アリーシア嬢の勘違い

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暴走する勘違い

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早速、その日の夕飯から、とある日のミランダの食事を模したメニューが配膳された。
勿論アリーシアの分だけである。
余りにもバランスの悪い食事内容に、公爵が料理長を呼びつけ、公爵夫人が取り替えるように頼んだほどだ。
それでもアリーシアは二人を必死で説得し、見守って欲しいと伝えた。

ナンシーから、アリーシアが強い意志を持って何かを始めようとしている。と報告を受けていた夫妻は、何か事情があるのだと自身に言い聞かせ、渋々見守る事にした。

それでもアリーシアの弟、アルフレッドは理解することができず

「お姉様、お気を確かにしてください。」

と嘆き、アリーシアが困っていたのは言うまでも無い。

勿論、公爵夫妻も使用人達もアリーシアの事を考え、早くこんな事を辞めてくれたらいいとは思っているが、アリーシアの決意の固さに誰も何も言えない状態になっていた為、アルフレッドの考えに賛同したい気持ちは山々で合ったが、アリーシアが強く望むのならと暫くの間は見守る姿勢に徹する事にした。

「アル、アリーは今自分の限界に挑戦しているのよ、困らせるのではなく応援してあげなさい。」

「ですが、こんな食事をされていたらお身体を壊します。そもそもコレは人間の食事量ですか?」

「「……。」」

これには公爵夫妻も黙るより他なかった。

「大丈夫よ、アル。私は、アルが自慢できるような姉になれるよう目指しているのだから。」

「今ままで十分自慢のお姉さまです!お姉さま以上に見目も心も美しいと思う方に出会った事もありません。」

「アルは優しいのね…。」

アルのように整った顔立ちで、社交の場で人々に囲まれる人気者の弟が、私を美しいと言ってくれるのね。
同情かもしれない、それでもその優しさが嬉しくて泣きそうになる。
けれどアルは人気者だから…
と卑屈になりそうな心にアリーシアは鞭を打つ。せめて、心根だけでも美しくあろうと誓った時のことを思い出しながら。

「だけど、私はミランダ様のように美しい令嬢を目指さなくてはならないのです。なので止めないでください。」

困ったようにお願いするアリーシアの言葉で喉を詰まらせ、聞き間違いなのかと困り果てたのはその場にいる、アリーシア以外の全ての人間だった。

「アリーシアは…その、ミランダ嬢のようになりたいと、その、今の食事をしているのかい?」

公爵が恐る恐ると言った様子を隠すこともなく尋ねる。

「そうなの?アリー。」

悲しそうな様子を見せる夫人。

そんな二人を見ても心からそれを望むアリーシアは

「はい。私はミランダ様のように華やかで、サーシス殿下が心癒される令嬢になりたいのです。」

自慢の美しい娘が、まさか貴族達の間でも有名な大食らいで、体格の膨よか、否、そんな生易しい言葉では済まないくらいに丸々と肥えた令嬢のようになりたいと言い始めたことに夫妻は愕然とした。

公爵は手を額に当て嘆き、夫人は言い表せないほどの悲しみにハンカチを濡らした。

ただ、そんな様子を見てあろうことか自分ではサーシスの好むミランダのようにはなれないと思われているのだと自身を無くすほどだった。

「私がミランダ様のようになる事が難しいことは承知しています。ただ、どうしてもミランダ様のようにならなくてはいけないのです。」

必死に説明をすればするほど空気は凍ったものになっていく。

アリーシアの勘違いにだめ押ししたのは、アルフレッド一言だった。

「お姉様、今のままのお姉様でいてください。どうか、そんな無駄な事はやめてください。」

いくら努力してもお姉様はミランダ様のような淑女にはなれないのでやめたほうがいい。
愛する弟にそう言われたとアリーシアは表情に悲しみの色が浮かぶことを隠すことができなかった。

ただ素直に思いの丈を伝えたアルフレッドの言葉を曲がって解釈してしまったのは、人と関わることが少なく、人の視線に敏感になってしまったからなのか、それとも初恋にうなされているからなのか。

アリーシアがそんな勘違いをしていることに気づかないもの達にその真実を知るものは誰もいなかった。

「それでも、私は…。」

これ以上家族に無駄だと言われてしまったら心が折れると思い、アリーシアは

「ナンシー、私の食事は部屋に届けてもらうように手配して欲しいの。」

と言うと席を立ち

「お父様、お母様、アル、無作法を謝罪いたします。ただ心配をおかけしてしまうので、私は今後食事は部屋で摂ることに致します。」

と告げたアリーシアを誰一人として止めることができず、見送るしかなかった。




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