ヒョーイザムライ

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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3章 京都動乱

14、長宗我部の血筋

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「俺は高知市の南部、長浜のあたりで生まれ、物心ついたころには剣道を始めていた。
俺が勇に、`強くなれ`と、教育してきたのと同じように、俺も父から`強くなれ`と、教わってきた。
少年時代はよく、家の近くの秦神社で素振りをしていた。勇と一緒に剣道の練習をしていた一條神社は、秦神社と雰囲気が似ていたなあ。

父は暴力団の頭だったが、俺はそんな父が好きだった。少なくとも俺が見てきた現実では、警察よりも暴力団の方が地域の商店街や人々を守っていたからな。

だが俺が30代のころ、父は若くして亡くなった。そして、父は死に際に、俺にこう言ったんだ。`儂たちの家系は、長宗我部元親の四男、長宗我部 盛親の血を引いておる`と。

その時は驚いたぜ。まさか自分が長宗我部の血を継いでいるなんてな」

「え?」ぼくは驚きの声をあげる。

「つまり、勇、お前も長宗我部の血を引いてるんだぜ?

まあ、もう少し話を聞け。
父の死を受けて暴力団を継いだ俺は、長元組の根城を高知県西部に移した。そして、四万十市に移り住み、そこで出会った母さんとおめでた結婚をした。母さんは俺の仕事を知っていたが、そんな俺を受け入れてくれた。

俺の人生に暗雲が立ち込めたのは、リーマンショックが起こってからだ。景気が悪くなると長元組の財政も厳しくなっていた。いろいろなストレスが溜まってきたこともあり、俺はある噂に興味をもった。

`長宗我部元親の隠された墓に彼の魂が封印されており、札を剥がせば、強大な力が手に入る`という話だ。

麻薬にすがるような気持ちで、俺はその墓を訪れた。そして札を剥がすと、長宗我部元親の魂が自分に乗り移ったというわけだ。だが、これが悲劇の始まりだった。

長宗我部元親は、一条家の家臣・土居を恨む、復讐の鬼だったんだ。元親は、何度も俺の精神を乗っ取り、母さんや組員に対して乱暴な行動をした。

何といえばいいんだろうか、つまり俺は、自分の魂を制御できなくなった。母さんや組員たちは、俺のことを二重人格者だと思っただろうな。特に母さんと勇には本当に申し訳なかったし、嫁や息子にきつくあたる自分が許せなかった。

そして、元親が俺の魂を乗っ取る頻度と時間は徐々に長くなり、いずれ自分の魂すべてが元親に奪われてしまうのではないのかとさえ思った。
もしその時が来て、俺の魂が元親に完全に乗っ取られたときには、勇に俺を倒してほしかったという思いもあったかもしれない。だから俺は、お前に剣道の稽古をつけて、強くなれと伝えてきたんだ。

そしてある日、勇の教育方針を巡って、俺と母さんは口論になった。俺の厳しい教育を咎める母さんに対して、俺はついに手をあげてしまったんだ。それは元親が憑依したわけではない。自分が未熟だったんだ。

そのとき俺は決めた。これ以上、家族の元にいると、みんなに迷惑をかける、と。そして俺は、母さんに離縁を告げて、お前たちの元を去った」

「なら父さんは悪くないじゃないか。多少、二重人格で暴力をふるったとしても、ぼくらの元から去るのはひどいよ!それはぼくらを見捨てたっとことじゃないか!」

「…勇、お前の言うとおりだ。結局、俺は覚悟が足りなかった。若くして父になったが、暴力団の頭と父を両立させる器も度胸もなく、お前たちの元から逃げた」

父の心境を聞いて、胸が痛くなった。部屋の奥で話を聞いている雪も、侍さんも、複雑な表情をしている。

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