ヒョーイザムライ

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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1章 運命の出会い

4、憑依の刻

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「ひっ!」ぼくは情けない声をあげて尻餅をついた。そして、男はこちらに向かって歩いてくる。そのときは、恐怖よりも期待が上回っていた。歩いてくる男は、父かもしれない、と思ったのだ。

しかし、その期待はあっさりと裏切られた。その男は、父ではなかった。
そしてその男は、「お前は誰だ?なぜここにいる?」と問いかけてくる。どこかで聞いたような三流のワルの台詞だったが、いざ自分が襲われるかもしれないとわかると本当に恐ろしかった。尻餅をついていた体を持ち上げて、言葉にならない声を上げて、走った。

しかし木の枝につまずき、今度は正面から転んでしまった。転んでいる間にぼくに追いついた男は、ぼくの胸倉を掴むと、地鳴りのようなアッパーを鳩尾に打ち込んできた。
ドゴッ、という鈍い音が骨の髄まで染み渡り、その場に倒れ込んだ。

男は倒れたぼくを眺めながら、「どうやってトドメを刺そうか」と思案していた。
この場から逃げ出したかったが、先ほどの殴打のせいで、ぼくの体は思うように動かない。その時、男の蹴りは、倒れ込んでいるぼくの腹部を捉えた。体はいとも簡単に吹き飛ばされ、背中から石碑にぶち当たった。

意識が朦朧とする中、ぼくは覚悟を決めた。もう最期かも知れない、と。

母さん、ごめんね。ぼくのせいで、父さんと別れさせてしまって。そして、さんざん苦労させて、先に死んじゃうし。でもぼくがいなくなったら、母さんは新しい人生を生きてよ。

雪、ありがとう。君が幼馴染で、本当によかったよ。たまに見せる物憂げな表情が少しだけ気になっていたけど、きっと大丈夫だよね。

父さん、あなたの望む強い男になれなくてごめんなさい。けど、ぼくなりに頑張ったんだ。最期にもう一度、父さんに会いたかったな。

そばにあった大きな木の棒を手にした男は、背中から石碑に寄りかかっていたぼくにそれを振り下ろそうとしていた。

その木の棒から目を背けようと、顔を横に振ったとき、石碑に貼りつけられたお札のようなものに気付いた。そして何も考えずに、そのお札を引きちぎった。

その瞬間、大きな`ナニカ`が、口の中に入ってきた。それは、食道を通って体の奥底に入ってくる。しかしそれは決して、禍々しいものではなく、瀕死の状態の体に活力を与えるものであった。

そして、薄まっていく意識の中で、月が赤く染まっていたのを視認した。

―――――――――――――――――――

-憑依の刻-

「お主は!長宗我部のモノかぁ!?」

立ち上がった少年は、男の持つ木の棒を即座に奪った。

「なんだ、この小僧、雰囲気が変わったぞ?」
棒を奪われた男は、少年の突然の豹変ぶりに驚いていた。先ほどまで怯えていた少年が、今は自分に対して明らかな敵意を向けているのだ。

少年は、「積年の恨みじゃ!覚悟!」と叫び、男にあざやかな片手突きを呉れた。

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