歌えなくなったオメガを匿った夜から、ふたりの秘密が始まった

スピカナ

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第2話 出会い

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今夜は珍しくコンサートに行ってきた。
人からもらったチケットだったけど、柚音のステージは本当に良かった。
あの声……きれいだったな。

 帰り道、いつもの裏路地を抜けていく。
……ん?
暗がりの奥で、誰かがしゃがみ込んでいる。吐いているのか?
近づいてみると、若い男の子のようだ。酔っ払いか?

「ねえ、君、大丈夫? 酔ってるの?」
肩を軽く叩いた瞬間、彼はふらりと倒れ込んできた。

なんでこれくらいで倒れるんだよ……。
仕方なく起こして肩を貸す。

でも、酒の匂いがしない。具合が悪いのか?
夜は病院もやっていない。

このまま放っておいたら、道路に倒れたままだ。
……よし、連れて帰るか。明日になったら家に帰せばいい。

タクシーを呼び、彼を乗せて自宅へ向かった。
俺の家はマンションだ。

タクシーから降ろすと、背負って部屋まで運んだ。
玄関に入って廊下に降ろすと、どさっと倒れ込む。

まずは靴を脱がせないとな。俺もだけど。
とりあえず起こして、ゲストルームのベッドに寝かせた。

改めて顔を見て、思わず固まる。
……え?
さっきまで舞台で歌っていた柚音ゆおんじゃないか。

ぐったりしているから、驚いている暇もない。
洗面器と水、タオルを持ってきて、ついでに診察用のカバンも取ってくる。

服が汚れていたので脱がせた。
中のタンクトップも汗と汚れでぐしゃぐしゃだ。

俺の浴衣を持ってきて着せることにした。
これなら着脱が楽だ。

軽く肩を叩いて呼びかけてみたが、反応がない。
……おかしいな。診察するか。
熱は38.6度。血圧は上が100を切っている。

胸も腹も音は悪くないが、全体的に弱っている。
この子、ちゃんと食べてるのか?

あれだけ吐いていたんだ、脱水だろう。
起きないなら仕方ない。

トイレにも行けないだろうから、留置カテーテルを入れ、点滴を始めた。
完全に病人だ。
よくもこんな状態で舞台に立っていたな……。
それにしても、なぜあんな場所に一人でいたんだろう?

普通なら事務所の車で宿泊所に戻るはずだろうに。

……訳ありか?

どちらにせよ、高熱だ。しばらく預かるしかない。
動けないんだから、帰らせることもできない。

その晩は、彼の隣のベッドで寝ることにした。
この部屋はゲスト用の部屋だからツインベッドを置いてるんだけど、ちょうど良かったな。

点滴の交換があるので、携帯でアラームをセットする。
俺はざっとシャワーを浴び、小腹が空いたのでカップ麺を食べた。

寝る前には温かいおしぼりを作って、彼の顔と手を拭いてやる。
全然起きない。気絶に近い眠りだな。

写真の大きな可愛い目を見れないのが残念だ。

まったく……何があったんだ、君は。


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