ヒョーイザムライ

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

文字の大きさ
59 / 94
3章 京都動乱

15、父との決別、対峙

しおりを挟む
「父さんはたしかにぼくらの元を去った。でもそれは過去の話だ。それに悪いのは父さんだけじゃなく、父さんに憑依している元親じゃないか…だから、ぼくと母さんの元に戻ってきてよ…なんでぼくらが戦わなくてはならないんだよ…」

「それは無理だ。俺はお前たち家族を捨ててしまっているし、今は組員が家族みたいなものだ。
さらに、2011年の暴力団排除条例が制定されて以降、元親と俺は和解した、今は同志のようなものだ。

あの法律が施行されてから、暴力団を取り巻く環境はさらに厳しくなったからな。
元来、気の弱い俺だけでは、世の中を渡り切れなくなったからこそ、元親が憑依して、冷酷かつ凶暴な手法をとってくれることにありがたみを感じるようになったんだ。俺にとって、暴力団排除条例を制定した山内家は憎むべき敵であり、その点も元親の考えと一致した。
最近の元親は、勝手に俺の魂を乗っ取ることが殆どなくなった。というよりも、俺自身の考え方が元親と一致しつつあるのかもしれない」

「そんなこと言わないで…ぼくと母さんと一緒に暮らそうよ…」

「諦めろ、勇。俺は、今更まっとうな社会を生きられねえのさ。そもそもお前たちと暮らしているときも、自分が暴力団の頭だということをなるべく見せたくなかった。やはり俺は裏社会の人間だ…今は資金がなくて、木刀しか持っていないというしがない暴力団だがよ…
ま、俺たちは相手を殺す気はねえし、邪魔するやつは気絶させればいい」

ぼくは心底悲しくなった。自分の父がダークサイドに落ちているかのようだったからだ。

「勇に面白い話をしてやろう。お前たち一般市民が信じている警察組織も、腐敗しているんだぜ?
奴らは犯罪の一部を見て見ぬ振りをする。さらに警察は極秘で、俺たちから拳銃を高値で買い取ってくれた。まあ、拳銃を売り終えたあとの俺たちには、冷たい対応しかしてくれねえが」

ぼくは雪の家に侵入者が訪れたときの警察の対応を思い出した。たしかに表面的で、真摯に対応してくれている印象はなかった。市民を守るという気概が感じられなかったのだ。

「さて、勇。ここでよく考えろ。
政治家や警察、世間では崇拝されている彼らと、悪者の暴力団…
しかし、政治家や警察は一切、黒い部分がないのか?奴らの行動はすべて正しいのか?

暴力団だって、半グレのような連中から地域を守っている。
なのに俺たちは厳しい締め付けにあい、銀行口座も、携帯電話の契約さえ自由にできない。
まさに人権侵害を受けているのさ。暴力団の人間には、基本的人権はないっていうことなのか?

それに俺たちだって、みんながみんな、なりたくて暴力団になったわけじゃねえ。
生きていくために、稼ぐために、この仕事をしているんだ。なのに、一度暴力団に入った俺たちは、もう二度と社会復帰できねえのかよ?」

父は感極まっているようだった。どこにぶつければいいのかわからない怒りと苦しみを吐き出しているかのようだった。

「勇。だから、俺はお前たちの家族の元に戻って平和に暮らすなんてできねえ。
今の俺は、自分の暴力団と組員を守るために、政治家の山内家から金を奪わねえとならねえからな…

さて。長話をしてしまったな。聞きたいことの大半は聞き終えただろう。
どうする、勇?俺の仲間になって暴力団の次期、頭になるか?
いいや、それはやめた方がいいな。だから俺と戦って、おとなしく気絶したほうがましだ」

ぼくはごくりとツバを飲み込んだ。父の事情は少し理解できたけれども、だからといって、雪の家から2000万円の身代金を奪っていいはずはなかった。

「父さんの考えには納得できない…」

「別に納得してもらおうとは思ってないさ」

「ぼくに今できることは、父さんを倒して、雪を救うことだけだ!」

「そうか、あくまでも俺の邪魔をするようだな。それならば、気絶してもらうだけだ!」

父は地面に置いていた木刀を手に取り、さっと中段に構えた。

「さあこい!」父がそう言った時、窓から満月の光が差し込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...