俺たちバグジー親衛隊

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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I章 波乱の高デ!革新的な一手やと?

8話 鯉を捕まえろ~明日へのプレイボール~

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部活がかなり早く終わったある日、僕らは帰路につきます。
今日は、僕、きゃぷてん、ボブの3人に加え、同じくテニス部で家が近所の「織田」もいました。

織田は、僕と同じ中学出身で共に野球部に入っていました。
彼はイケイケで見た目はヤンキーでしたが、内面に芸人気質を隠し持つGAPの塊のようなイケメンでした。

「さて、今日は何して遊ぼうか。」
「とりあえず、コープでたむろしてからバグリ島やな」

「バグリ島ってどこやねん!」
織田が少しキレ気味で聞いてきます。
「島や。海パンいるから準備しといてな?え?ないん?あっちゃー」

バグリ島へ行く途中には、僕とボブの母校の小学校を通ります。
「とりあえず小学校入ってみようか」
僕らは小学校へ入ります。

学ランを着た高校生4人がどかどかと放課後の小学校に侵入、違う、
正式入場していきます。

「ちょ待てよ!勝手に入ってええん?」
常識人のきゃぷてんが僕らに言います。

きゃぷてんが常識人と言うか、他の3人が常識がないだけかもしれません。
平均値が低すぎて、きゃぷてんがグググッと浮いてくるのです。

「大丈夫や!門に'校庭開放中'って書いてる。なんせ俺らはこの学校のOBやからなあっ。」
「せやせや。」
僕とボブがOBなので全然オッケーと言うことできゃぷてんも納得しました。


小学生の時は、夢の国のような希望に満ちた小学校の校庭というのは、高校生にとって見直すといまいち遊びづらい場所です。
ジャンプ台、巨大遊具、雲梯、ジャングルジム、子どもの頃熱狂させられた歴戦の遊具たちが今は寂れて見えます。

「まあ俺らも大人になったっちゅうわけ」
「さてどうしようか」


その時、1人のおばちゃんに話しかけられました。
「君ら何してるの?」
俺らはたどたどしく答えます。
「この学校のOBなんで遊びに来ました。」

おばさんは不審そうな顔をしながらも
「そうなの?まあ楽しんで」
と言い、去っていきました。

「おい、あれ誰や?」
僕らはあのおばさんについて議論します。

「先生、ではないな。」
「ボランティアのおばちゃんちゃう」
「放課後に開放された校庭の監視役ってわけか。」
「インペルダウンのマゼランみたいやな」

マゼランと会話後、学校の敷地内を隈なく歩き回り、楽しそうな遊び場がないかを探しました。

すると、ある場所にたどり着きます。



そこには、数匹のでかい鯉と稚魚たちが所狭しとうようよ泳ぎ散らしています。

ボブが思い出したように、
「とっしー小学生の頃さ。この池で恋捕まえようとして池に落っこちたよな?!」
「そんなこともあったな...ってお前が押したんやろ!」

「もっかい鯉捕まえへん?」
「...そやな!」

早速、小学校の敷地内の池の周りを高校生4人が囲い、池の鯉捕獲に挑みます。

きゃぷてんが僕らに指示を出します。
「役割分担言うで。
とっしーは、最前線で鯉を触り捕獲。ボブと織田はその支援。
俺は、校庭監視役のマゼランを監視する。」

マゼランは、校庭をぐるぐる見回っています。
校庭を見渡し、マゼランの場所を確認し、奴が池に近づいてきたら、警戒を促す。
それがきゃぷてんの役目です。
1番地味やけど大事な役目を自分が引き受ける。それがきゃぷてんです。

池の様子をまず確認します。
池の一角には、網の板で覆われた稚魚専用水槽があります。
池の中には、その上に立てる少し大きな石の足場があり、
水中の底にはたくさんのレンガが沈んでいました。

そして、鯉捕獲最前線に任命された僕は、体を乗り出し池に入りました。

「いくぞっ」
僕は手をヌルヌルした汚い池に突っ込み鯉を掴もうとします。

しかし、鯉は逃げ回るので触ることすらできません。
池の面積は広く鯉はそこを縦横無尽に動けますが、
僕の行動範囲は、石の足場と周りの石しか使えないため、狭いのです。


「てかとっしー、こんな汚い池によく手を入れれるな。」
ボブはシンプルな感想を述べます。

ここでサポート役ボブが、池の中に沈んだレンガを持ち上げ、動かします。
それを移動し、レンガを積み重ねて、池を半分に遮断します。

これで、鯉の行動範囲を狭めました。

そして、僕は再び池に手をつっこみます!
ヌルっ...

