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3章 京都動乱
15、父との決別、対峙
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「父さんはたしかにぼくらの元を去った。でもそれは過去の話だ。それに悪いのは父さんだけじゃなく、父さんに憑依している元親じゃないか…だから、ぼくと母さんの元に戻ってきてよ…なんでぼくらが戦わなくてはならないんだよ…」
「それは無理だ。俺はお前たち家族を捨ててしまっているし、今は組員が家族みたいなものだ。
さらに、2011年の暴力団排除条例が制定されて以降、元親と俺は和解した、今は同志のようなものだ。
あの法律が施行されてから、暴力団を取り巻く環境はさらに厳しくなったからな。
元来、気の弱い俺だけでは、世の中を渡り切れなくなったからこそ、元親が憑依して、冷酷かつ凶暴な手法をとってくれることにありがたみを感じるようになったんだ。俺にとって、暴力団排除条例を制定した山内家は憎むべき敵であり、その点も元親の考えと一致した。
最近の元親は、勝手に俺の魂を乗っ取ることが殆どなくなった。というよりも、俺自身の考え方が元親と一致しつつあるのかもしれない」
「そんなこと言わないで…ぼくと母さんと一緒に暮らそうよ…」
「諦めろ、勇。俺は、今更まっとうな社会を生きられねえのさ。そもそもお前たちと暮らしているときも、自分が暴力団の頭だということをなるべく見せたくなかった。やはり俺は裏社会の人間だ…今は資金がなくて、木刀しか持っていないというしがない暴力団だがよ…
ま、俺たちは相手を殺す気はねえし、邪魔するやつは気絶させればいい」
ぼくは心底悲しくなった。自分の父がダークサイドに落ちているかのようだったからだ。
「勇に面白い話をしてやろう。お前たち一般市民が信じている警察組織も、腐敗しているんだぜ?
奴らは犯罪の一部を見て見ぬ振りをする。さらに警察は極秘で、俺たちから拳銃を高値で買い取ってくれた。まあ、拳銃を売り終えたあとの俺たちには、冷たい対応しかしてくれねえが」
ぼくは雪の家に侵入者が訪れたときの警察の対応を思い出した。たしかに表面的で、真摯に対応してくれている印象はなかった。市民を守るという気概が感じられなかったのだ。
「さて、勇。ここでよく考えろ。
政治家や警察、世間では崇拝されている彼らと、悪者の暴力団…
しかし、政治家や警察は一切、黒い部分がないのか?奴らの行動はすべて正しいのか?
暴力団だって、半グレのような連中から地域を守っている。
なのに俺たちは厳しい締め付けにあい、銀行口座も、携帯電話の契約さえ自由にできない。
まさに人権侵害を受けているのさ。暴力団の人間には、基本的人権はないっていうことなのか?
それに俺たちだって、みんながみんな、なりたくて暴力団になったわけじゃねえ。
生きていくために、稼ぐために、この仕事をしているんだ。なのに、一度暴力団に入った俺たちは、もう二度と社会復帰できねえのかよ?」
父は感極まっているようだった。どこにぶつければいいのかわからない怒りと苦しみを吐き出しているかのようだった。
「勇。だから、俺はお前たちの家族の元に戻って平和に暮らすなんてできねえ。
今の俺は、自分の暴力団と組員を守るために、政治家の山内家から金を奪わねえとならねえからな…
さて。長話をしてしまったな。聞きたいことの大半は聞き終えただろう。
どうする、勇?俺の仲間になって暴力団の次期、頭になるか?
