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3章 京都動乱
13、父との再会
しおりを挟む死力を尽くし、男を倒したあと、ぼくは奥の部屋へと歩みを進めた。
そっと襖を開けると、部屋の奥で捕らわれている雪と、その前で座っている男の姿が目に飛び込んでくる。
短い短髪姿に漆黒のスーツを身に纏った男は、下を向いたまま「…来たか」と声を出した。
その声は、雪の家の周囲で窮地に陥ったぼくに、情けをかけてくれた人物と同じだった。
そして、男はゆっくりと顔を上げ、ぼくの顔を凝視する。
10年ほど会っていないとはいえ、その形相は忘れもしない…まさしく父だった。
「と、父さん…」力なく声をあげた。
さらに驚いたことは、父の顔の横に1人の侍が浮かんでいたことだ。つまり、父にも侍が憑依した。
その姿を見て、侍さんは叫んだ。「お前は…長宗我部元親!」
しかし父の横に浮かぶ長宗我部元親は、何も言い返さず、侍さんをにらみつけていた。
「父さん!雪を離せ!」父に訴えるも、そうやすやすと承諾するはずはない。
「バカ。そんなことできるわけねえだろうが。俺はお前の父としてではなく、暴力団の頭として動いているんだ」
そう言って立ち上がり、ぼくの目の前まで歩いてくる。父はすぐさまぼくを襲う気配はなかった。それどころか、余裕綽々たる態度だ。
「勇、久しぶりの再会だ。積もる話もあるだろうが、一度落ち着け。
少し話をしようじゃないか。お前としても時間を稼ぎたいだろう。その一戦交えたあとの疲労ですぐに俺に戦って勝てると思っているのか?」
「…」
「さて、勇。わからないことだらけだろうが、まず何が聞きたい?」
父からそう尋ねられたぼくは、たくさんの疑問の中から1つを選んだ。
「父さんは、暴力団の頭なの?どうして雪を攫うのさ…」
「ああ、俺は暴力団・長元組の頭だ。お嬢ちゃんを攫う理由は簡単だ。俺たちは金が必要だからだ。」
「…」
「がっかりしたか?まあ、暴力団は、怖い、危ない、悪いという暗いイメージがあるから仕方ねえか。
だが心配するな。別にお前に継がせるつもりはねえよ。母さんとは離婚が済んでいるし、お前と俺はもう他人だ」
「他人だなんて、そんな言い方寂しいじゃないか…」
「寂しいも何も、これは事実だ」
ぼくはさらに質問を続ける。
「あと父さんはあの冬、1月のある日、中村城に向かっていたよね?あのときは何をしていたの?」
「あれは一条家の家臣・土居の封印の札を探すためだ。土居の封印が解ければ、俺たちの組織に仇をなす予感がしたからな。俺たち長元組の手中に収めたかったが、どうやら勇があの札を剥がしたらしいな」
次々と話される事実に唖然とするぼくに対して、父はさらに話を続ける。
「さて、では俺のこれまでの人生を話してやろうか。お前の幼少期にいなくなったからあまり知らないだろう」
ぼくは父の話に大きな興味を持った。なぜ父が暴力団の頭なのか、長宗我部元親が憑依しているのか、母と同で会ってなぜ離婚したのか、その秘密が明かされる予感がした。
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