「触れたあっ」

しかし、触れるだけしかできず、決定的な捕獲には至りません。

ここで、忘れてはいけないことがあります。
僕らが一心不乱に鯉捕獲に熱中できるのはきゃぷてんがマゼランを監視してくれているからです。

と思っていたら、俺の背後にきゃぷてんがいます。
「いけっもっとっ鯉をガッて掴め!」

「あれ?きゃぷてんマゼランの監視は?」
「ああ、横目でしてるから大丈夫」


ここで、織田の暴走します。
「俺に任せろっ」
彼はそう叫ぶと、稚魚専用水槽を覆う網の板を取り外し、それを縦にして池の中に突っ込みます。

ジャッブーンッ
池を引き裂く様にど真ん中に置かれる板。
しかし、これではボブのレンガ作戦と同じくらいしか鯉の行動範囲を狭められません。

「へっへっここからや」
織田はそう言うと、縦に置いた板を横にスライドさせます。

ガリガリがりがりがリィ

板が池の底とすれて恐ろしい音が出ます
池を半分に割った板は、鯉がいる方向へスライドし、鯉の行動範囲がどんどんせばまります。

ボブと織田は叫びます。
「これで鯉の行動範囲は減った!今や捕まえろ!」

「よっしゃ!」
僕は、狭い範囲の池でゆっくり泳いでいる鯉を触ります。

ヌルヌルヌルヌルッ
鯉は僕の手に触れられながらも、巨体を揺らしながら逃げます

「くっもう一回」
次はしっかり両手で鯉を掴みます。

ヌルヌルッヌルヌルっ
鯉の体を俺の両手は確実に捉えました。

ブルブルブルっ
その瞬間僕の体が震えましたっ。

「...もうやめておくれよぉ、なんで捕まえるのさ?」
そんな鯉の感情が、やめてくれという思いを僕はその震えから感じました。

歴戦の釣り師としては、諦めきれませんが、僕は鯉の思いに負けました。
もうこのでかい鯉捕獲はやめてあげよう。可哀想だ。


ここで、作戦を変更します。
「でかいのはあかん。。小さい鯉、稚魚を狙おう。作戦はな、こうや...」

僕は池の周囲の石の上で腹這いになります。
その横で、きゃぷてんがお菓子、サラダ太郎を池に放り投げます。

その餌に、少し小さめの鯉や、稚魚が集まります。

「いっくぞっ」

僕はサラダ太郎に集まる稚魚達を手のひらですくい上げました。

「とれたッアッ」
小さな稚魚を捕獲した僕は顔の横の石に稚魚をおきます。

ピチッピチッピチッッ

という音を立てながら稚魚は、石の上を跳ねています。

その鯉の様子を全員が体を屈めてみています。

「すっげぇ!」
「捕まえたっ」


その瞬間.....
後ろから声がします。

「何をしているの?」

そう、マゼランです。
監視役のきゃぷてんは監視など全くしていませんでした。
僕は即座に捕まえた鯉を池に戻します。

「なんもないっすよ!」
必死にごまかす僕らにマゼランは一言。

「池の中に入らないでねえ。」

根は真面目な僕らは、
「さーせん」と謝り池から出ました。


が、鯉捕獲の楽しさを知った僕らはこのまま引き下がれません。
もう一度池へ近づくために、校舎を一周して裏道から池へ向かうことにしました。

裏道の途中で僕らは作戦会議をします。
「さすがに、次池で遊ぶのをマゼランにばれたらやばい。通報されかねん。」
「マゼランきたらさ、速攻、逃げよな、全速力で!」
「せやな、絶対逃げよ!」

そう、話していると、どこからともなく足音が聞こえてきます。

ざっ、ざっ、ザッ.....

「こ、これは、もしや」
僕らは悟ります。奴が来た。

ザッ、ざっ、ざっ、

さらに近づく足音...

「おい!!逃げるぞ!」
誰かが叫びましたが僕らは、顔を見合わせるだけで足が動きません。
ヤンキーの風貌の織田でさえ、ビビっています。
みかけだおしかいっ

ザッ。足音が止まり背後から邪悪な気配がします。

「君ら、何してるの?」

振り返ると、マゼランが立っていました。
僕らは全速力で逃げる!


なんてできず
震えながら一言


「...さーせん」

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