俺たちバグジー親衛隊

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

文字の大きさ
88 / 188
IV章 Don’t Look Back In Anger

PART17 ガリガリ祭り前夜祭

しおりを挟む
「とっしー何してるん?
なんで、俺のです。って言わんの?」
無残にもポケウォーカーをちりとりに捨てられたことをボブは問い詰めます。
 
 「まあまあ。ホウオウとアラカワへの対応を天秤にかけた末の深い考えがあってのことやろ」
そう言って冷静に俯瞰するきゃぷてんを裏切るのは申し訳ないなあ、という思いがあふれ出るような小声でぼくは呟きます。

「い、いや、それがよ...
なんか恥ずかった」
 
「え、それだけ?」

「おう」

ボブは、ふぅ、と呆れたため息を出したあとぶっきらぼうに吐き捨てました。

「あの場面では、あらかわにキレてほしかったわ」

「わかった。
今からキレにいく!」
 
そう言って走り出し、アラカワを探しましたが、どこにもいません。

スーパーの中を無駄に走って疲れただけのぼくにボブはニコニコしながら一言。
「ええやん。走る分だけポケウォーカーの経験値溜まるやん」
 
「せやな。
ってもうポケウォーカーないやんけ!!」

泣き叫ぶぼくの肩をたたいたぼくは、諭すように語りかけました。
「とっしーもうええやん。ホウオウは忘れよを
あのソフトで一番貴重なホウオウがおらんくなっただけや」

慰めてるのか貶してるのかわからないボブの言葉を聞いたきゃぷてんも追撃するように、
 「そやそや。
ポケモン買うやつはみんな伝説のホウオウが欲しくてたまらんのにそいつがおらんだけや」
 
「あ、あかんやん!」
 

ホウオウに思いを馳せ、半泣きになるぼくを見かねたのか、きゃぷてんは新たな話題を展開し始めます。

「そんなことよりさ。もう夏も終わるし、最後にあの恒例のガリガリ祭りやろうや」

「ガリガリ...祭り?」
顔を合わせてハーモニーを奏でるボブとぼくにきゃぷてんはドヤ顔で説明を始めます。
 
「お前らガリガリ君買って当たったことあるか?」

「ない」
 
「みんな結構好きやのに全然当たらへんやん?」

「たしかに...な」
 
「だからあたりが出るまで買い続ける。
もういやや!こんなん食いたくないわー!ってなっても、当たるまでは買うしかない。
それがガリガリ祭りや」

「その祭り怖すぎるやん。腹壊すぞ」

「そもそも誰にメリットがあるねん?」
 
ガリガリ祭りに不満タラタラなぼくたちにきゃぷてんは明らかな不愉快さを滲ませます。
「メリットとかじゃない。それくらいの覚悟で祭りをやんと、ガリガリ君にも失礼やからな」
 
ガリガリ君に失礼どころか、駄菓子屋のおばちゃんが喜ぶだけのような気もしましたが、きゃぷてんの発揮したきゃぷてんシーに逆らうなんてできません。

ガリガリ祭り参加の覚悟を決め、顔がこわばるぼくたちにきゃぷてんは優しく問いかけます。

「お前ら金は何円ある?」
 
「まあ多少は...」
 
「一、は用意しとけよ」
 
「一?
もしかして一万??」
 
きゃぷてんは少し驚いた顔を見せましたが、すぐさま表情を整えて吐き捨てます。
「せや!1万円は用意しとけよ!」
 
「1万?
ガリガリくん何本買う気やねん」
 
「俺らが生きてきてトータル1万円は
買ってきたはずや。
なのに当たってないねんから1万でも足りん。
まあ、明日がガリガリ祭りやから今日はその前夜祭や。
手始めに一人一本買おうか」
 
そして駄菓子屋、鈴屋を訪れ、一人一本ガリガリ君を買いました。

ペロペロペロペロ.....

その時ボブが一言。
「あ。当たった」

誰が喜ぶでもなく、叫ぶでもなく、ぼくら3人は全員だまってお互いを見つめ合います。

静寂を振り払ったのは主催者きゃぷてんの一言でした。

「ガリガリ祭りは、前夜祭にて終了です。おつかれさまでした」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...