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お食事は計画的に
しおりを挟む部屋に戻り、家族にできないと決め付けられたことを悲しんだ。
それでも、悲しみに暮れるばかりでは、何時迄も家族は愚か、サーシス様にいつかは愛想をつかされてしまうかもしれないと思い、無理やり気持ちを切り替えることにした。
「ナンシー、私食べるわ。そしてミランダ様のようになって家族に、そしてサーシス様に胸を張って紹介してもらえるような女性を目指すわ。」
とんでもない方向への勘違いは、更なる勘違いを生み、更なる加速を見せる。
ナンシーは“どうしてこんなことに”と嘆きつつ、これ以上勘違いが暴走しないよう、アリーシアに
「頑張りましょうね。」
と声をかけ、夕飯の準備に取り掛かった。
はじめは、大量な食事を前にしても意気揚々と食事を始めたアリーシアだったが三分の一にも満たない段階でナイフとフォークを持つ手は止まった。
それでも普段の食事量の倍の量を食べた彼女を褒めてあげたい。
ゆうに限界を超えた彼女が今まだ食事を続けているのは、家族と、そしてサーシスのことを考えてだった。
一言でも声を発してしまったら、口から全てが出てしまいそうで喋ることは愚か、苦しすぎて身動きもできない、そして、終いには激しい腹痛がアリーシアを襲っていた。
「…んん。」
顔をしかめながら、額にはうっすら汗を浮かべ、その激しい痛みに目元には薄っすらと涙を浮かべている。
そんなアリーシアの変化にすぐに気づいたのは、勿論ナンシーで、その痛みの原因も大凡は見当がついている。
ただアリーシアはそれでも何も口に出そうとはしない。
いや、出せないのだ。
「アリーシア様!大丈夫ですか?」
心配の色を隠しきれないナンシーの言葉にも、一言だって話せる状況でないアリーシアは小さく首を振るのが精一杯である。
「今、医師を呼びますので、もう少しだけ辛抱して下さいね!!」
廊下に出たナンシーは近くの使用人に医師を呼び立てるよう指示を出すと、動くのやっとと言う様子のアリーシアの肩の下に身体を滑り込ませて、ゆっくり、ゆっくりとベッドに連れて行った。
そして素早く桶を持ち出すと
「アリーシア様、無礼は承知ですが、今後はこのような無茶な食事はおやめ下さい。」
とアリーシアの前にズイと身体を近づけた。
それでも首を振るアリーシアに、少しトーンを落とした声で
「では、アリーシア様は食べ過ぎて腹痛を起こされたので、お見舞いに来て下さい。と殿下にお伝えすれば宜しいですか?」
と申し上げれば、観念したように小さく頷き、先程よりも涙を浮かべた瞳は年相応な可愛らしい少女の顔だった。
その後、慌てた様子で公爵と夫人が駆けつけ、老年の医師を抱えるようにしたアルフレッドがその後に続いた。
当たり前に、医師の診断は〈食あたり〉でその診断に家族は安堵した。
そして、アリーシアが一番困ったのは、サーシスの来訪だ。
何処からかアリーシアがお腹を抑えながら倒れたと言う話を聞き、心配してやってきたのだ。
「アリー!倒れたと聞いたが大丈夫なのか?」
「サーシス様…」
口元に人差し指を当てられ
「君には違う呼び方を許したはずだ。」
「シス様。」
顔全体を赤くして名前を呼ぶアリーシアを満足そうに眺めながら、本来の目的を思い出したサーシスは矢継早に質問を投げかけた。
「体調は?何か欲しいもの、いや、食べたいものは?花か?花がいいか?療養するなら本とかの方が…。」
「シス様?」
「もしかして、先日の茶会の菓子が…医者、医者を呼ぼう!」
「先程見てもらったので大丈夫ですよ。」
酷く慌てた様子のサーシスの様子に、少しだけ、そう、ほんの少しだけ自分が全く興味のない婚約者ではないのだと安心したのは言うまでもない。
嬉しくなり、小さく微笑んだアリーシアにサーシスの視線が釘付けになったのは言うまでも無い。
「シス様がいらっしゃってくださったから、凄く元気になりました。」
とアリーシアが無自覚に言葉で翻弄すれば、サーシスは顔を真っ赤にして、また無意識にアリーシアに追い打ちをかける言葉を紡いでしまう。
「そ、そういえば、先日ミランダ嬢も体調を崩したようで、ブラウン公爵が酷く心配していたな。流行病などでなければいいのだが。」
赤くなってるであろう顔を誤魔化すように視線を逸らしただけなのに、アリーシアには会えないミランダに想いを馳せているようにしか見えなかった。
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