いいや、それはやめた方がいいな。だから俺と戦って、おとなしく気絶したほうがましだ」
ぼくはごくりとツバを飲み込んだ。父の事情は少し理解できたけれども、だからといって、雪の家から2000万円の身代金を奪っていいはずはなかった。
「父さんの考えには納得できない…」
「別に納得してもらおうとは思ってないさ」
「ぼくに今できることは、父さんを倒して、雪を救うことだけだ!」
「そうか、あくまでも俺の邪魔をするようだな。それならば、気絶してもらうだけだ!」
父は地面に置いていた木刀を手に取り、さっと中段に構えた。
「さあこい!」父がそう言った時、窓から満月の光が差し込んだ。
「それは無理だ。俺はお前たち家族を捨ててしまっているし、今は組員が家族みたいなものだ。
さらに、2011年の暴力団排除条例が制定されて以降、元親と俺は和解した、今は同志のようなものだ。
あの法律が施行されてから、暴力団を取り巻く環境はさらに厳しくなったからな。
元来、気の弱い俺だけでは、世の中を渡り切れなくなったからこそ、元親が憑依して、冷酷かつ凶暴な手法をとってくれることにありがたみを感じるようになったんだ。俺にとって、暴力団排除条例を制定した山内家は憎むべき敵であり、その点も元親の考えと一致した。
最近の元親は、勝手に俺の魂を乗っ取ることが殆どなくなった。というよりも、俺自身の考え方が元親と一致しつつあるのかもしれない」
「そんなこと言わないで…ぼくと母さんと一緒に暮らそうよ…」
「諦めろ、勇。俺は、今更まっとうな社会を生きられねえのさ。そもそもお前たちと暮らしているときも、自分が暴力団の頭だということをなるべく見せたくなかった。やはり俺は裏社会の人間だ…今は資金がなくて、木刀しか持っていないというしがない暴力団だがよ…
ま、俺たちは相手を殺す気はねえし、邪魔するやつは気絶させればいい」
ぼくは心底悲しくなった。自分の父がダークサイドに落ちているかのようだったからだ。
「勇に面白い話をしてやろう。お前たち一般市民が信じている警察組織も、腐敗しているんだぜ?
奴らは犯罪の一部を見て見ぬ振りをする。さらに警察は極秘で、俺たちから拳銃を高値で買い取ってくれた。まあ、拳銃を売り終えたあとの俺たちには、冷たい対応しかしてくれねえが」
ぼくは雪の家に侵入者が訪れたときの警察の対応を思い出した。たしかに表面的で、真摯に対応してくれている印象はなかった。市民を守るという気概が感じられなかったのだ。
「さて、勇。ここでよく考えろ。
政治家や警察、世間では崇拝されている彼らと、悪者の暴力団…
しかし、政治家や警察は一切、黒い部分がないのか?奴らの行動はすべて正しいのか?
暴力団だって、半グレのような連中から地域を守っている。
なのに俺たちは厳しい締め付けにあい、銀行口座も、携帯電話の契約さえ自由にできない。
まさに人権侵害を受けているのさ。暴力団の人間には、基本的人権はないっていうことなのか?
それに俺たちだって、みんながみんな、なりたくて暴力団になったわけじゃねえ。
生きていくために、稼ぐために、この仕事をしているんだ。なのに、一度暴力団に入った俺たちは、もう二度と社会復帰できねえのかよ?」
父は感極まっているようだった。どこにぶつければいいのかわからない怒りと苦しみを吐き出しているかのようだった。
「勇。だから、俺はお前たちの家族の元に戻って平和に暮らすなんてできねえ。
今の俺は、自分の暴力団と組員を守るために、政治家の山内家から金を奪わねえとならねえからな…
さて。長話をしてしまったな。聞きたいことの大半は聞き終えただろう。
どうする、勇?俺の仲間になって暴力団の次期、頭になるか?
いいや、それはやめた方がいいな。だから俺と戦って、おとなしく気絶したほうがましだ」
ぼくはごくりとツバを飲み込んだ。父の事情は少し理解できたけれども、だからといって、雪の家から2000万円の身代金を奪っていいはずはなかった。
「父さんの考えには納得できない…」
「別に納得してもらおうとは思ってないさ」
「ぼくに今できることは、父さんを倒して、雪を救うことだけだ!」
「そうか、あくまでも俺の邪魔をするようだな。それならば、気絶してもらうだけだ!」
父は地面に置いていた木刀を手に取り、さっと中段に構えた。
「さあこい!」父がそう言った時、窓から満月の光が差し込んだ。
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