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3章 京都動乱
16、中心をとれ!
しおりを挟む一方その頃、トシの戦いは決着がつこうとしていた。
「ケンモツ、頼んだ!」
そう言った瞬間、ケンモツの魂が少年の肉体に入り込む。少年はカッと目を見開いた。疲れで鈍っていた体の動きに生気が宿る。
そのとき、2人の男はさっと目配せをした。一気にとどめをつけるため、少年の左と右に散らばる。
少年は迷った。どちらかに正面を合わせれば、もう1人への備えはガラ空きになる。左右の敵の気配にどう対応すればいいのか、簡単には動きかねる場面だ。
剣術において勝負が決まるのは相手が崩れたとき、相手の心が動いたときの打突である。緊迫の場面ではあるが、今この場にいる3人は、誰もが落ち着いていた。
敵の2人は、少年が並々ならぬ剣術使いということを見抜き、簡単には手を出そうとしない。同時に切り込んだとしても、タイミングよく避けられたら相打ちになる可能性も高いからだ。
3人は足元だけをジリジリと動かし、機を図っていた…
少年の構えは中段より少し上、2人の男はともに中段に構えている。
動いたのは、少年の左側で構えていた男だ。彼は風のような速さで突進し、少年の面へ打ち込んできた。しかし、少年の対応はそれ以上に速かった。決して大きな力は加えず、打ち込まれた力を利用するかのように、迫りくる剣先を左に払った。打ち込まれた木刀は男の手を離れ、宙に舞い上がる。
その瞬間、少年は体をくるりと回して、左半身から力任せに相手の右胴をぶったぎった。
敵はあばらが折れるほどにたたかれると、ぐわっとはね、そのまま地面の上に体をたたきつけて気絶した。
少年は即座にもう一回転して、宙に舞い上がった木刀を眺める男の右胴をぶったぎり、気絶させた。誠に鮮やかな2人斬りだった。
―――――――――――――――――
ぼくは大きく踏み込んで間合いを詰めたが、父はすぐに後ろに下がり間合いをとった。そのせいで、距離を詰めることができない。
本来、交点に向かって近づこうとするのは「チャンスを作ろう」とするからであり、交点から遠ざかっていくのは「この状態は危険だ」と思うからだ。
しかし父の間の取り方は、そういう意味合いではなかった。明らかに実力が上回っている父は、ぼくを試しているかのようだった。
ぼくはこの間を嫌い、一気に間合いを詰めて切り込んだ。しかし父は、いとも簡単にぼくの剣をはじいた。
「勇、その程度か?その程度の実力では俺には勝てないぞ?早く侍に憑依してもらえばいいじゃないか」
「いや、ぼくはまだ戦える!」
木刀を構えて向き合った2人はジリジリとお互いの様子を伺った。
「勇、お前はまだ少し剣を恐れているんだ。中心がとれていない…」父はそう言って、目にもとまらぬ速さで打ち込んできた。そして、左肩を打たれてしまう。
ズキリと右肩が痛む。
中心をとっている状態いうのは相手とまっすぐ構えた状態の時に、自分の剣先が相手よりも中心に
ある状態を言う。しかし、ぼくはそれが完全にはできていないようだ。だから父の動きに反応できない。
「もう見てられん!」戦いを見守っていた侍さんは、そう言ってぼくの魂に入りこんできた。
「ま、まってくれ…」という声も届かず、ぼくは意識を失った。
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