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第5話 茜色の恋
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新幹線に乗り、座席に座るや否や、コーセーさんは寝てしまった。
「昨日の夜の10時まで塾だったんだと。寝かせておいてあげましょ」
そう言ってアカネちゃんはコーセーさんの頭をそっと撫でた。とても優しそうな目で、愛しそうにコーセーさんを見ている。
「ところでヒマリ、貴女、コーセーとはうまくやってる?」
コーセーさんと? どうだろうなぁ。
「うーん……まあ、ぼちぼちという感じかな」
そう、ぼちぼちなのだ。別に仲が悪いわけではない。だが、どうしても距離を感じてしまう。アカネちゃんとほとんど同級生のように仲がいいから尚更だ。
「なんというか、まだあんまりコーセーさんがどんな人か、分かってないんだよね。だから距離を感じるのかな? アカネちゃんから見て、コーセーさんってどんな人なの?」
アカネちゃんは少し考えて、
「多分ね、コーセー自身、自分がどんな人間か、分かってないのよ」
「自分がどんな人間か分かっていない」? どういうことだろう?
「コイツ、昔っから兄貴と比べられてばっかなのよ。ほら、前に牧先輩と話したときに少し話題にあがったでしょ?」
ああ、そういえばそうだった。確か名前は進さんだったか。
「県内随一の進学校であるこの高校で学年一位を3年間キープしている秀才。コーセーの話によると大学は医学部を志望しているらしいわ。親も医者で、いかにもって感じでしょ? ただ、コーセーはそんなに優秀じゃなかった。別に落ちぶれてはいないんだけど。まあ平均ってところね」
落ちぶれているどころか、彩雅高校で平均的な学力ということは、一般的に見ればかなり優秀だ。
「親がコーセーのこと見捨てるとか、学校でいじめにあってるとか、そうのじゃないのよ。ただ、コーセーは優秀過ぎる兄貴と自分を比べて、自分は大した人間じゃないって、そうやって、諦めちゃってるのよ」
確かに、それほど優秀な兄がいれば、常に自分と比較してネガティブな気持ちを抱いてもおかしくはないかもしれない。私とお姉ちゃんの場合は、どちらかというと私のほうが成績はよかったのだが、お姉ちゃんは私のこと、どう思っていたのだろう?
「だから、自分なんか何をやっても無意味だ、みたいに思ってる節があって……それで、『これが好きだからやりたい』みたいな意欲がすっかりなくなっちゃってるのよ」
なるほど。だから、「自分がどういう人間か分かってない」のか。そりゃあ私も、コーセーさんがどんな人か分からないわけだ。
「本当は勉強も嫌になってもおかしくないんだけど、『塾に行かせてもらえるだけ幸せだよ』って言って、ちゃんと塾行ってるんだから、コーセーもたいがいバカ真面目よね。まあきっと、『反抗なんて、くだらない』って思ってるんでしょうね」
そう言って、アカネちゃんはもう一度コーセーさんの頭を撫でた。
「何か好きなこととか、見つけられるといいんだろうけどね……」
私がそう言うと、アカネちゃんは静かに頷いた。
「好きなこと見つけたらきっと、コーセーは今のコーセーとは違う、別のコーセーになっちゃうんだろうな。前はそれが嫌だった。いつまでも、ドライでクールな人でいてほしかった。でもいまは、どんなコーセーであっても、ちゃんと理解してあげたいと思ってる。コーセーが私と足並みを合わせてくれたみたいに、私もコーセーの行くところにどこまでもついていきたいと思ってる。コーセーのことが好きだから」
「昨日の夜の10時まで塾だったんだと。寝かせておいてあげましょ」
そう言ってアカネちゃんはコーセーさんの頭をそっと撫でた。とても優しそうな目で、愛しそうにコーセーさんを見ている。
「ところでヒマリ、貴女、コーセーとはうまくやってる?」
コーセーさんと? どうだろうなぁ。
「うーん……まあ、ぼちぼちという感じかな」
そう、ぼちぼちなのだ。別に仲が悪いわけではない。だが、どうしても距離を感じてしまう。アカネちゃんとほとんど同級生のように仲がいいから尚更だ。
「なんというか、まだあんまりコーセーさんがどんな人か、分かってないんだよね。だから距離を感じるのかな? アカネちゃんから見て、コーセーさんってどんな人なの?」
アカネちゃんは少し考えて、
「多分ね、コーセー自身、自分がどんな人間か、分かってないのよ」
「自分がどんな人間か分かっていない」? どういうことだろう?
「コイツ、昔っから兄貴と比べられてばっかなのよ。ほら、前に牧先輩と話したときに少し話題にあがったでしょ?」
ああ、そういえばそうだった。確か名前は進さんだったか。
「県内随一の進学校であるこの高校で学年一位を3年間キープしている秀才。コーセーの話によると大学は医学部を志望しているらしいわ。親も医者で、いかにもって感じでしょ? ただ、コーセーはそんなに優秀じゃなかった。別に落ちぶれてはいないんだけど。まあ平均ってところね」
落ちぶれているどころか、彩雅高校で平均的な学力ということは、一般的に見ればかなり優秀だ。
「親がコーセーのこと見捨てるとか、学校でいじめにあってるとか、そうのじゃないのよ。ただ、コーセーは優秀過ぎる兄貴と自分を比べて、自分は大した人間じゃないって、そうやって、諦めちゃってるのよ」
確かに、それほど優秀な兄がいれば、常に自分と比較してネガティブな気持ちを抱いてもおかしくはないかもしれない。私とお姉ちゃんの場合は、どちらかというと私のほうが成績はよかったのだが、お姉ちゃんは私のこと、どう思っていたのだろう?
「だから、自分なんか何をやっても無意味だ、みたいに思ってる節があって……それで、『これが好きだからやりたい』みたいな意欲がすっかりなくなっちゃってるのよ」
なるほど。だから、「自分がどういう人間か分かってない」のか。そりゃあ私も、コーセーさんがどんな人か分からないわけだ。
「本当は勉強も嫌になってもおかしくないんだけど、『塾に行かせてもらえるだけ幸せだよ』って言って、ちゃんと塾行ってるんだから、コーセーもたいがいバカ真面目よね。まあきっと、『反抗なんて、くだらない』って思ってるんでしょうね」
そう言って、アカネちゃんはもう一度コーセーさんの頭を撫でた。
「何か好きなこととか、見つけられるといいんだろうけどね……」
私がそう言うと、アカネちゃんは静かに頷いた。
「好きなこと見つけたらきっと、コーセーは今のコーセーとは違う、別のコーセーになっちゃうんだろうな。前はそれが嫌だった。いつまでも、ドライでクールな人でいてほしかった。でもいまは、どんなコーセーであっても、ちゃんと理解してあげたいと思ってる。コーセーが私と足並みを合わせてくれたみたいに、私もコーセーの行くところにどこまでもついていきたいと思ってる。コーセーのことが好きだから」
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