性格最低最悪の嫌われ悪女に転生したようですが、絶対に幸せになります!

あやむろ詩織

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4専属侍女

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第二王子が走り去ってから、どれだけの時間が経ったのだろうか。

考えをまとめるために、散策していたランドフィール家の庭園は、既に暮色に染まっている。

ガゼボ内に用意されていた二人分の紅茶セットは手をつけられることもなく冷えていた。

第二王子が来て早々に帰って行ったことを、家の使用人は当然把握しているだろうに、庭園へ様子見にも現れないところに、自分の立ち位置を察する。

まあ、今までの私ってば、ほんっとうに癇癪持ちで、誰彼構わず当たり散らしていたからね。

そりゃあ、出来る限り側に寄りたくもないだろう。

遠巻きにされるのは当たり前だ。

とはいえ、暗くなってきたことだし、そろそろ部屋に戻りたい。

ガーデンテーブルの上にあった呼び鈴を鳴らす。この呼び鈴は、魔術を用いて、呼び出す者を指定できる優れ物だ。

すぐに、私付きの侍女が現れた。

「お呼びでしょうか」

緊張した表情で私の命令を待つ、少女と言ってもいい年齢の侍女を、私はじっと見た。

どこにでもいそうな外見をした少女だ。焦げ茶の髪を二つに結っていて、頰に散らばるそばかすが明るそうな印象を与える。

今は顔が強張っているけれど、笑うと愛嬌があることを私は知っている。

確か、新人なのをいいことに、強制的に私付きにされてしまったのだ。

我が家に入ったばかりで、まだ仕事にも慣れていないのに、気難しい私に散々怒鳴られたせいで、相当萎縮しているはずだ。

「茶器を片付けてくれるかしら」

殊更にこやかに告げると、彼女はビックリしたような顔をした。

感情が丸わかりな様子に、私もくすりと笑う。

「あなた、名前を何と言ったかしら?」

「アンです。お嬢様」

「そう。残ったケーキだけどね、手をつけていないから、アンが好きなら食べていいわ」

一般庶民には到底手の出ない、王家御用達の高級スイーツ。食べ物で懐柔しているようでちょっと気が引けるけど。

命令以外で私がアンに話しかけるのは初めて。

アンは何を言われたのか分からないようだった。もしかしたら、ついにお嬢様がおかしくなったと思っているのかもしれない。

「私みたいな怒りっぽい主人の世話は大変でしょう。アンは今までの者とは違って、何があっても仕事をきちんとやってくれるから、いつも助かっているのよ」

今までの所業は許されないかもしれないけれど、今後は当たり障りなく周囲と上手くやっていきたい。

それに、気付かなかったけど、生真面目なアンのことを、結構前から気に入っていたみたいだし、これからも家にいる限りは、四六時中顔を合わせることになるんだからね。

「今日の夕食は軽食でいいわ。後で、軽く摘まめる物を部屋まで持ってきてちょうだい」

「はい!」

そばかすいっぱいの頰を赤く染めた彼女は、今までで一番元気に答えてくれた。
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