歌えなくなったオメガを匿った夜から、ふたりの秘密が始まった

スピカナ

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第19話 浴衣

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 翌日、朝一で市役所に行き、マイナンバーカードの住所変更を済ませた。
住所変更を先に済ませておいてよかった。証明書の提示が必要だった。

「颯太、せっかく出てきたから、洋服を少し買おうか?なんでも買ってあげるよ」

やや頬を緩ませながらも、
“もう~”
という呆れたような目で俺を見る。
「なに?」

すぐにLINEが返ってきた。
<甘やかしすぎ>
ふっと笑って、颯太の頭をポンポン叩いた。
そうそう、その通り。

「じゃあさ、颯太の浴衣を買おうか?寝込んだ時に、前が全部開く方が楽なんだよ」
今度は素直に頷いた。よしよし。

大型ショッピングセンターへ向かう。
浴衣はどこだ?和服店か。
館内の地図を見ながら歩く。

色んな浴衣が並んでいた。子供用がめちゃくちゃ可愛い。
店員さんが近づいてきた。
「浴衣ですか?」
「はい、この子にお願いします。それと、寝間着になる浴衣ってありますか?」
「ございますよ。ご案内します」

並んでいる寝間着は地味だ。年配向けなのかもしれない。
あ、ホテルにあるような白いガウンタイプの寝間着があった。
しゃれてる。これだ。二枚買おう。

浴衣の方を見ると、颯太が店員さんに盛んに着せられている。(笑)
「颯太、いいのあった?」
首をひねっている。喋れないから判断が難しいよな。

何枚かの中に、水色地に金魚が泳いでいる可愛い浴衣があった。
颯太にぴったりだ。
「これはどう?かわいいよ」
ううん、と嫌がって顔を横に振った。

次に、紺色に白い幾何学模様の浴衣があった。
「これはどう?」
“うん”とようやく頷いた。

「帯はどうしよう?」
「ワンタッチ帯が簡単ですよ」と店員さん。
「じゃあ、それで。白っぽい無地のをお願いします。それと下着も一式ね。あと下駄も」

ええーー?という顔で颯太が俺を見る。
「へへへへ、だって可愛いじゃない?」

さらに旅館の寝間着に使うような紐も入れてもらった。
寝間着として使うなら必要だ。帯は毎回つけない。

両手に荷物。颯太もショッピング袋を持った。
下駄が嵩張るのか、袋が大きい。

颯太が呆れたように俺を見る。
「ふふふ、まあ、そう見るなって。俺の趣味だよ。楽しくてたまんないよ」

颯太はぷーっとふくれていたが、そのうち俺につられて笑っていた。

どうせ夕方から検査がある。
笑うなら今のうちだ。

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