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僕のスピカ*中編
しおりを挟むそんな日々が続き事故から1年が経った頃、彼女が声を失い養護学校で手話を習っていると、彼女の親友から聞かされ、彼女が僕に会いたくないのは僕を恨んでいるからだと告げられた。
学校に来れないのも、僕に会うのが嫌だからだと…
それなら、せめて彼女がこの町で心安らかに過ごせるように、忌まわしい僕の姿を見なくて済むように、と進学先を急遽変更し、県外の大学に入学が決まって今に至る。
勿論、進化してからは実家にも帰らず、星の見えない此処で生活を送っていた。
家を出る時に一緒に連れてきたのが、彼女と付き合い始めてすぐの頃に拾い、一緒に名を付けたスピカだ。
あの頃は子猫だったのに今ではすっかり大きくなった。
足元に擦り寄ったスピカを抱き上げ話しかける
「ーーーーーはどうして同窓会の手紙を俺に送ってきたんだろな。忘れて幸せになる事は許さないって事かな?それとも来るなって意味で自分の名前で送ってきたのかな?」
なぁーーん
と鳴くスピカは"知らないわよ"と言うように鳴いた後腕からすり抜けて、同窓会の手紙を前脚で叩いた。
"自分で確認しなさい"と言われたような気がした。
「お前は本当にーーーーーにそっくりだな。」
覚悟は出来ていない、受け止める自信もない。
それでも今は背中を押してくれたスピカに感謝しながら手紙を開封した。
手紙の中は彼女の字でありきたりな文面に、ありきたりな言葉が書かれた手紙と、参加の有無を確認する返信用ハガキが入っていてその手紙は既に《参加》に丸がつけられていた。
「なんで…」
答えなんて帰ってくるはずがないのに、ただ呟くしかできなかった。
何か手掛かりはないのか、と封筒をひっくり返せば小さな紙がひらりと落ちた。
それは僕と彼女の初めてのデートで観た映画の半券。
アクションが観たい僕と、ラブストーリーが観たい彼女でケンカをして、怒って帰ろうとする彼女に謝りながら観た映画だ。
内容は確かーーー
互いに愛し合っていた2人が周りに反対されながらもいくつもの障害を乗り越え、ただ些細な事をきっかけにすれ違い別れてしまう。と言う悲恋ものだった気がする。
観終わった後
「初めてのデートで悲恋ものなんて…」
と言う僕に、彼女が"悲恋なんかじゃない"と力説していたけどそれは全く理解できなかった。
多分それは今でも変わらないと思う。
それでも何かがヒントになるかも知れないと急いでレンタルショップに向かい、DVDを探せば直ぐに見つかった。
カバーには永遠の愛を紡ぐ物語とポップが付けられていた。
もしかしてタイトルを間違えてる?そんな不安な気持ちになりつつも、間違えてたら借り直そう。とそのまま借りて、帰宅後すぐに再生した。
内容は記憶通りのもので、やはり2人は別々の道を進み始める内容だった。
そのシーンを観ながらこの時に"なんでこんな映画"と思っていた当時の記憶が蘇る。
ただしっかりと結末まで見れば、それぞれの道を歩んでいた2人は再会を果たし、共に歩んでいくと言う話だった。
あの時は、共に歩みはするが、別の人生を送っている時点で悲恋と決めつけていたが、今見ると、何というか、都合のいい解釈かも知れないけど、離れてしまったけどまた一緒に歩んでいきたい。と手を取り合って進むという内容のような気がした。
勘違いでもいい、それでも彼女が"悲恋なんかじゃない"と言っていた話なのだ。
これが彼女からのメッセージならこれ以上の幸せはない。
諦めなくても良いのか?
彼女の幸せを、声を奪った僕が…
彼女の隣を歩んでも?
彼女の本音なんてわからないのに、僕の中で葛藤が始まる。
彼女がそばに居たいと望んでくれるなら、全てを投げ打ってでも彼女を選ぶ自信はある。
もしも勘違いで本当は彼女が僕に恨み辛みをぶつける為に呼んでいるのだとしても、彼女が前に進めるなら、彼女の為になるなら喜んで受け止めよう。
そう覚悟して同窓会に参加する事を決意した。
応援ありがとうございます!
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