俺たちバグジー親衛隊

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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III章 どでかい花火で人生終幕?

2話 もっとええコート借りとけよ

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まともにコートを使わせてもらえない1年生にも、試合にでる権利はあります。
 
間近に迫った大会に向け、僕らはテニスの自主練習を行っていました。
 
その場所は…
 
道路の壁。
 
車通りの少ない道路で、壁打ちを行っていましたが、これがとにかく危ない。
 
そりゃそうです。

3人が横に並んで、道路上でラケットを振り回しているのですから、安全なはずがありません。
 
人や車が来たら避けるものの、壁打ちに熱中して、周囲の存在に気付くのが遅れることもありました。
 
「これさ、めっちゃ危なくね?」
 
常識人のきゃぷてんの提言のおかげで、僕らは'ちゃんとしたテニスコート'を借りることにしました。

めでたしめでたし...

(まだ終わりません。今回の話は長めなのでもうしばしお付き合いくださいませ)



あくる日の日曜日。

テニス部の練習がないこの日、僕らはしあわせの村のテニスコートを借りて練習することにしました。

メンバーは4人。
 
僕、ボブ、きゃぷてんのバグジー親衛隊の3人に、出家丸、めこを加えたメンツです。

出家丸というのは、西桜ヶ丘付近に住む僕とボブの小学校時代の同級生です。

話は横道に逸れますが、
'出家丸'という名前の由来については触れておかなければならないでしょう。

普段は角刈りの彼は、ある日突然、坊主になって部活に現れました。

大人しめの彼が、突然丸刈りにしているわけですから、僕らは驚きを抑えきれず口々に質問します。

「なんで?」
「悪いことしたん?」
「気温暑いん?」
「お寺の住職を目指しとん?」
「髪の毛嫌いなん?」
「どこの散髪屋行ったん?」
「その髪型めっちゃ好きやで」


彼は、そんな僕らの予想を遥かに上回る答えを叩き出しました。

「間違って剃られたから、そのままの勢いで坊主にしてもらった。」


そのままの勢いがどんな勢いかはよくわかりませんでしたが、テニス部で坊主にするという前代未聞の事件を自ら引き起こした彼は

出家丸

というあだ名で呼ばれることになります。

坊主、住職、出家した人、
いろんなあだ名の候補がありましたが、

「丸」

という言葉がこのあだ名のチャームポイントです。



とつけりゃあ可愛くなる'おじゃる丸'的なあれです。


そろそろ皆様の心にも

「出家丸」

という言葉の響きに惹かれたというマヌケなあだ名の由来があぶりだしのように浮き出てきたでしょうか。


もう1人の新キャラ
「めこ」という人物は、身長195cm体重120kg超の巨漢です。

原チャリに引かれるも、逆に原チャリを弾き飛ばす。

自動販売機に肘をかける。

などの伝説を残してきた'西桜ヶ丘の歩く伝説'的存在ですが、テニス部ではありません。
 
テニスをするでもなく、僕らをボーッとながめながら、ひたすらベンチでお菓子をバリボリ食ベています。

「めこ」がなぜいるのかは誰にもわかりません。



閑話休題
話を元に戻します。

めこ以外の4人は順調にテニスの練習を続けていました。
 
そんな僕らの平穏が、コート使用時間残り30分の時にぶっ潰されることになります。


残り30分、
彼はやってきました。

出家丸の導きでコートに入る尖ったジャガイモのような顔をした男は、さっとバッグからラケットを取り出し、出家丸とラリーを始めました。

ハイレベルな打ち合いを、僕ら3人は横で唖然と見ているだけです。

'ヒーローは遅れてやってくるってばよ'といいますが、僕らは彼を呼んではいません。
 
「めこ」は相も変わらず、飯を食っています。


僕は、急にコートに現れて占領してきた人物を睨み、ボブに問いかけます。

「誰やねん、あいつ。」

「いもっちや。中学校の時、出家丸と同じくテニス部やった。」


少しやいこしいので整理しますと、

小学校が同じメンバーが、
僕、ボブ、出家丸、めこ

中学校が同じメンバーが、
ボブ、きゃぷてん、出家丸、めこ、
そして、突然現れたいもっちです。


出家丸はこのテニス練習にいもっちを'勝手に'呼んでいたのです。

結局、残り30分は、出家丸といもっちが激しくボールを打ち合う姿を僕ら3人は見つめているだけで終わりました。


そのとき、原チャリを弾き飛ばすほどの巨漢「めこ」は何をしていたか?

ひたすらお菓子を食べていました。

彼のカバンにはたくさんの夢、もとい...

お菓子が山のように積み込まれていたのです。


コートの使用時間が終了すると、いもっちは驚きの行動に出ました。

金も払わず、
コートのブラシかけもせず、
1人でさっと手荷物をまとめ、
そそくさと帰路につきます。


そして、振り返りざまに捨て台詞を吐き出しました。

「もっとええコート借りとけよ。」


あいつなんやねんっ

僕らの心にはいもっちへの怒りが溢れんばかりに膨張していました。

彼が去ったあと、僕らは、出家丸にコート代を払います。


そのとき、僕の背後から、どでかい巨人がお相撲さんのような掌に載せた豆粒サイズの500円玉を差し出しています。

一切コートでテニスをしていない「めこ」はお金を払おうとしているのです。


いもっちからお金を徴収せえへんねんから「めこ」からお金を取るはずないやろ...


出家丸はそんな僕の予想をしっかりと裏切り...

めこからお金を徴収しました。


「めこっ!おっ、お前なんで払うねんっ!」
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