ヒョーイザムライ

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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3章 京都動乱

5、出生のルーツ

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予想もしなかった事件を解決したあと、ぼくらはねねの道を南へ進んでいた。

「木刀、役に立ったでしょ?」
雪はにっこりと笑った。

「そうだね。正直、無駄な買い物をしたって思ったんだけど、買っていてよかったよ」

「勇くん、世の中には無駄なものなんてないんだよ。どんな経験も、どんなモノも、自分の糧にできる。私の好きな甲本ヒロトさんが言ってたことなんだけどね」

無駄なことはない。なるべく無駄なことはせず、効率よく生きようと思っていたぼくにとっては、考えさせられる言葉だった。
効率や能率だけを求めると、心の豊かさがなくなるのかもしれない。
やはり、雪と一緒にいると、いろんなことにきづくことができる。

 
一念坂という場所を歩いているときだろうか。
30代後半に見える女性と目があった。長い黒髪と着物が似合う京美人だ。
 
その女性は、ぼくの顔を目視すると、首を傾げながら近づいてきて、「もしかして、勇くん?」と声をかけてきた。
 
「は、はい。勇ですけど…」
 
「やっぱり勇くんかい!私のことを覚えてないかい?紀子おばさんだよ?」
 
そのとき、ぼくの大脳皮質は、紀子という言葉に反応した。
「あ、紀子おばさん?」
 
「そうだよ!紀子おばさんだよ」
 
「久しぶりだね!元気にしてた?」
 
「ああ、元気にしていたよ。せっかく会えたんだから私のうちにいらっしゃい?ゆっくりお話でもしましょうよ」
 
 
久しぶりの再会を喜んでいるぼくと紀子おばさん。そんな2人に水を差したのは雪だった。
「勇くん、ちょっと待ってよ!その人は本当に紀子おばさんって人なの!?もしかしたら人違いかもしれないじゃない!確証がないのに、知らない人についていくのは危険だよ?」
 
「あら、こちらの可愛いお嬢さんは、勇くんの彼女さん?」紀子おばさんはにっこりと笑ってぼくに尋ねた。
 
「い、いえ、そういう関係では…」
 
その返答に対して、明らかに雪はむすっとした。
 
「お嬢さん、ごめんね。どうやら私の説明が不足していたみたい。私は、勇くんのお母さんの親戚で、紀子というのよ。勇くんとは、幼稚園のころ、何度か遊んだこともある仲なのよ。だから人違いじゃないわ」

「うん、そうだよ雪、間違いなく紀子おばさんだ」

雪はしゅんとした様子で謝った。
「親戚の方だったんですね…さっきは疑って失礼なことを言ってしまってすみませんでした」

「いいのよ。気にしないで。私も強引だったから。お嬢ちゃんも一緒に私の家にいらっしゃい?京都の高級なお菓子をご馳走するわよ?」
 
雪は同級生の中ではしっかりしていると言っても、やはりまだ中学生だ。
「高級なお菓子…?」という言葉に釣られて紀子おばさんに心を許して始めていた。
 
 
石塀小道と呼ばれる京都らしい情緒あふれる道を少し歩くと、大きな書院造の住宅に案内された。銀閣寺と見まがうほど立派な住宅で、ぼくと雪は丁重にもてなされた。
 
抹茶餡が濃厚な味わいの抹茶大福、上質な抹茶をふんだんに使ったモチップルッとした食感の抹茶わらび餅、生茶葉が入ったヨーグルトケーキ、あらゆる絶品を提供していただき、舌鼓を打った。
 
グルメに満足しきっていた雪は、ぼくに声をかける。
「立派な邸宅に、絶品スイーツ…紀子おばさんって、裕福なのね?」
 
雪の声が聞こえていた紀子おばさんは、「あら、言ってなかった?私は、京都の一条本家の末裔よ」と答える。

「え?」ぼくは驚きを隠せない。紀子おばさんが京都一条家の末裔だということは知らなかった。
 
「勇くんも私たち一条家の一族なのよ?もしかして、あなたの母さんから聞いていないのかい?」
 
一条兼定様のことが気に入らないこともあってぼくはそのことを否定する。
「そんなはずはありません。ぼくの名前は天久です。一条家とは関係ありません」
 
「天久という苗字は、あなたのお母さんのご先祖様の知恵なのよ。

一条の字を分解してごらんなさい?
そして、`条`の字の`木`の部分を、`一`に移動させれば、`天久`に似た文字ができるでしょ?」
 
「あ!そういうことか!」雪は何かを思い出したかのように突然叫んだ。
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