俺たちバグジー親衛隊

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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0章 俺バグ Reboot

自販機大戦争(7)

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打席に立つ前のスラッガーのように、とっしーは、ペッ、と手に唾を吐きかけた。
普通なら、「うわ、汚い」という、彼らも、「決戦に向けて、気合入ってるな」声をかけた。

そして、その時が来た。

「いくで?」
「ああ」
「こいよ」

とっしーの手から離れた500円玉は、チャリンという甲高い音をあげて、'飲み込んで吐き出すだけの単純作業繰り返す機械'に吸い込まれた。
 
ドン!ドン!ドドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

機械の前でボタンを連打する3人。 

とっしーは、カマキリのように構えた2本の人差し指を、リズミカルに連打した。

きゃぷてんは、人差し指を軽く突き指をしていたため、親指でボタンをぽちっとしていた。

ボブは、握りしめた拳のうち、中指を突き立てて、その部分で力強くボタンを押し込んだ。

三者三様の連打を前に、自動販売機の審判は時間がかかった。
ジュースを即座に吐き出すことをしなかったのだ。

3人の思いの丈を汲んでいるのだろうか、悩んでいるのだろうか。勝利の神様は、一体誰に微笑むのだろうか。

1秒だけ、世界から全ての音が消えた。

.....
 
.....
 
.....

ガゴン!!

.....
 
.....
 
.....

3人は、その音を聞くと、じっと見つめあい、同時に腰を下ろし、3つの腕が取り出し口に侵入した。

伸ばした指先は、熱を帯びていた。
しかし、その熱は、3人の指のぬくもりかもしれない。

いや、違った。
その熱は、ギュッとつかめないほど、高温だったのだ。

「ブラックコーヒーやあ!!!」歓喜の声を上げるきゃぷてん。 

「ぐぅあわぁっっー!もう、いやや!帰るぞ!」泣け叫ぶとっしー。
 
「じゃあなっ!あきちっっ!!!」とどめをさしたのはボブの一言だった。
 
「クソッタレェェェー!!!」少年の叫び声がこだまする駅前は、今日も平和だった。


この一連の流れは『自販機大戦争』と名づけられ、かの『1年戦争』、『クローン戦争』と並び立つ事変に.........なるわけがなかった。

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