれデクスター君!! 勝手に着いてきて余計な口出しをすんなって!!」
「えぇ? 僕も同意見なんだけど……それにパジェットさんは頼りになるし」
「『さん』!? 君ィッ!! 私にはさん付けしないくせしてッ!? 大体君は私の扱いというものが──」
怒った様子で騒ぐセオドシアを、デクスターは聞き流しながら、彼を取り巻く空気が静かに乾いたように明るくなるのを感じた。今まで人との関わりと言えば父だけしかない彼にとって、セオドシアやパジェットとの関わりは新鮮さと心地良さを齎らしてくれた。
そして、これから彼等はアイウスに行き、やがて一国の命運を決める戦いに巻き込まれていくのだが……。
それを語るのは、まだ先の事である。
「僕、今日一日で体張り過ぎだなぁ……」
そうボヤいていると、砂嵐が例の地鳴らしが段々と近付いてくるのが聞こえてくる。
「来た……!!」
デクスターは胸の内にある迷いを振り切り、覚悟を決める。
パジェットから借りた馬に乗り、十分に引き付けてから走り出す。
「まだ……まだ……ここだ!!」
デクスターが右に手綱を切ると、先程まで進んでいた直線上に青白い炎の壁が作り出される。予め知っているなら避けるのはわけないが、全力で彼を追いかけていたホワイプスの群れの先頭陣は炎に呑み込まれ、苦痛の叫び声を上げる。
「よし! 上手くいった!!」
昔、火を使ったバッファロー狩りを父から聞かされたのを思い出し、それをホワイプス用に応用させた。本来はバッファローの逃走経路を制限する為に火を使うが、敵を追いかける事にしか脳味噌が働かないホワイプスなら、自分の勢いを制御し切れず自滅すると考えた。
何度も……何度も……デクスターは急カーブをしてホワイプス達を炎に飛び込ませる。大分削れて来たが、何度も無理に曲がったせいで馬から疲労の様子が見受けられるようになった。
「ごめんね! あともう少しだから……!!」
しばらく進むと、崖に挟まれた一本道が見えてくると、デクスターは思い切り息を吸い込んでその名を叫ぶ。
「セオドシアーッ!!」
「遅いよ、全く」
崖の上からセオドシアはギガゴダの右腕を動かし、馬ごとデクスターを乗せ浮かび上がり、一本道の奥へと進む。ホワイプス達は飛び上がるが、高度が高い為、届かずに落ちていく。
「どうだ! ここまでは届かな……い!?」
偶然か計算かはわからないが、一体のホワイプスが、落ちていく仲間を踏み台に、ギガゴダの人差し指を掴み取り、無理矢理乗手する。
「デクスター君!?」
「あぁ、クソッ!? ──男は度胸ォォォッ!!」
デクスターは矢を一本手に持つと、落下の勢いを活かし、ホワイプスの眼球目掛けて突き刺す。
「ホアアアアアッ!?」
深くまで矢を突き刺されたホワイプスは持ち堪えていた手を離し落下する。デクスターは持っていた弓をハンガーにして、落下を持ち堪える。
「全部入れたぞチクショーッ! セオドシア!!」
「全く……不死身か君は……」
セオドシアが指を鳴らすと、一本道の入口が青白い炎によって塞がれ、退路が絶たれる。次の瞬間、ホワイプス達に慌てる時間を与える間もなく、足元から青白い炎が現れ始める。よく見ると、地面には骨が一定の感覚で刺さっており、小さい炎ではあるが、地雷の様にしてホワイプス達の足を奪っていく。
「御膳立てはしたよ、片付けな、退魔師」
「ボクに命令するな」
セオドシアに呼ばれ、パジェットは地雷に苦しむホワイプス達の頭上に蜘蛛の巣の様に茨を張り巡らせる。
「その魂、主の命により返して貰う」
パジェットは茨の巣の上から、茨を触手の様に操ってホワイプスの首を締め上げると、巣に括り付け、次々に宙に吊るしていく。ホワイプス達は跳躍し、対抗しようとするが、炎によって脚を奪われ、なす術もなくただ死を待つのみだった。炎と大勢の絞首……地獄絵図としか言いようが無い光景に見ていた二人は言葉を漏らす。
「凄いな……これじゃまるで……」
「罪人の処刑だ……」
◆◆◆
あの後、パジェットによって作られた地獄絵図によって、ホワイプスの群れは完璧に制圧し、抜け出た魂はセオドシアによって呑み込まれる事で終結した。新月が相変わらず浮かぶ空ではあるが、疲労もあって、デクスターは夜明けの様な晴れやかな気分になった。
「……感謝するデクスター。勇気と知恵……君には勇者の素質があるな」
「そ、そうかな……? えへへ、なんか照れるな……」
「ねぇ私は~? めちゃくちゃ血使ったよ~? 誰かさんに肋骨折られたのに~」
「また倒れてくれればよかったのに、今度は置いてってやるからさ」
「もう! また喧嘩して……まぁ、殴り合うより言い合いの方がまだいいか……」
どの道デクスターにはもう二人を止めるだけの気力は無かった。思えば、パジェットを刺す為にろくすっぽ眠る事も出来なかった……セオドシアはちゃんと寝ていた気がするが、怒るのも今は面倒くさかった。
「もう終わったなら寝よう……移動は後って事で……」
「そうだね……あっ、もう終わったから、どっか行っていいよ~」
シッシッと野良猫を追い払う様な仕草でパジェットを追い払おうとする。しかし、彼女は動かずに、腕を組んでその場に立つ。
「いくら君が死霊術師とは言え、その負傷はボクの責任だ……次の国、アイウスに着くまで同行してやる。デクスターに聞いたぞ、地図を持たずに砂漠越えと言う愚行をしているのだろう?」
「はぁ~? 場所じゃなくて行く場所に起こる事象にこそ意味があるんだよ、君も言ったれデクスター君!! 勝手に着いてきて余計な口出しをすんなって!!」
「えぇ? 僕も同意見なんだけど……それにパジェットさんは頼りになるし」
「『さん』!? 君ィッ!! 私にはさん付けしないくせしてッ!? 大体君は私の扱いというものが──」
怒った様子で騒ぐセオドシアを、デクスターは聞き流しながら、彼を取り巻く空気が静かに乾いたように明るくなるのを感じた。今まで人との関わりと言えば父だけしかない彼にとって、セオドシアやパジェットとの関わりは新鮮さと心地良さを齎らしてくれた。
そして、これから彼等はアイウスに行き、やがて一国の命運を決める戦いに巻き込まれていくのだが……。
それを語るのは、まだ先の事である。
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